変態紳士クラブは自らをJ-POPと謳う 根本に眠るジャンルへの敬意

プロデューサー・トラックメイカーのGeG、ラッパーのWILYWNKA、DEEJAYのVIGORMANで構成されるユニット、変態紳士クラブ。昨年リリースされたそれぞれのソロ作品も含め、ニューカマーとしてシーンを切り拓き、先導する存在である三者(特にWILYWNKAは、韻踏合組合のHIDADDYをして『いまの大阪のヒップホップとはWILYWNKAです』とまでいわしめている)。その注目度の高さは、2年半前にリリースされた『ZIP ROCK STAR』収録曲のYouTube再生数や、東名阪CLUB QUATTROツアーなどで、実数として証明してきた。

そして新作となる『HERO』では、『ZIP ROCK STAR』でも表現されていた「ポップネス」の部分をさらに強化し、ポップミュージックとしての強さを落とし込んだ作品となった。

それぞれのアーティストのソロ、そしてキャリアを追えば、彼らが歌謡曲から繋がる「日本的なポップミュージック」「J-POP」サイドにいないことは明白であり、むしろアンダーグラウンド、ストリート的なアプローチを活動の中心にしている。しかし「ポップミュージック」という概念が拡充され、ストリートミュージックの方法論や感性が自然な形でポップスの中に受容されるようになった現在。彼らの作品においても、ソロではなくユニットとして「組み合う」、つまり作品の中に必然的に「社会」が生まれたことによって、そこには自然に「ポップネス」が立ち表れたのだろうし、それゆえに生まれた現代的なポップス性が、この『HERO』には通底している。その彼らの音楽が、「J-POP」として求められ、称賛を浴びるのならば、これほど痛快なことはないだろう。「リアルなポップス」だ。

この3人でどこまでいけるのかを試してる部分はあります。(VIGORMAN)

―1stEPとなる『ZIP ROCK STAR』から今作の『HERO』まで、約2年半が経ちました。昨年のそれぞれのソロ作品リリースや、東名阪CLUB QUATTROツアー『変態紳士舞踏会 TOUR 2019』などの精力的な活動があったので、そんなに経ってたのかと意外に思える感触もあって。

GeG:変態紳士クラブとしてはEPしか出してないのに、各地CLUB QUATTROのツアーと新木場Studio Coastでワンマンライブをやってたというのは、よく考えたら無茶苦茶やなという感じもしますよね(笑)。活動の最初の頃とかは、全然人がいなくてヤバかったのになあ。

VIGORMAN:初ライブは20人やったし。

GeG:20人もおらへんかったんちゃう?

WILYWNKA:ステージに出ていって、「あれ……?」っていう(笑)。

VIGORMAN:「あ、変態紳士クラブ、あかんかったんや……」って(笑)。

変態紳士クラブ(へんたいしんしくらぶ)
左から、GeG(ジージ)、WILYWNKA(ウィリーウォンカ)、VIGORMAN(ヴィガーマン)。2017年結成。昨今ヒップホップ、レゲエ両シーンにおいて若手最高峰との呼び名も高いラッパーWILYWNKAと、レゲエ・ディージェイVIGORMAN、共に1997年生まれの2人が、プロデューサー / トラックメーカーのGeGを介して結成した3人組ジャンルレスユニット(3人ともに大阪在住)。

―ははははは。その状況から全国ツアーを成功させるまでに、注目度と3人の体力が上がっていったということですね。

WILYWNKA:お客さんの入りは、如実に変化として感じますよね。目に見える実感としてもそうやし、人数が増えればやっぱり僕らもワクワクするんで。

VIGORMAN:それに、もともと遊びから始まったユニットがそうなれたのは嬉しいですね。最初に“UGHHHHH”を作った時は、もともと友達やった3人が「ちょっと1曲作ってみようか」ぐらいの感じだったんで。

WILYWNKA:でも、1曲作ったらもう1曲いけんなと思って、それでまた1曲作ったら……って手応えがどんどん強くなっていったんですよ。

GeG:最初に“WAVY”をリリースした時にはもう、このままいけるんちゃうかな、っていう感触はありましたね。ただ、最初に『ZIP ROCK STAR』を出した時はーー。

VIGORMAN:自分らでCD出すのってこんな大変なんや、って。いったら出せるぐらいに思ってたのに(笑)。

WILYWNKA:だから今回はメジャー流通でよかったです(笑)。

変態紳士クラブの1stEP『ZIP ROCK STAR』を聴く(Spotifyを開く

―昨年、GeGさんは『Mellow Mellow~GeG's PLAYLIST~』、VIGORMANさんは『SOLIPSISM』、WILYWNKAさんは『PAUSE』とソロ作品をリリースされて、それぞれのアルバムで変態紳士クラブ名義やフィーチャリング楽曲を制作されました。ただ、外部での変態紳士クラブとしての客演などはなかったですし、今回の『HERO』にも客演を迎えた作品はない。その意味では、変態紳士クラブとしてドメスティックな方向性を感じるのですが、これは意図的なものですか?

WILYWNKA:いや、別に客演をやらんというわけではなくて。

VIGORMAN:うん、かたくなに断ってるわけでもなくて。

GeG:ひとまず今はっていう感じですね。

VIGORMAN:ただ、この3人でどこまでいけるのかを試してる部分はありますね。自分たちのやりたいことを、今はこの3人の形で押し出してみようと。

―実際、楽曲はYouTubeでも高い再生数を誇っています。

VIGORMAN:嬉しいですね。でも、前作EPの曲を楽しんでくれるのは嬉しいんだけど、正直2年半前の曲なんで、新曲ではないし、自分たちにとっても「前の曲」なんですよ。だから早く『HERO』をリリースして、それを聴いてほしい。2年半で何も変わってない奴はいないと思うし、自分たちとしても変わっているっていう自覚があるんで。

WILYWNKA:そうそう。やっぱり成長を見せたいっていう部分が大きかったですね。

WILYWNKA『PAUSE』を聴く(Apple Musicはこちら

VIGORMAN『SOLIPSISM』を聴く(Apple Musicはこちら

GeG『Mellow Mellow~GeG's PLAYLIST~』を聴く(Apple Musicはこちら

変態紳士クラブでは、ソロの時より素の自分たちが出てるのかもしれないです。(GeG)

―では『HERO』の制作に入ったキッカケは?

VIGORMAN:2020年に変態紳士を再始動させるっていうイメージはみんな持ってたんで、去年から大雑把な計画は立てていて。それぞれソロのリリースによって土台も固まったから、「そこからの変態紳士クラブ」を形にしたかった。だから、2020年は変態紳士を活動の中心にしようと思ってるし、そのために作品は必要やなって。それに向けて去年から曲は作り始めてましたね。

―作品の構成はどのように?

WILYWNKA:みんなで集まって、そこでの雑談が曲作りのキッカケになっていった部分は大きいですね。「最近こうやった」とか、そういう話がテーマ作りの入り口になっていって。友達の関係の上で曲ができていくのは最初からずっと変わってない。

VIGORMAN:制作に関係ない日でも一緒に飯食いに行ったり飲んでたりするし、そこで話した内容が曲になりそうやったら、「じゃあ次のレコーディングで形にしようか」みたいな。そうなると、真夏に“DOWN”みたいな内容は書けないし、その意味でも、日常と繋がってるって部分はあると思いますね。自分たちが悲しい時は悲しい曲を書いて、楽しい時は楽しい曲を書くというか。

VIGORMAN
変態紳士クラブ“DAWN”MV

―それが変態紳士クラブの方法論という感じですか?

WILYWNKA:俺らはそうだと思うっすね。

VIGORMAN:落ち込んでる時にパーティーの曲を書けっていわれるより、「昨日はめっちゃ遊んだわー」って時にパーティーの曲を書いた方が絶対いいものができると思うし。だからEPラストの“YOKAZE”はちょっとダウナーやと思うんですけど、それはWILYWNKAがホンマに落ち込んだ時に書いた曲だからで(笑)。

WILYWNKA:完全な二日酔いで酒鬱に入っちゃって、「この世の終わりや……俺なんてクズはもう……」みたいな、自暴自棄モードになっちゃって(笑)。そのモードの時に、GeGのスタジオでトラックを聴いたら浮かんできたのがこのヴァースでしたね。

WILYWNKA

―<恥だらけこの人生>っていう。

WILYWNKA:そうそう(笑)。

VIGORMAN:俺も酒でバッド入ってるWILYWNKAの姿を見ながらフックを書いて(笑)。でも、それが等身大やと思うんですよね。3ヴァース目は別日に作ったんで、ちょっと元気になってるっていうのも等身大だと思う(笑)。変態紳士では、ネガティブ入りだったとしても、着地する時はポジティブにするようにしてるんですよね。ネガティブ入りでネガティブ終わりの曲はーー。

WILYWNKA:聴きたないなっていう人も多いと思う。もちろん、そういう曲のよさもあると思うけど、自分たちはその方向じゃないかなと。

VIGORMAN:音楽を聴いて、落ち続けたくないっていうのは、3人が共通して思うところかも知れない。

―際どさやハードさはありつつも、ネガティブでは終わらないというのが、変態紳士クラブの楽曲から感じる人懐っこさやキャッチーさに繋がっているのかなとも感じました。

GeG:3人ともソロではそれぞれの世界観を追求して、いっぱいカッコつけてるんで、変態紳士クラブの時は、もっと素の自分たちが出てるのかもしれないですね。

VIGORMAN:友達の関係から始まってるからこそね。なんで、自由に、自然がいい。ジャンルレスのユニットやと思いますし。俺とWILYWNKAの歌詞に関しても、揃わない部分があっても、それはそれでいいのかなって。その違いも色づけになると思うし。

―とはいえ、リリックに対してのダメ出しなどはグループ内であるんですか?

VIGORMAN:それはみんなでやってますね。GeGにまるっとサビを書き直させられた曲もあるし(笑)。

GeG:“HERO”は何回直させたかわからん(笑)。

VIGORMAN:フックだけでも4つ5つ作ってるんちゃうかな。

GeG:それは「いい悪い」じゃなくて、VIGORMANならもっと別のパターンも出るやろうな、っていう勘があったから。

GeG

―ある意味、信頼ともいえますよね。

VIGORMAN:まあ、基本的に俺はなにをいわれてもそのリリックやヴァースに自信があれば変えないタイプなんだけど、GeGにいわれたら変えますね……いや、変えるというか、他の方法も考えてみようって思う。俺もWILYWNKAも、GeGの意見は素直に受け入れる部分は強いと思う。

WILYWNKA:自分だけでやってると、何が正解かわからんくなる時もあるんで、GeGからの意見をもらって「こういう方向性もあるか」って考えを直すというか。もちろん「変えて」っていわれてもすぐには受け入れられないし、15秒は悩むんだけど、ちょっと考えたら「あ! それか!」っていう発見に繋がることも多くて。

―その意味でも、GeGさんはトラックメーカーである以上に、プロデューサーということですね。

GeG:そう思ってますね。自分の隣でトラック作ってくれる奴がおんのやったら、それでもいいなと思ってるぐらいで。

WILYWNKA:はははは。じゃあ今回のトラックはどうでしたか、GeGさん。

GeG:やりたいことがやれるようになったという手応えはありますね。プロデューサーとしては僕が1人でやってるんですけど、作曲には井上惇志(showmore)に参加してもらったりすることで、今までできへんかったことも可能になった部分が多い。クオリティーは格段に上がってると思います。

変態紳士クラブ『HERO』を聴く(Apple Musicはこちら

変態紳士クラブはジャンルレスだし、ジャンルやカテゴリーを「狙った」音楽ではない。(GeG)

―頂いた音源データや、僕のオーディオ再生の環境にもよると思うんですが、音像的には低音域よりも、中高音域にフォーカスした、いわば「ポップス」の音像に近くなった印象が強いんですが。そのあたり、ご自身ではどう感じられてますか。

GeG:そうですね。いま自分が好きなところをやっただけっていうか。ただ、ちゃんとしたセッティングで聴いてもらえれば、実は30ヘルツぐらいの音が随分出てて。ウーハーちゃんと効かせたら、割れるぐらいベースは出てると思いますね。

VIGORMAN:GeGは音に対してエキスパートやと思うし、俺らにはわからないとこをわかってるんで、音に関しては全幅の信頼をおいてますね。

WILYWNKA:“HERO”みたいに生音のストリングスが入ったトラックに乗っかるっていうのは、自分のソロ名義ではまあないことだと思うんですよ。

VIGORMAN:そうやな。そういうトラックが作れて、それを演奏できるミュージシャンがいて、それに乗れるっていうのは、GeGのお陰やと思うし、リアルな意味で1人じゃ作れん作品やったと思いますね。

2020年2月2日に新木場Studio Coastで開催された『変態紳士舞踏会~2222~』の様子

―特に“HERO”はポップな聴感を受けました。

GeG:“HERO”はストリングスにサックスも足してて、そこに生ドラムと打ち込み入ってたりとか、ホンマに今できることを集結させたっていう感触ですね。

WILYWNKA:豪華版や。

GeG:うん、サンプリングでは絶対出せない質感かなと思いますね。

VIGORMAN:ボーカルを録った時と最終版では、全然別の曲なんちゃうかな、ってぐらいサウンドも変化してて。

GeG:レコーディングの時は音数が少ないんだけど、そこから「あと足し」してくんで。ミックスを30ぐらいまでやって、そこからもう1回ゼロから始めたりもしてる(笑)。

VIGORMAN:3~40回ミックスをやり直すっていう、ストレスで白髪だらけになるような作業もGeGはやってて(笑)。

―それだけの試行錯誤があったのは、サウンドとしての青写真があったからなんでしょうか。全体を通しても『ZIP ROCK STAR』よりも、歌にしろサウンドの質感にしろポップネスが強くなっていると感じました。

GeG:まあ、俺の独断でそうなった部分も強くて。変態紳士クラブは、ジャンルとしても「J-POP」としてリリースしてるんですよ。変態紳士クラブのやってることは、ヒップホップやレゲエだとは思ってないし、カテゴリーはJ-POPとしてリリースしていても、J-POPだとも実は思ってない。ジャンルレスだし、ジャンルやカテゴリーを「狙った」音楽ではない。ジャンル分けはどうでもいいんで、だったら一番競争率が高いジャンルに設定しようと思って。だから、J-POPっていうカテゴリーを選んだのは俺らなんです。YouTubeのコメントで「ジャンルがJ-POPになってた、トイズファクトリー死ね」みたいなことを書かれてたけど、それは誤解(笑)。

『変態紳士舞踏会~2222~』の様子

―つまり、ジャンルとしての括りはどうでもよくて、自分たちの思ういいリリック、いいメロディー、いいサウンドだけで勝てたら気持ちいいという理由で、「J-POP」カテゴリーに飛び込んだと。

VIGORMAN:そうそう。いちばん競争率が高いランキングで、1位とったら気持ちいいじゃないですか。それをやってみようというのはありましたね。より分母の大きい中で戦ってみようと。しかも逆にジャンルに合わせない、合わせに行ってない作品で1位が取れたら痛快ですよね。

確かに、ヒップホップやレゲエでリリースすれば、そのジャンルの中で1位を取れる可能性はJ-POPでリリースするよりも高くはなると思う。でも、そういう考え方は変態紳士クラブはちょっとちゃうなって。

GeG:ジャンル分けが大事なんやったら、むしろ1曲ずつ選ばせて欲しいよな。

―それぐらい『HERO』はバラエティーに富んだ作品になってますね。

VIGORMAN:その中で“No Reason”みたいな特殊なカラーの曲も打ち出したいんですよね。あの曲はミュージシャン界隈では一番評判がいいし、そういう曲になってると思う。

GeG:“HERO”だけを聴いたら、確かにJ-POPに寄ったと思われるかも知れないけど、ブレてるわけじゃないぞっていう部分は“No Reason”で形にしようと。ジャンルレスに色んな音楽が作れるけど、“No Reason”みたいなエグッた格好よさを忘れたつもりはないし、この曲がなかったら、逆にポップな曲は作れなかったかも知れない。

―振り幅があるからこそ、どの方向にも振り切れるというか。“DOWN”のリリックには強くセンチメンタルな部分が出ているし、それもポップス的な感触を受けました。

WILYWNKA:まあ、寒くなったらセンチメンタルになるんで。都会で冬に1人で歩いてると、「なんやねん、このイルミネーション」「しょーもない、あのカップル」とか、いろんな気持ちになりますよね(笑)。

―そういう場面が起点だったんですか(笑)。

VIGORMAN:だから“DOWN”を作ってた時は、テンションがエモーショナルだったかもしれない(笑)。だからね、曲のテーマについてはいつもそれぐらいの理由なんで、うまく答えられないんですよね。

WILYWNKA:(ポップさを)狙ってるんですかとかいわれるんですけど、まったく狙ってない(笑)。

VIGORMAN:そもそも自分自身ジャンルで音楽を聴かないタイプやから、ジャンル分けが重要だと思ってない。それこそテレビで流れるようなポップスと呼ばれる曲の中にもかっこいい曲はあるし、再生回数500回でもクソやばいアーティストはいる。かと言って、日本人のほとんどが知ってるようなアーティストよりアングラで誰も知らないアーティストの方がかっこいい事もあるしみたいな。そんな感じっすね。

『変態紳士舞踏会~2222~』の会場外の様子

自らをJ-POPってカテゴライズするのは、自分たちの根本にあるジャンルに対するマナーだと思う。(WILYWNKA)

―今となっては、メインストリーム、アンダーグラウンドの線引き自体が前時代的だし、無効化されていますよね。逆にいえば、自分たちの立脚点が明確な音楽こそが自由で説得力のあるポップミュージックになっていくというか。

GeG:立脚点という話でもっといえば、僕はヒップホップというジャンルを選んでるのにヒップホップを感じない音楽や、レゲエのジャンルっていうのにどう聴いてもJ-POPみたいな音楽が嫌いなんですよ。だから、ジャンルで音楽を聴くのはもうやめようっていうメッセージでもありますね。いいものはいい、悪いものは悪いでしかないというか。ジャンルレスといっても、ただ何をやってもいいのとは違って。

GeG / 『変態紳士舞踏会~2222~』の様子

矢島(CINRA.NET編集部):今までソロとして活動してきた場所や、影響を受けた音楽へのプライド。そしてそのプライドを持ち寄って、変態紳士クラブという遊び場で広げることがこのユニットの活動の意味であり、結果としてジャンルの越境に繋がっていくということですよね。個々の立脚点は一切ブレないけど、お互いを混ぜ合うことが重要になってくる時代性と自分たちの矜持を直結させると、ミクスチャーであることこそが音楽表現のど真ん中であるという意味で「J-POP」になったのかなと感じるんですが。

WILYWNKA:そう、それが俺らのいいたかったことです(笑)。だから、変態紳士クラブをJ-POPってカテゴライズするのは、俺らそれぞれの根本にあるジャンルに対するマナーだと思うし。

VIGORMAN:自分の中心になっているジャンルに対する敬意は強いし、その上で、変態紳士クラブは「チャレンジ」だと思うから。だからこそ変態紳士クラブはJ-POPでいいんですよね。

WILYWNKA:僕らの出身の音楽は、いまだにJ-POPと呼ばれる音楽に比べたら少数派だと思うんですね。僕らがたまたま好きもんで、多くの人とは別の方向に行ってしまったという部分もあると思う。でも、僕らが青春時代に格好いいと思った音楽は絶対に格好いいもんや、っていう矜持が自分の中にあるから。俺はずっとラッパーとしてラップするし、VIGORMANはDEEJAYとして歌ってる。GeGはバンドマン、サウンドクリエイターとしていい音を作ってる。

そういったコアの部分は自分たちのソロでやって、変態紳士クラブに関しては、ヒップホップのいいとこ、レゲエのいいとこ、GeGのサウンドプロダクションのいいとこを持ち寄って、いいとこ取りで作りたいんですよね。だから、ソロではできないことをやってると思うし、それが実際にできてラッキーなクルーやなと。同時に、変態紳士クラブを通して、自分たちのコアな部分もちゃんと気づいてもらえれば、なお嬉しいですね。

矢島(CINRA.NET編集部):その意味で、WILYWNKAさんにとってのヒップホップと、VIGORMANさんにとってのレゲエは、どういう部分で自分の根幹が繋がっている音楽だと思いますか。

WILYWNKA:うーん……どうしようもなくてもなんとかなる、ちゃらんぽらんでもなんとかなる……それがヒップホップですね。好きで頑張ってりゃなんとかなるっていうのが、僕がヒップホップが好きな部分です。

VIGORMAN:僕にとってのレゲエは……いいたいこといってる方が格好いい、ということですね。僕はダンスホールのレゲエが好きなんですけど、ジャマイカのダンスホールは、訳したらすごく暴力的だったり女性蔑視が強かったりする部分があって。でもそれは自分にとっては等身大ではないし、等身大の音楽をやりたいからこそ、ジャマイカのダンスホールをそのままやるのは、自分にとっては等身大から離れてしまう。だから、そういう音楽を自分なりに再解釈して、自分のいいたいことをいうための歌にする。そのままやっても等身大ではないけど、でも、等身大の表現ができる音楽だと思ってますね。

VIGORMAN / 『変態紳士舞踏会~2222~』の様子

―今のお話の色がそのまま出ているというか、前作と比べると、WILYWNKAさんとVIGORMANさんの役割がより明確になった印象があります。VIGORMANさんはメロディアスな部分を丁寧に担保しつつ、WILYWNKAさんはラップの部分をしっかりと低温で固めるというか。

WILYWNKA:スタイルの違いと役割の違いは、たしかに明確になりましたね。その部分は話し合わずともできるようになってると思います。

VIGORMAN:ジャンルレスユニットとはいえ、自分たちのスタイルは変わらないというか。俺はラッパーじゃないんで、俺の中でブレるっていうのは、つまりラップすることなんですよ。自分たちの可能性を狭めるつもりはないけど、それはWILYWNKAも同じやと思いますね。それに、ラップのプロが相方としているんで、ラップする必要もない。

WILYWNKA:それは本当にそう。歌わせたらVIGORMANに敵う人間はいないし、だから自分が変態紳士クラブで歌う必要はないなって。

VIGORMAN:ま、好き勝手やってもGeGがまとめてくれるんで。それもあって変態は気が楽です(笑)。

GeG:俺は全く気が楽じゃないけどな(笑)。

WILYWNKA:あざーす!(笑)

―そして最後に。作品全体のタイトルにも『HERO』と名づけた理由は?

GeG:こんな時代にこそ……みたいな格好いいこともいいたいんですけど、そんな気持ちはなかったですね(笑)。

VIGORMAN:俺たち自身も、何のヒーローかってことはいってなくて。それよりも、聴いて救われたり感動してくれたりした人が、俺たちがなんのヒーローなのか決めてくれればなって。

WILYWNKA:できればいろんな人のヒーローになりたいなですね。でも、ウルトラマン系の「救いに行く」っていう感じではないかな。

VIGORMAN:「俺らが助けてやる!」とかは思ってないしね。

WILYWNKA:必要だと思ってくれれば嬉しいけど。ヒーローが必要な時代だと思う一方、自分が信じるものは自分で決めるしかないから。

WILYWNKA / 『変態紳士舞踏会~2222~』の様子

―社会情勢的にも、不安な時間が続いていて。音楽業界でいっても、ほぼすべてのライブが中止になり、このインタビューもSkypeで行っています。ライブハウスやクラブ、音楽シーン全てが厳しい状況に置かれてると思うんですが、その状況についてはどのように思われていますか?

GeG:俺らにできることは、曲を作るだけですね。

VIGORMAN:正直、それしかないと思いますね。この音源を聴いてる間だけでも、辛い気持ちが安らいでくれたら、リリースした意味があるのかなって。でもただそのために作ってるってわけでもないんで、受け取り方は自由ですけど。

WILYWNKA:この世の中がどうなっていくのかは、正直分からないけども、ポジティブに頭を持っていかないと、物事は進まないと思うんですよね。こんな状況でも、色んな情報に惑わされないで、冷静に、ポジティブになっていくしかない。そしてアルコール消毒、マスク、手洗いうがい。

VIGORMAN:俺らのライブもどうなるかはちょっとわからないけど、楽しみは増やしとくで、といっておきます。

―これからも変態紳士クラブはコンスタントに動いていくのでしょうか?

VIGORMAN:行き当たりばったりなところはありますね。ソロアルバムは作ると思うし、その上で変態紳士クラブもあるかもしれないし、いきなりソロに戻るかもしれないし……どうなのかは正直わからないっすね。

GeG:俺は解散したいけどな。解散ライブで泣きたいもん(笑)。

WILYWNKA:いうてますわ。

VIGORMAN:俺とWILYWNKAだけで引き継いだり(笑)。そういう感じですね。天気みたいな感じで、変態紳士クラブはどうなるかわからないし、そこも楽しみにして下さい。

『変態紳士舞踏会』の様子
リリース情報
変態紳士クラブ
『HERO』

2020年4月30日(木)配信

1. Do It
2. HERO
3. No Reason
4. DOWN
5. YOKAZE

プロフィール
変態紳士クラブ
変態紳士クラブ (へんたいしんしくらぶ)

2017年結成。昨今ヒップホップ、レゲエ両シーンにおいて若手最高峰との呼び名も高いラッパーWILYWNKA(ウィリーウォンカ)と、レゲエ・ディージェイVIGORMAN(ヴィガーマン)、共に1997年生まれの2人が、プロデューサー / トラックメーカーのGeG(ジージ)を介して結成した3人組ジャンルレスユニット、「変態紳士クラブ」(3人ともに大阪在住)。2017年11月にリリースされた1st EP『ZIP ROCK STAR』に収録された“好きにやる”はMusic Videoが約710万回再生、ストリーミングは約1000万回再生を記録。(全7曲収録の1st EPのストリーミング数は脅威の2500万回再生オーバーを記録)2019年春に初ツアーとなる東名阪クアトロツアー『変態紳士舞踏会TOUR 2019』を成功させる。最新作は、2020年4月30日にリリースする2ndEP『HERO』。

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