三浦直之とEMCによるファミレス感漂う「ポップカルチャー」談義

小説、漫画、ゲーム、アニメ、映画、音楽、お笑い……三浦直之がこれまで影響を受けてきたあらゆるポップカルチャーを、DJ感覚でマッシュアップして物語を編み上げていく劇団ロロ。同じくポップカルチャーへの造詣に富んだオマージュを繰り広げながら音楽を紡ぐラップグループEnjoy Music Club。両者に共通するのは、そんなポップカルチャーへの愛と感謝が、「誰かのことを強く想う」という情景に転化されていく点にある。なにかを愛する気持ちに、私たちは生かされている。好きなものがあってよかった。

先日、吉祥寺シアターではロロの新作『はなればなれたち』が上演されるなど、今年は劇団にとって結成10周年を飾るアニバーサリーイヤー。そんな記念すべき瞬間を祝うべく、主宰の三浦直之が盟友であるEnjoy Music Clubの江本祐介、松本壮史、Cの3人を迎え、ポップカルチャーへの愛を語り合う会が開催された。聞き手はブログ『青春ゾンビ』にて、両者の活動をみつめてきたヒコでございます。

ネットの海に放り投げた「好き」という気持ちが巡り巡って、はなればなれの私たちを繫ぎ合わせてくれたのだ。センキュー、ポップカルチャー。

「もともと三浦さんと僕らは、好きなものが一緒だったから、作風も似たのかもしれないです」(松本)

ヒコ:まずは三浦さんとEnjoy Music Club(以下、EMC)の出会いについて聞かせてください。

三浦:僕はずっとヒコさんのブログ『青春ゾンビ』を読んでいたんです。で、松本さんが監督した乃木坂46の桜井玲香さんの個人PV(『アイラブユー』)について書かれた記事の中で、そのPVとロロの作風が似ているって書いてあったので気になって見てみたら、めちゃめちゃびっくりして(参考:桜井玲香(乃木坂46)個人PV 松本壮史『アイラブユー』 / 『青春ゾンビ』2016年4月3日)。

「これは自分と似たなにかを持ってる人だな」と思ったんです。PVの中で使われていた江本さんの“ライトブルー”という曲もめちゃめちゃよくて、それでEMCのことを知って興味を持っていった感じでした。

乃木坂46 桜井玲香の個人PV『アイラブユー』

ヒコ:三浦さんが松本さんに共鳴したポイントはどこだったんでしょう?

三浦:「最高の告白」をしようと思って練習していたはずが、それがだんだん本当の想いになって、別の恋がはじまっちゃう感じとか。ああいう恋愛感情の矢印が思いもしない方向に動くみたいなものって、自分もよく書くモチーフだったりするんですよ。

三浦直之(みうら なおゆき)
ロロ主宰 / 劇作家 / 演出家。10月29日生まれ宮城県出身。2009年、日本大学藝術学部演劇学科劇作コース在学中に、処女作『家族のこと、その他たくさんのこと』が王子小劇場『筆に覚えあり戯曲募集』に史上初入選。同年、主宰としてロロを立ち上げ、全作品の脚本・演出を担当する。

松本:僕も『青春ゾンビ』はもともとすごく読んでいて。気になったものを検索するといつもたどり着いて、「あ、またこのブログだ!」みたいな。途中からブックマークして、更新したらすぐ読んでいました。それで、EMCのみんなともよく『青春ゾンビ』のことを話してたよね。

C:僕もそのとき教えてもらいました。とんでもないやつがいるって。

松本:そのときまで、ロロの舞台は『朝日を抱きしめてトゥナイト』(2014)しか観たことがなかったんです。それなのに作風が似てるっていうのは、三浦さんと僕らの好きなものがもともと一緒だったからなのかもしれないですね。

ロロ『朝日を抱きしめてトゥナイト』予告動画

Enjoy Music Club(えんじょい みゅーじっく くらぶ)
左から:江本祐介、松本壮史、C(本人の希望により「C」で登場)。2012年結成。「エンジョイミュージック」を合言葉に集まった3人組ラップグループ。2015年11月に1stアルバム『FOREVER』発売。2018年には中国ツアーも敢行し、日本国外にも活動の幅を広げている。

三浦:『青春ゾンビ』も今年で10周年ですよね。そもそも、ブログをはじめたきっかけはなんだったんですか?

ヒコ:最初は本当に暇つぶしだったんですけど、途中からちょっとだけロマンティックな希望も抱いていて。僕が感じた「好き」とか「おもしろい」とか「美味しい」とか「楽しい」って気持ちをなるべく丁寧に記録して、それを見知らぬ誰かが受け取って、そこからまたなにかはじまっていったら素敵だな、と思ってブログを書いています。

三浦:なるほどなぁ。僕たちが今こうして一緒にいるのは、『青春ゾンビ』、つまりヒコさんのおかげなんですよ。僕はこれまで、テレビや漫画や映画のようなカルチャーの話が合う友達ってあんまりいなかったけど、EMCとはそういう話ができるから、すごく楽しいんです。大人になっても、友達ってできるんだなぁって。

「ほとんど演劇に触れたことがないときにロロを観て、『演劇ってこんなにポップなんだ!』と驚きました」(C)

ヒコ:そう言っていただき、僕も嬉しいです。そうして出会った三浦さんとEMCですが、EMCのメンバーから見た三浦さんはどういう印象ですか?

C:僕はほとんど演劇に触れたことがないときにロロを観て、「演劇ってこんなにポップなものなんだ!」と驚いたんです。明るいし、めちゃめちゃ楽しいなって思っていると、最終的にすげー感動して。その振り幅の広さにびっくりしました。あと「板野サーカス」とか、そういうところを引っ張ってくるか……と思って驚きましたね。

C

三浦:あれね(笑)。板野一郎さんっていうアニメーターがいるんですけど、『伝説巨神イデオン』とか『超時空要塞マクロス』っていうアニメ作品の、ミサイルがブオーーーンってなるアクション演出が「板野サーカス」って名付けられているんです。それを演劇でやりたいと思って、劇団のメンバーにアニメーションを見せて、やらせてましたね。

C:そういうところから引っ張ってくるのが、おもしろいなぁと思った。めちゃめちゃオタクな人なんだろうなぁって。

ヒコ:初めてロロを観たとき、やっぱり引用の手さばきに衝撃を受けました。あだち充『H2』のシーンを再現するとか、舞城王太郎『好き好き大好き愛してる。』の設定の換骨奪胎とか。同世代感のある慣れ親しんだカルチャーのパッチワークから、これまで観たことのない新しいものができあがっているのに感激したんです。

江本:俺は、三浦さんに作詞してもらった“願いに星を”を聴いたときに、ハッとなったなぁ。サビの歌詞がすげぇなと思って。歌詞が送られてきて、すぐにメロディーができました。LINEでやりとりしながら、その場ですぐ録音したもん。

江本祐介
江本祐介“願いを星に”MV

C:天才感のある2人のエピソードだ。

松本:三浦さんはとにかくアイデアが多いですね。打ち合わせをするときに、アイデアの量が尋常じゃない。

C:あと、三浦さんは劇団思いですね。

三浦:たしかに、ロロのことはいつも一番に考えているな。

「その頃のEMCは『現代日本の抱えるストレス』をテーマに曲を作っていました(笑)」(松本)

ヒコ:ロロとEMCそれぞれの成り立ちについても聞いていきたいのですが、ロロについては以前のインタビューでたっぷり語られているので割愛させてもらい(参考:三浦直之率いるロロは、なぜ演劇ファン以外からも支持される?)、EMCの結成について教えてください。

松本:2012年頃に、素人がいきなりSoundCloudにラップ音源をアップするブームがあったんですよ。そのおかげで音楽をはじめるハードルがめちゃめちゃ下がってたのもあり、大学が一緒だったCに「ラップをやりたい」って話をしました。ちょうどその頃、Cがラップをやってる女の子に一目惚れしていて……。

松本壮史

C:「やりましょう!」って。

三浦:いいエピソードだなぁ。

C:その子と話すきっかけがほしかったんだよね。僕と松本さんは大学が一緒で、僕とえもちゃん(江本)は小学校が一緒なんです。大学生の頃、松本さんが卒業制作で音楽を作ってくれる人を探していたときに、高円寺あたりで音楽をやっていたえもちゃんを紹介したのが、3人で集まったはじまりでした。

江本:家に遊びに行って作りましたね。それからしばらくは、連絡はとらず、薄い友達みたいな感じで。

C:そういうことがあったので、ラップをやるなら、トラックをえもちゃんに作ってもらおうってなったんです。まずは1回録音してみようってなって……。

江本:みんな恥ずかしがって、部屋の電気消して録ったの覚えてるわ。今聴くと、めちゃめちゃ声ちっちゃいんだよね。

松本:スチャダラパーの濃いリリックに憧れて、哲学みたいなことをラップしようとして失敗したよね。その頃のEMCは「現代日本の抱えるストレス」をテーマに曲を作っていました(笑)。

C:そのときはけっきょく完成せずに解散して。それからしばらく時間が空いたんだけど、再びCDを作ろうってことになって、久々に3人で再会したんです。

松本:その最初の音源が“EMCのラップ道”ですね。それでTwitterのアカウントも作って。

Enjoy Music Club“EMCのラップ道”(最初の音源はこちら

C:“EMCのラップ道”は、それまでシェリル・リンの“Got to Be Real”も、サンプリングっていう文化も知らなかったから、ぜんぶえもちゃんが作ったんだと思ってたんだよね(笑)。

江本:松本さんから「車の中で聞いたら、最高にヒップホップだった」ってメール来たのすごい覚えてる(笑)。そういえば、“エンジョイクラブソング”に、例のCの好きだった女の子の声が入ってるんですよ。

Enjoy Music Club“エンジョイクラブソング”

C:「女の子の声がほしいんだけど送ってくれない?」ってお願いして。

松本:「俺もラップやってるんだ」って電話する口実だよね(笑)。

三浦:最高のエピソードだなぁ。

「“100%未来”はまるで、『青春ゾンビ』が音になったみたいだ! と思いました」(ヒコ)

ヒコ:ここ数年でロロとEMCはたくさんのコラボレーションを発表してきましたよね。

江本:ヒコさんが『アイラブユー』のことをブログを書いてくれた次の週に、新代田の「えるえふる」という居酒屋でロロがイベントをやっていて、EMCの3人で遊びに行ったのが初対面ですね。『ポケモンGO』がリリースされた日で、みんなでやりながら帰ったの覚えてる。

三浦:いやー、帰ったね。それで仲よくなったもん。それから、僕がいわき総合高校の卒業公演で『魔法』という作品を作ったんですけど、その作品に江本さんの“ライトブルー”を使わせてもらうことになって。

松本:その『魔法』の流れから“ライトブルー”のMVを三浦さんと制作しましたね。

江本祐介“ライトブルー”MV

ヒコ:同時期に、EMCと三浦さんで“100%未来”もリリースしていますね。この曲の「君」というラインが「ポップカルチャー」と溶け合って、<君がいると朝が楽しい / 君がいると昼が楽しい / 君がいると夜が楽しい / 君がいるとずっと楽しい>とストレートに歌われるポップカルチャー賛歌には感動してしまいました。僭越ながらも、これはまるでブログ『青春ゾンビ』が音になったみたいだ! と。

Enjoy Music Club『100%未来 feat.三浦直之(ロロ)』(Apple Musicはこちら

三浦:『Quick Japan』(太田出版)から、僕にEMCの原稿を書いてほしいって依頼がきたんです。それで、当時EMCの3人が住んでいた家を訪ねてインタビューして。そこで一緒に曲を作ろうって話になったんだよね。『Quick Japan』だから、「いろんなカルチャーへの愛の歌にしたいです」って相談して作っていって。

松本:僕らはカルチャーへの愛をラップにするのが、恥ずかしいって言ってたんですけど、三浦さんがすごいやりたがって(笑)。

三浦:そうだったっけ……(笑)。

C:“100%未来”は、スタジオでみんなで考えたんですけど、すげぇ恥ずかしくて。顔をつき合わせてポエムを発表するみたいで(笑)。でも、そこでお互いに恥ずかしいことをやったから、わかり合えたのもあると思う。

三浦:たしかに、あれすげー緊張したもん。

三浦直之

「この三者を結びつけたのはSMAPかもしれないですね」(ヒコ)

ヒコ:ロロとEMCメンバーのコラボレーションは、Cさんのイベントでロロが上演した演劇『ひらひらの』(2016年)、テレビドラマ『デリバリーお姉さんNEO』(2017年 / テレビ神奈川とGYAO!の共同制作)、日本郵便のウェブCM(2016年)、江本さんが音楽と役者で参加したロロの舞台『BGM』(2017年)、サニーデイ・サービス“卒業”のMV(2018年)、Instagramストーリーズのドラマ『それでも告白するみどりちゃん』と『デートまで』(2018年)、テレビドラマ『ガールはフレンド』(2018年 / TOKYO MX)と、続いていきます。

サニーデイ・サービス“卒業”のMV

Instagramストーリーズのドラマ『それでも告白するみどりちゃん』第1話「爽快!! ダンスダンス大作戦」

三浦:いろいろやってるなぁ。『ひらひらの』の頃は、まだ僕の中でSMAP解散が尾を引きずっていて、SMAPにオマージュを捧げた作品でした。SMAPとロロの青春を重ね合わせた劇を作ろう、みたいに。

ヒコ:ミュージカル劇で、江本さんが制作した劇中の音楽がすごかったですよね。SMAP愛が炸裂していました。

三浦:そう、このときの音楽は江本さんに「SMAPの新曲を作ってください」と依頼しました(笑)。ちなみに、EMCで曲を作るとき、SMAPって参照したりしてるんですか?

江本:アルバム『FOREVER』のボーナストラックの“よろしくね”は、めっちゃSMAPを意識して作りましたね。

Enjoy Music Club“よろしくね”

松本:ちょうどその頃、SMAPが流行ってたんですよ、3人の中で。

ヒコ:「EMCなりのSMAPテイスト」って、Twitterでつぶやいていましたよね。1990年代SMAPの青春感をサウンドの下敷きにしながら、持て余す若さの描写が現代的にアップデートされていてグッときました。僕もSMAPについては度々ブログで書かせてもらっていますし、そう考えると、この三者を結びつけたのはSMAPかもしれないですね。(参考:Enjoy Music Club 『よろしくね』 / 『青春ゾンビ』2016年6月28日

三浦:たしかに、そうですね! やっぱりSMAPは偉大だ。

この10年で印象に残っている「ポップカルチャー」を語り合う

ヒコ:ここまで話を聞いてきても、三浦さんとEMCの「ポップカルチャー」に対する愛と感謝のまなざしには、共通する部分があるのではないかと思います。そんな2組の原体験を考えるべく、この10年で印象に残っているポップカルチャーを挙げていきながら、三浦さんとEMCに通じる感覚を探っていきましょう。

C:10年かぁ~。『笑っていいとも!』(フジテレビ系)のグランドフィナーレは入るなぁ。

三浦:『笑っていいとも!』『SMAP×SMAP』『とんねるずのみなさんのおかげでした』『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)の最終回は入っちゃう。

左から:三浦直之、C

松本:これ、じっくりやってると5時間くらいかかっちゃうよ(笑)。

三浦:バラエティーなら俺は『クイズ☆タレント名鑑』(TBS系)かな。とくに『GO!ピロミ殺人事件』は、バラエティーから、突然ドラマになるっていう流れにすごい衝撃を受けたのを覚えてる。

江本:急にマスパンのナレーションが始まってね。あれは最高だった。

三浦:あそこからプロデューサーの藤井健太郎さんの番組を追いかけるようになったなぁ。『Kiss My Fake』(TBS系)も大好きだし。

松本:俺は『めちゃ×2イケてるッ!』なら、エスパー伊東ドッキリが好きなんだよなぁ。「24時間テレビ」と偽って、いろいろチャレンジさせるんだけど……。

C:エスパー伊東がどんどんズルしちゃうやつだ!

ヒコ:最後、逮捕されちゃうんですよね(笑)。

三浦:松本さんがそこまでレコメンするなら、俺たちの『めちゃイケ』はエスパー伊東ドッキリにしよう。

松本:僕ら全員が大好きなのは、やっぱり『SMAP×SMAP』の「SMAP5人旅」じゃないですか?

松本壮史

三浦:あー! それは絶対入りますよ。今でも、元気なくなるとよく見返すもん。

松本:SMAPに関しては、ヒコさんの解説がほしいです。副音声みたいにヒコさんに解説してもらいながら、みんなで一緒に見たい(笑)。

ヒコ:「SMAP5人旅」に関しては、車の座席の配置だけで30分はしゃべりたいですね。

一同:(笑)。

ヒコ:運転する素振りは一切見せないんだけど、助手席を絶対に譲らない木村くんと、それを当たり前のように受け入れている4人とか。最初は中居くんが運転席で、助手席が木村くんなんですよ! 「なんでワイパー動かすんだよ」「だってウインカーこっちなんだもん」みたいな会話を2人だけでしているのが尊くて……。

C:ちょっとだけ2人の空間になる瞬間。あれはマジでたまんない。

ヒコ:カラオケのシーンももちろんいいんですけど、細かいところで言うと、「豚の生姜焼き食わない?」と中居くんに提案する慎吾ちゃんとか。中居くんの白米のかっこみ方は至高ですね。

松本:美味そうに食いますよね。わかるわ~。

「あのとき、一番対バンしたいバンドはTHREE1989だったもん(笑)」(江本)

C:あとテレビなら『テラスハウス』(フジテレビ系)は入れたいな。

三浦:いいね。俺はやっぱり軽井沢編の序盤だな。あんなにノンストップでなにかを見続けたの、すごく久しぶりだった。

江本:翔平が聖南さんに教会で告白するシーンもすげえ好きだった。あのとき、一番対バンしたいバンドはTHREE1989だったもん(笑)。

江本祐介

ヒコ:スポ根少女漫画的ラブストーリーとか、教会での告白とか、月9で見たいものがぜんぶ詰まってる感じでしたよね。

三浦:まさに。トレンディドラマはもう月9では作ってくれないですからね。

ヒコ:ラジオはどうですか? みんな聴いてますよね?

松本:『オードリーのオールナイトニッポン』とか『空気階段の踊り場』とかいろいろあるけど、ひとつ選ぶなら『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』で、車でアメリカ大陸を横断しながら放送するって体の回がめちゃくちゃよかった。あれ、『山下智久・ルート66~たった一人のアメリカ』って番組のオマージュらしいです(笑)。

C:パイ食い競争しているアメリカの村に寄ったりして……『スタンド・バイ・ミー』にそういうシーンがあるんですよね。

三浦:コント感とか名作映画への下敷きとか多くて、今までにないラジオだったよね。

三浦直之

「これが「エモい」っていうものか、みたいな感じだったもんね」(C)

C:音楽ならどう? えもちゃん、名盤教えて。

江本:前野健太『さみしいだけ』(2009年)かな。すげぇ聴いたし、今でも聴く。ほぼ1人で作っていて生活感もあるけど、気の効いたアレンジもあって、あと歌詞がとにかくいいですよね。

松本:めちゃめちゃ聴いたなぁ。前野健太もエピソードなかった?

C:好きだった女の子に、前野健太のCDを貸してもらって、一緒にライブ行って、前野健太きっかけで付き合いましたね。恥ずかしい……。

江本:あと、曲なら“Local Distance”ですね。EMCをはじめるときに松本さんに教えてもらって。

三浦:聴いてた、聴いてた。めちゃめちゃ好き。

松本:「今夜が田中」っていうインターネット上の謎のTwitterアカウントがあったんです。それがめちゃめちゃセンスよくて、ヒップホップもめっちゃ詳しいんだけど、誰もその人に会ったことない、みたいな。

C:これが「エモい」っていうものか、みたいな感じだったもんね。インターネットの現実の距離とかもテーマにしつつ。

C

ヒコ:映画はどうですか?

松本:「日本で一番おもしろい映画」とかで検索すると出てきたりするから、ちょっと恥ずかしいんですけど、『桐島、部活やめるってよ』(2012年)はやっぱり入れたいな。

三浦:『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2009年)がちょうど10年前だわ。めちゃめちゃ感動したんだよな。“翼をください”使うの、すぐ舞台で真似したもん。あと、『君の名は。』(2016年)はすごかった。細部にすごく演劇っぽさを感じたんですよ。

C:漫画はどう?

三浦:漫画でみんなが文句なしで共通で挙げるのは田島列島さんの『子供はわかってあげない』(2014年)だよね。あと、『ザ・ファブル』(2014年)ね。あれは珍しく全員読んでるんじゃない?

ヒコ:僕、読んでないですねぇ。どんな内容なんですか?

C:最強の殺し屋のファブルってのがいて、普通の日常生活を強いられるんだけど、やっぱどうしてもトラブルに巻き込まれてスキルを出してしまうみたいな……この作品、上手くおもしろさを言葉にできないんだよな。

江本:キャラがみんないいのと、台詞のやりとりがいい。

松本:そう! 会話のセンスがいいんだよ。アクションとかもめちゃめちゃ上手いし、画力もある。

ヒコ:へぇ! 読んでみます。

「みなさんが愛し、表現するポップカルチャーは、生活と密接に結びついているということなのかもしれないです」(ヒコ)

三浦:なんか抽象的なのも選びたいんだよね。現象とか概念とか。たとえば、サウナブームとか。

江本:コンビニのコーヒーマシンはどうですか?

三浦:たしかに。俺もあれがきっかけでコーヒー飲むようになって生活が変わった。

C:三浦さんの好きな「いきなり!ステーキ」は?

松本:店名が秀逸なんだよなぁ。「いきなり!ステーキ」って。あと、1人で行くといいんですよね、友達と行ったりしないで。雑に食うのがいい。

三浦:初めて行ったとき、感動したんだよなぁ。今でも行くたびにワクワクします。

松本:日清カップヌードルのシンガポールのラクサ食べた? あれマジで美味くないですか? もうあんまり売ってないですよね。

松本壮史

C:俺はトムヤムクンが衝撃だった!

三浦:へぇ~、めっちゃ食ってみたいな。しかし、カップヌードルまで出てくると、ポップカルチャーとは? ってことになるじゃん(笑)。

江本:セブンイレブンのたまごコッペパンは? あれ美味いですよね。セブンはリニューアルしてパンが美味くなったんですよ。

松本:セブンのたまごサンドは、『マスター・オブ・ゼロ』のアジズ・アンサリも絶賛してたらしいですよ。

ヒコ:じゃあ、たまごサンドもポップカルチャーか。

C:俺はセブンのお好み焼きパンかな。

三浦:もう、ただの好きな食べ物話じゃん!(笑)

三浦直之

ヒコ:(笑)。今日の対談、深夜のファミレスで気の合う仲間で集まって夜通し駄弁り合っている感じになりましたね(笑)。このインドアボンクラ企画を通して、みなさんが愛し、表現するポップカルチャーは、生活と密接に結びついているんだなと感じました。好きなカルチャーを挙げるとき、必ずそのときの暮らしぶりのエピソードが付随して思い出されていく感じ。

三浦:たしかに、好きなものを言い合っているうちに、そのときに感じたいろんなことも同時に思い出していました。だから、僕らがポップカルチャーを表現に引用するのって、すごく自然な感覚なんですよね。ヒコさんがブログを書き続ける理由と同じように、自分の好きなものを伝えたいっていう感覚もありますし。

ヒコ:まさに、好きなものがあれば<未来はいつも100%楽しいから>ですね。ロロとEMCにはこれからも、どこかの見知らぬ誰かの未来を明るく照らすような作品を作り続けていってほしいです。

4人が選ぶ、この10年のベストポップカルチャー

■三浦直之
『SMAP×SMAP』「はじめての5人旅」(テレビ)
ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(書籍)
新海誠『天気の子』(映画)
今石洋之『天元突破グレンラガン』(アニメ)
阿部和重『ピストルズ』(書籍)
宮藤官九郎『あまちゃん』(ドラマ)
小川哲『ゲームの王国』(小説)
清野とおる『東京都北区赤羽』(漫画)
タナカカツキ『サ道』(漫画)
蜷川幸雄『海辺のカフカ 再演』(演劇)

■江本祐介
メイヤー・ホーソーン『A Strange Arrangement』(音楽)
スカート『エス・オー・エス』(音楽)
坂本慎太郎『幻とのつきあい方』(音楽)
オノマトペ大臣『街の踊り』(音楽)
トロ・イ・モワ『Anything in Return』(音楽)
stillichimiya『死んだらどうなる』(音楽)
PIZZICATO ONE『わたくしの二十世紀』(音楽)
宇多田ヒカル『Fantome』(音楽)
『ゼルダの伝説 ブレスオブ ザ ワイルド』(ゲーム)
『ザ・ノンフィクション』「たま平、しっかりしろ!」(テレビ番組)

■松本壮史
『マスター・オブ・ゼロ』シーズン2(ドラマ)
『レディ・バード』(映画)
PSG『David』(音楽)
『アルコ&ピース オールナイトニッポン(ZERO)』(ラジオ番組)
オードリー(人物)
『とにかく金がないTVとYOU』(テレビ番組)
Donnie Trumpet & the Social Experiment『Sunday Candy』(MV)
ECD『ホームシック 生活(2~3人分)』(書籍)
田島列島『子供はわかってあげない』(漫画)
ロロ『父母姉僕弟君』(演劇)

■C
『アメリカン・スリープオーバー』(映画)
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(映画)
ケン・リュウ『紙の動物園』(書籍)
『極楽とんぼの吠え魂』10年越しの最終回(ラジオ番組)
稲川淳二『怪談・生き人形』(オカルト)
石黒正数『それでも町は廻っている』(漫画)
『まっすぐに智華子、夢へ ~全盲の少女、18歳の軌跡~』(テレビ番組)
宇多田ヒカル活動再開(出来事)
チャカ・カーン『Like Sugar』(MV)
Superorganism『Superorganism』(音楽)

■ヒコ
藤子・F・不二雄『藤子・F・不二雄大全集』刊行(書籍)
『オードリーのオールナイトニッポン10周年全国ツアーin 武道館』(ライブ)
『三四郎・浜口浜村・ドリーマーズの3組のライブ(仮)』(ライブ)
cero『武蔵野クルーズエキゾチカ / good life』(音楽)
ayU tokiO 『遊撃手』(音楽)
岩本ナオ『町でうわさの天狗の子』(漫画)
堂園昌彦『やがて秋茄子へと至る』(書籍)
岸政彦『断片的なものの社会学』(書籍)
坂元裕二『それでも、生きてゆく』(ドラマ)
ロロ『LOVE02』(演劇)

リリース情報
Enjoy Music Club
『東京で考え中』

2019年5月9日(木)配信

イベント情報
ロロ新作本公演『四角い2つのさみしい窓』

2020年1月30日(木)~2月16日(日)
会場:こまばアゴラ劇場
脚本・演出:三浦直之

プロフィール
三浦直之 (みうら なおゆき)

ロロ主宰/劇作家/演出家。10月29日生まれ宮城県出身。2009年、日本大学藝術学部演劇学科劇作コース在学中に、処女作 『家族のこと、その他たくさんのこと』が王子小劇場「筆に覚えあり戯曲募集」に史上初入選。同年、主宰としてロロを立ち上げ、全作品の脚本・演出を担当する。自身の摂取してきた様々なカルチャーへの純粋な思いをパッチワークのように紡ぎ合わせ、様々な「出会い」の瞬間を物語化している。2015年より、高校生に捧げる「いつ高シリーズ」を始動。高校演劇のルールにのっとった60分の連作群像劇を上演し、戯曲の無料公開、高校生以下観劇・戯曲使用 無料など、高校演劇の活性化を目指す。そのほか脚本提供、歌詞提供、ワークショップ講師など、演劇の枠にとらわれず幅広く活動中。2016年『ハンサムな大悟』第60回岸田國士戯曲賞最終候補作品ノミネート。

Enjoy Music Club (えんじょい みゅーじっく くらぶ)

2012 年結成。「エンジョイミュージック」を合言葉に集まった3人組ラップグループ。2015年11月に1st アルバム「FOREVER」発売。NHK E テレの子ども番組「シャキーン!」やテレビ東京系「モヤモヤさまぁ~ず 2」、日本テレビ系深夜ドラマ「住住」に楽曲提供。テレビ東京『ゴットタン』内企画「マジ歌選手権」ではバカリズム氏とコラボ。同番組ライブ企画『マジ歌ライブ2018in横浜アリーナ』では12000人を前にグループ初のコール・アンド・レスポンスに挑戦した。2018年には中国ツアーも敢行し、日本国外にも活動の幅を広げている。

ヒコ

ポップカルチャーととんかつを愛するブログ『青春ゾンビ』の主宰。



記事一覧をみる
フィードバック 1

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • 三浦直之とEMCによるファミレス感漂う「ポップカルチャー」談義

Special Feature

Crossing??

CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?

詳しくみる

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて