TENDREが語る、脚光を浴びるようになるまで 転機となった出会い

私たちの人生は「出会い」や「巡り合わせ」によって形作られ、ときに思いもよらぬところに導かれてしまう。それは、本稿の主人公・河原太朗にとっても例外ではなかった。

2017年10月、Ryohu(KANDYTOWN)のプロデュースを手がけたことをきっかけに、河原の人生の針路は少しずつ変わりはじめた。2017年12月、河原はソロプロジェクト・TENDREを始動させ、今ではCharaのツアーサポートを務めたり、田島貴男(ORIGINAL LOVE)をはじめとする様々なミュージシャンとの交流を持つなど、活動の幅を一層広げている。

今回CINRA.NETでは、河原のこれまでの「音楽人生」にスポットを当て、その節目でどのような「出会い」や「巡り合わせ」を経験してきたのかを訊いた。またインタビュー後半では、CASIOの新しいキーボード「CT-S200」を試奏してもらい、「新たな楽器との出会い」がもたらすインスピレーションについても語ってもらった。

TENDRE=河原太朗のすべてのはじまりとなる、最初の「出会い」

―河原さんはマルチプレイヤーで、TENDREの音源でも一人多重録音をされています。そもそも、最初に出会った楽器はなんだったのですか?

河原:最初の出会いでいうと、やっぱりピアノですね。両親の影響で、物心がついたときにはピアノに慣れ親しんでいました。

TENDRE(てんだー)
鍵盤、ベース、ギター、サックスなども演奏するマルチプレイヤー、河原太朗のソロプロジェクト。Yogee New Waves、Ryohu、sumika、Chara、SIRUPなど様々なバンドやアーティストのレコーディングやライブに参加し、共同プロデュースなども務め、その活動は多岐に渡る。2019年10月2日、HondaのキャンペーンCMに起用された“ANYWAY”、J-WAVE「TOKIO HOT 100」では最高位4位を記録した“SIGN”を含む新作EP『IN SIGHT』をリリースした。

河原:ただ、自分から率先して「楽器をやろう」と思ったのは、中学生になって吹奏楽部に入部したときです。まずはトランペットからスタートしたのですが、自分で楽器をメンテナンスしたり、毎日基礎練習をしたり、楽器を「扱う」うえで必要なことをそこで学びました。

中学の頃って時間があり余っているから(笑)、毎日ずっと楽器を触れるのはすごく大きかったです。その時間があったからこそ、音楽に没頭する自分が形成されたというか。

―入り口が管楽器だったことは、河原さんにどんな影響を与えました?

河原:トランペットというのは単音楽器で、吹奏楽部ですから他の管楽器とアンサンブルを作るわけですよね。そこで自分の立ち位置や、チームワークの大切さを学ぶことができた。

自分以外の楽器がどんな動き方をして、それによって和声がどう変わっていくのかにも興味を持つようになり、ピアノを使って勉強するようになりました。自分のなかの「コード感」は、そこでかなり培われたと思います。

―トランペットだけを極めようとするのではなく、自分以外の楽器に興味を持ったり、楽曲の「構造を知りたい」と思ったり、そういう好奇心が河原さんをマルチプレイヤーにしたのかもしれないですね。

河原:興味が分散しがち……というところはあったのかもしれないですけどね(笑)。でも、そのおかげで中3のときにはバリトンサックスを演奏するようになり、低音パートが持つ役割の大切さを知ることができたし、金管楽器から木管楽器に変わったことで、それぞれの違いを学べたのも大きかったと思います。

―トランペットはアンサンブルの花形で、バリトンサックスは縁の下の力持ちですもんね。

河原:そうなんです。それぞれの楽器のあるべき「振る舞い方」ってありますからね。アンサンブルのあり方を意識するようになるきっかけですね。それは、スポーツのポジショニングの考えにも近いかもしれない。……いや、スポーツやったことないし、今のは『スラムダンク』からの受け売りなんですけど(笑)。

TENDREのバンドアンサンブルが心地よい理由

―でも確かに、楽器のアンサンブルってスポーツのチームプレイに通じるところはあるかもしれないですね。

河原:自分がマルチプレイヤーなのかどうかはわからないですが、「どれだけたくさんの楽器を弾けるか?」よりも、「それぞれの楽器の役割をどれだけ知っているか?」のほうが大切なのかなと思う。そこは吹奏楽部で学んだことです。

―TENDREとしての活動では、レコーディングにおける「一人多重録音」だけでなく、ライブでのアンサンブルもすごく大切にされていますよね。そこはやはり、吹奏楽部時代に「チームワーク」の楽しさを知ることができたのも大きい?

河原:ああ、そうですね。今、ライブではTENDREは5人編成くらいで演奏しているんですけど、それぞれのパートの重要性にリスペクトしながらコンダクトができているのは、吹奏楽部時代に学んだことが活かされている気がします。

TENDREのスタイルの原点。盟友との「出会い」が形作る現在

―では、今の「TENDRE・河原太朗」を形作るうえで、最も大きかった出会いというと?

河原:KANDYTOWNというヒップホップクルーと、そのメンバーであるMC / トラックメイカーのRyohuくんですね。彼の『Blur』(2017年)という作品に、共同プロデューサーとして関わったことが一番デカかったと思います。

Ryohu『Blur』を聴く(Apple Musicはこちら

河原:もともとの出会いは下北沢のGARAGEというライブハウスだったんです。絆みたいなものを当時から感じてはいたんですけど、数年前から一緒に曲を作ることが増えてきて。

そのときに、「ここにこういう楽器が入ったらいいと思うんだよね」みたいなことをRyohuくんがオーダーしてきて、「ギターだとこんな感じ?」とか、「ベースはこういうフレーズとかどう?」みたいな感じで提案するようになったんです。そんなに難しい演奏はできないんですけど、そうやって実験みたいなことを2人でやっていました。

河原:それで、2年前に彼がアルバムを出すってなったときに、ギター、ベース、鍵盤、あといくつかの楽曲では管楽器を演奏したんです。それが、のちのTENDREのレコーディングスタイルにつながっていったのかなと思います。今お世話になっているレーベルと出会って、TENDREとして活動しはじめるのも、そのRyohuくんとの制作が終わってすぐでしたし。

TENDRE『Red Focus』(2017年)を聴く(Apple Musicはこちら

―TENDREの作品が、「一人多重録音」であっても密室的というよりむしろ風通しのよさを感じるのは、そういう「共同作業」の延長線上にあるからなのかもしれないですね。

河原:確かに。先日リリースしたEP『IN SIGHT』では、楽曲ごとに様々なゲストを呼んでいるんですけど、「ちょっとスタジオに遊びに来て弾いてもらう」みたいに自然な流れで参加してもらえたのは、Ryohuくんとの作業があったからこそだと思います。本当に彼の影響は大きいですね。僕とAAAMYYY(Tempalay)にとっては「永遠の兄貴」みたいな(笑)。

「日本を代表する1曲を」。音楽家としての指針となる名曲との「出会い」

―『IN SIGHT』は、1stアルバム『NOT IN ALMIGHTY』(2018年)でも感じられた「メロディーの強さ」みたいなものが、さらに増していると思いました。以前のインタビューで河原さんは、「国民的な、日本を代表する1曲を作ること」が最終的にやりたいことだとおっしゃっていましたが、そう思い至る「音楽との大きな出会い」はありましたか?

TENDRE『IN SIGHT』を聴く(Apple Musicはこちら

河原:それでいうと、はっぴいえんどの“風をあつめて”ですね。母親がとにかく好きでずっと家で聴いていたんです。「邦楽のなかでは一番好き」と言っていて、それが自分のベーシックにもなっている気がします。メロディーももちろん好きなんですが、歌詞が割と抽象的というか。角度によっていろんな風景が見えてくるけど、サビの<風をあつめて>で一気に持っていかれるんですよね。

はっぴいえんど“風をあつめて”を聴く(Apple Musicはこちら

河原:あとは、坂本九さんの“上を向いて歩こう”。海外の人たちにも“SUKIYAKI”という名前で知れ渡っていますよね。あの曲も、誰もが口ずさめるシンプルなメロディーや、歌詞に込められた情感にグッとくる。

それが日本人だけじゃなく、世界中で受け入れられているのがすごいと思うし、目指したいところでもありますね。ただ、それは意識して作るものではなく、自分なりにいい曲を追求していたら「結果的に国民的な歌になっていた」というのが理想的な形だと思っています。

坂本九“上を向いて歩こう”を聴く(Apple Musicはこちら

「今のままで大丈夫」。Charaや田島貴男ら、先輩の背中が教えてくれたこと

―たとえば、『IN SIGHT』収録の“SELF”や“ANYWAY”のメロディーは、今おっしゃった“SUKIYAKI”や“風をあつめて”にも通じる日本的な懐かしさがありますよね。

河原:いわゆるサビメロの部分は純日本的な旋律ですよね。一時期こういう曲を歌える存在であるべきか、それともマニアックな道を追求していくべきか自問自答していた時期があったんです。

最終的に、より多くの人に自分の想いを届けたいのであれば、「キャッチーでなにが悪い?」という気持ちに行き着いたんですけど。ある意味では開き直れたというか(笑)、「あまり難しいことを考えず、自分が歌いたい歌をこれからも歌っていこう」と。

TENDRE“SELF”を聴く(Apple Musicはこちら

―そういう意味では、多くの人の耳に届いて欲しいという気持ちが『NOT IN ALMIGHTY』を作った頃よりも強くなったのでしょうか。

河原:そう思います。ただ、その足取りを急に早めるつもりは全然なくて。僕は30歳でデビューしたのもあって、「今、調子いいんだからペースを上げていきましょう」みたいな空気になることって、いろいろな場面で起こり得るんですよね。

それに流され、つい勇み足になってしまうと、万が一転んだときのケガは普段よりも治りにくいし、一生残る傷になってしまうこともあり得る。そこは、ちゃんと自分のペースをキープしながら、一歩一歩を充実したものにしていきたいです。

河原:そもそも音楽に年齢なんて関係ないですからね。風潮として若い人がもてはやされがちですけど、歳を重ねるほどいい音楽を作れるようになったほうがいいに決まってるじゃないですか(笑)。

―本当にそう思います。河原さんが親交を深めているCharaさんや、田島貴男さんはまさにそういう存在ですよね。

河原:こういう言い方はおこがましいかもしれませんが、あのおふたりも自分と感覚が近いというか。世代関係なくいろんな人と音楽を奏でたい人たちだと思うんです。実際、お会いしてそれを実感しました。「この人たち、めちゃくちゃ音楽が好きなんだな……」って(笑)。

今まで年齢に関する葛藤がなかったわけではないんですけど、田島さんやCharaさんのような先輩方と出会えたからこそ、今の自分を受け入れられるようになったというか。「今のままで大丈夫」と思えるようになったところはありますね。

楽器との出会いは人生を変えてしまう。音楽家に限らず、誰でも、いくつになっても

―今回、河原さんにはCASIOが新たに開発したカシオトーン「CT-S200」を実際に弾いてもらいました。カシオトーンって、これまで触ったことはありましたか?

河原:高校のときに部室に置いてあったり、友人の家にもあったりして、もちろん名前も知っていたし馴染みのある楽器ではあったのですが、ちゃんと演奏したのは今回が初めてです。とにかく弾きやすくてびっくりしました。

河原:音色は400種類、リズムは77種類もプリセットされていて。カシオトーンらしいチープで可愛い音色から、本格的なピアノサウンドまで揃っているんですよね。エレピの音だけでも相当種類がある。しかもスピーカーが搭載されているから、モニターに接続する必要もないし、電源を入れたらすぐ音が出せるのは嬉しいですね。

―スピーカーの音質はいかがですか?

河原:すごくしっかりしています。ローがちゃんと出ているから、リズムパターンも臨場感あるし。「ダンスミュージックモード」にすれば、好きなリズムパターンを組み合わせながら、リアルタイムでエフェクトをかけたり、シャウトボイスを適当に入れたり、DJ気分で遊べますね。

―CT-S200が1台あれば、なにか思いついたときにすぐ電源を立ち上げてアイデアを試せるし、こんなふうに遊びながらインスピレーションが湧いてくることもありそうですよね。

河原:そう思います。僕はいつも「Logic Pro」という音楽ソフトを使ってPCで曲作りをしているのですが、あとから細部を作り込むにしても、まずは「CT-S200」をメモ代わりに使ってみるとか。おっしゃるように、曲作りに煮詰まったときなど気分転換にもよさそうですね。リズムパターンも、シンプルな8ビートからEDMっぽい打ち込みビート、インドやブラジルっぽいパターンまで入っていてテンポも簡単に変えられるし。

大事なのは、遊び心。触れることで新たなインスピレーションと出会う

―CT-S200では、コードがわからなくても「カシオコード」機能を使えば簡単にコードを鳴らすことができます。鍵盤をひとつ押すとメジャーコード、その隣の鍵盤を一緒に押すとマイナーコード、3つ同時に押すとセブンス、4つ同時に押すとマイナーセブンスが鳴らせるんです。

河原:そんな機能まであるんですか! それならコード譜を見ながら、コードの響きを学ぶこともできますね。「リズム」「音色」「和音」を手軽に楽しめるし、音楽を作るプロセスも、これでなんとなく見える。リズムに対してベースラインがどう組み合わさっているのか、そこにどんな音色が乗っかっているのか、など曲の仕組みみたいなものを「体感」できるのはいい勉強になりますね。

―カシオトーンならではの音色に魅了される人も多いですよね。内臓スピーカーにマイクを立てて、部屋の空気と一緒にレコーディングするミュージシャンは結構多い。

河原:そうなんですよ。実は今もそういう感覚で音を探していたところです(笑)。打ち込みのパターンも、録音の仕方によってはしっかり使えそうですし。定番のソフトシンセを使うとどうしても似た音色になりがちですけど、マイクの距離などで「他にないオリジナルの音色」も作り込めそうです。

―CTS-200は取っ手がついているので、持ち運びも快適です。いつもとは違った環境で音を出してみることで、思いも寄らないアイデアが湧くこともありそうですよね。

河原:この取っ手の存在感、すごいですね(笑)。ありそうでなかった斬新なデザイン。しかも軽いんですね。僕自身、外での曲作りは今まであまりやったことなかったんですけど、これくらい気軽に持ち運べるんだったら一度試してみたいですね。電池で駆動するなら、キャンプなどに持って行っても楽しそうだな。

―USB端子も付いているので、MIDIキーボードとしても使えるんですよ。タブレットでアプリを立ち上げ、ビンテージシンセのモデリング音色をCT-S200で鳴らすこともできる。スマホとカシオトーンさえあれば、いつでもどこでも、どんなシンセの音でも鳴らせるといってもいい。

河原:多機能すぎてびっくりです(笑)。操作パネルがものすごくシンプルだから感覚的にいじれるし、人によってはライブで使う人もいるんじゃないかな。初めて触る人にも親切だし、本格的に使い込みたい人にとっても奥の深い楽器だなと思いました。

―こういうふうに新しい音色、楽器との「出会い」というのも、音楽家にとってはとても大事なことですよね。

河原:そうですね。実際、「この音が、こんなふうに鳴ってたらよさそうだな」とか、「この楽器でこのフレーズを弾きたい」というのは、新しい曲を作るときのモチベーションになることは多いので。

―今回は「出会い」をテーマにお話を伺いながら、「CT-S200」という新たな楽器との「出会い」を体験していただきました。最後に、改めて「CT-S200」の印象をお聞かせいただけますか?

河原:今って、様々な情報がスマホやタブレットに集約され、ソフト音源のクオリティーもどんどん上がっていますけど、こうやって鍵盤を押さえて音を出すというフィジカルな感触は、ソフト音源では味わえないものだなと改めて思いました。遊び心に溢れているから、子どもの頃からおもちゃ感覚で触っていた子が将来、ミュージシャンになる可能性を思うと夢が広がりますよね。

さっき「音楽に年齢なんて関係ない」と言いましたけど、たとえば年配の方で「これから音楽をはじめてみたい」という人にとっても強い味方になってくれると思います。「CT-S200」が、いろんな人にとって「新たな出会い」のキッカケになるといいですね。

製品情報
カシオ「CT-S200RD/BK」

2019年9月27日(金)発売
価格:オープン価格

カシオ「CT-S200WE」

2019年10月4日(金)発売
価格:オープン価格

リリース情報
TENDRE
『IN SIGHT - EP』

2019年10月2日(水)発売
価格:1,980円(税込)
DDCR-7108

1. SIGN
2. VARIETY
3. ANYWAY
4. SELF
5. IN SIGHT
6. YOU CAN SEE

プロフィール
TENDRE
TENDRE (てんだー)

鍵盤、ベース、ギター、サックスなども演奏するマルチプレイヤー、河原太朗のソロプロジェクト。Yogee New Waves、Ryohu、sumika、Chara、SIRUPなど様々なバンドやアーティストのレコーディングやライブに参加し、共同プロデュースなども務め、その活動は多岐に渡る。2019年10月2日、HondaのキャンペーンCMに起用された“ANYWAY”、J-WAVE「TOKIO HOT 100」では最高位4位を記録した“SIGN”を含む新作EP『IN SIGHT』をリリースした。

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