Puzzle Projectとは?YOASOBIの仕掛け人と3人の10代が語る

次の時代を担うクリエイターが続々と頭角を現している。

こう書くと月並みな言い方になってしまうのだが、本当に、心底そう思う。YouTubeやニコニコ動画が生まれてから十数年。音楽やイラストや歌やダンスなど様々な作品やパフォーマンスが互いに派生しつつ連鎖する「N次創作」文化がインターネットに根付いた土壌で育った世代の新しい才能が、いよいよ本格的に登場しつつある。

そう強く実感する機会になったのが、今回の取材だった。

話を聞いたのは、「monogatary.com」を運営しYOASOBIの仕掛け人となったソニー・ミュージックエンタテインメントの屋代陽平。そして皆川溺、晴いちばん、ど~ぱみんという3名の10代のボカロPだ。屋代は、インターネット発の次世代アーティストを発掘・支援する場としてソニーミュージックが立ち上げた新プロジェクト『Puzzle Project』のプロジェクトメンバーの一人。そして3人は、多数の応募の中から選ばれたクリエイターの代表である。

3人がどのように音楽と出会い、創作活動を進めてきたか。そして『Puzzle Project』は彼らと共に何を目指すのか。話を聞いた。

YOASOBIの躍進を追い風に、ネット発のクリエイターたちと手を取り合う『Puzzle Project』が動き始めている

―まずは『Puzzle Project』がどういうものなのか、屋代さんから説明していただけますでしょうか。

屋代:ソニー・ミュージックグループの中で新人開発育成を担う部門であるSD・REDと、僕がいる「monogatary.com」というプラットフォームと、あとは配信サービスの「The Orchard Japan」がタッグを組んで、それぞれのミッションの中でインターネットを主戦場に活動されているクリエイターとの出会いの場を作るというのが、プロジェクトの大きな趣旨になっています。

そういった側面もありつつも、クリエイター同士の出会いを生み出したり、その作品世界を国内外問わず広げていくための場を提供するという意味合いで立ち上げました。

―従来のオーディションとは考え方が違うんでしょうか?

屋代:そうですね。特定の目的やゴールを設けてそこに見合う方々を選出するものがオーディションだとすると、そういったものとは性質が異なっています。なので、あえて「オーディション」とは銘打っていないんです。興味を示してくださるクリエイターと、それぞれに見合った形でのアウトプットを目指していく。オーディションというよりは「出会いのきっかけ」というニュアンスが強いと思います。

―募集は2020年の11月から12月でしたが、どれくらい反響はありましたか?

屋代:予想以上に多くの反響をいただきました。LINEでエントリーするという方法も相まって、クリエイターの方には気軽に受け取っていただけたのかなと思います。すごく貪欲に新たな出会いを求めてくださるクリエイターの方に集まっていただけた実感はあります。

屋代陽平(やしろ ようへい)
2012年、ソニーミュージックグループ入社。2017年に小説投稿サイト「monogatary.com」を立ち上げ、2019年、同サイトの企画の一貫でYOASOBIのプロジェクトを発足。新人開発育成と、原作発掘プラットフォーム運営の両視点でPuzzle Projectに携わる。

大人の手を借りず音楽投稿をしてきた10代のクリエイター3人は、何を求めて『Puzzle Project』に応募したのか?

―皆川溺さん、晴いちばんさん、ど~ぱみんさん、それぞれの『Puzzle Project』の第一印象は?

皆川:僕はソニーの方と少し関わりがあって、そこから『Puzzle Project』を紹介されて、「面白そうな企画だな」と思って応募させていただきました。オーディションという枠に括られない、幅の広いステップアップのやり方があるというので、そこで自分もやれる可能性があるんじゃないかなと思って応募しました。

皆川溺“ニヒリズム feat.flower,結月ゆかり”を聴く

晴いちばん:友達にギターを弾く子がいるんですけど、その子が「これやってみたらどう?」って連絡をくれて、いいなと思って応募しました。サイトを拝見して、クリエイティブサポートとか世界配信とかマッチングとか、今まで自分ひとりじゃできなかったいろんなことをサポートしてくださることが魅力的で。それが第一印象です。

晴いちばん“魔法の星がくれたもの feat.初音ミク”を聴く

ど~ぱみん:僕はTwitterのDMでお誘いをいただいたんですけれど、そもそも、そういったプロジェクトとか企画に参加したことがなくて。誰かと一緒に同人活動やサークル活動をすることもあまりなかったので、新鮮だし、やってみたいなという感じでした。

ど~ぱみん“JASH feat.flower”を聴く

欲したのは、前向きで貪欲な熱量。むしろ「利用されること」を望んだ、クリエイターファーストな運営精神

―屋代さんとしては、『Puzzle Project』でどういう才能を求めていたのですか?

屋代:一言ではまとめづらいのですが、強いて言えばマインドの部分を重視しました。具体的には、僕らのことを「利用してくださりそう」な方々ですね。「何をしてくれるんですか?」というよりは「これをしてください」とか「これがあったらもっといろんな人に曲を聴いてもらえます」という、前向きで貪欲な熱量を持ったみなさんとご一緒したいなと思ってました。

―屋代さんとしては、皆川さん、晴いちばんさん、ど~ぱみんさん、それぞれにどんな魅力を感じましたか?

屋代:ど~ぱみんさんと皆川さんは今日が初めましてなんですけど、まず、晴いちばんさんは、この若さでびっくりするような視座の高さがあるんですね。作っているものの完成度の高さもそうですけど、「こうなりたい」とか「自分は今こういうことができていて、これからアーティスト活動にこういうことが必要になってくる」ということの言語化能力に感銘を受けて、すぐにでもご一緒したいという話をした記憶があります。

ど~ぱみんさんは、うちのスタッフから「すごい人がいるよ」とリンクが送られてきて、「これはすごいね」という話をして、ぜひ『Puzzle Project』にお声がけしてみようという話をしました。今発表されている曲を見ても、一貫したスタイルがありつつバリエーションがすごく広く、チャレンジングなことをされている。そういう姿勢を持った方とご一緒することによって、その幅がもっと広がる可能性が高いということを思いました。

皆川さんは個人的に曲がシンプルに好きっていうのもありつつ、とりわけ言葉のセンスにグッときているところがあります。「monogatary.com」でもいろんなチャレンジをご一緒したいなと思っています。

崎山蒼志や長谷川白紙らに憧れる、ロック好きのボカロP・皆川溺

―皆川さんは、音楽との出会いはどういうものでしたか?

皆川:楽曲制作を始めたのは2019年の6月あたりなんですけど、それ以前から人並みにいろんな曲を聴いてきたし、ライブハウスやフェスに足を運ぶこともあって。特別に誰かが好きというのはなかったんですけれど、生活の中にずっと音楽があった感じですね。ボカロへの関心もあったので、いろんな関心の結果として作りたいと思った感じです。

皆川溺“ペシミズム feat.結月ゆかり”を聴く

―好きなアーティストや聴いてきた人を挙げるならどうでしょう?

皆川:米津玄師さん、崎山蒼志さん、長谷川白紙さん、キタニタツヤさん、ヒトリエのwowakaさん、あとは、ぼくのりりっくのぼうよみさん、椎名林檎さん、向井秀徳さんがすごく好きです。

―曲を作って発表する手段としてボカロを選んだのは?

皆川:ボカロは世代的にも身近な存在だし、周りの友達とかもボカロの音楽を聴いているので。自分は目立ちたがり屋な部分があったので、ボカロなら自分の好きなこと、自分の得意なことを、一番いい形でやれるんじゃないかと思って選びました。

皆川溺(みながわ おぼれ)
2006年生まれのボカロP。ボーカロイド / ネット発のアーティストを聴いていたことから、2019年の6月より制作開始。活動当初は「23次元P」という名義で活動していたが、2020年7月に現在の名義に改名し、本格的に活動を始める。映像編集やアートワークも自身で制作するなどマルチに活動している。

『beatmania』を音楽の原体験に、EDMと同人音楽を並列に愛するボカロP・ど~ぱみん

―ど~ぱみんさんの音楽との出会いは?

ど~ぱみん:音楽ゲームからですかね。親から勧められて昔のゲームが好きだったんですけど、『beatmania』というDJのシミュレーションみたいな音楽ゲームで遊んでいたんです。自分が遊んでいたのは初代プレステの古いやつで。遊ぶたびに、そのゲームで選んだ曲のジャンルが「HIP HOP」とか「JAZZ」みたいに表示されるんです。

そういうもので遊んでいるうちに「こういう感じの雰囲気で、こういう音色を使って、こういう展開の曲はこのジャンルなんだな」って知ることができたんですよね。曲を作るきっかけになったのも、そういった音楽ゲームに何曲も提供している「HARDCORE TANO*C(読み:ハードコアタノシー)」というレーベルがYouTubeで活動をはじめていて、その曲を聴いているうちに自分も作ってみたいという衝動に駆られてという感じですね。

ど~ぱみん“ハングリーラスベガス feat.初音ミク”を聴く

―ゲーム音楽がルーツになった、と。ボカロで曲を作りはじめたのは、どういうきっかけだったんでしょうか?

ど~ぱみん:これも単純で、音ゲーにボカロ曲が移植されるようなムーブメントが最近あるんです。それを自分も遊んでいたんですけれど、調べてみたら、最近はOsanziさんとか、雄之助さんとか、もともとクラブミュージックを作っていた人がボカロ曲を作るのも珍しくはないらしくて。そういうのを知って「じゃあせっかくだし俺もやるか」みたいな感じでした。

ボカロPを始めたのが去年の3月ぐらいだったんですけれど、その頃ってコロナウイルスが出始めて、大変な感じだったじゃないですか。学校も1か月ぐらい自宅学習で。暇だったんで始めたんですね。

―自分にとっての憧れ、影響を受けた人を挙げるならば、どうでしょう?

ど~ぱみん:グローバルに有名なアーティストだと、アラン・ウォーカーさんとか、アヴィーチーさんとか、ニッキー・ロメロさんとかですね。国内だと、HARDCORE TANO*Cのaranさん、USAOさん、Kobaryoさんです。

―いわゆるEDMのプロデューサーと同人音楽の作家を、共にエレクトロニックな音楽として愛好してきた。

ど~ぱみん:そうですね。

ど~ぱみん
18歳のクリエイター。2019年から音楽制作を開始。主にエレクトロ調のトラックをメインに制作している。独自のスタイルの音使いを特徴とし、音楽ゲームからボーカロイドまで、多種多様のジャンルの楽曲制作に努めている。

今回最年少にしてアイドルにも楽曲提供を行う、正統派ポップソングを武器にしたボカロP・晴いちばん

―晴いちばんさんの音楽との出会いはどんな感じでした?

晴いちばん:自分は3歳でピアノ教室に通うようになって、そこから音楽に触れ始めたのが大きいと思っています。ピアノは12歳まで続けたんですけど、一旦やめることになって。でも、音楽は好きなので、何か音楽で面白いことをできないかなって思っていたときに、『太鼓の達人』にハマって。そこにボカロ曲が収録されていることもあって、そこでボカロに興味を持って。

いろんな曲を聴いていくうちに、いわゆるアマチュアの方も曲を作れると知って、それなら自分も作る側に回ってみたいなと思って、ボカロ曲を作り始めることになりました。

晴いちばん“風鈴星 feat.初音ミク”を聴く

―好きな人、憧れる人には、たとえばどんな方がいますか?

晴いちばん:最近はアニソンをよく聴いています。やっぱりプロの方が作る曲ばかりなので、すごく勉強になるところがあります。有名なところだと、田中秀和さんと千葉"naotyu-"直樹さん、あとはいろんなボカロPの方の曲を幅広く聴いています。特に田中秀和さんはいろんなジャンルを作られる方で、音楽理論的にもすごいことをしていらっしゃっていて、影響を受けていると思います。あとはCDも買うくらい好きなボカロPさんは、はるまきごはんさんです。

―自分で音楽を作ることに関しては、どんなきっかけがありましたか?

晴いちばん:もともとピアノを弾いていて多少は音楽に関する知識があったのと、自分で好きな曲を耳コピしてピアノで弾くのが好きだったので、そこからの曲の構成とかを学ぶことは無意識のうちにやってました。なので、曲を作るにあたっても、最初は耳コピで勉強して、多少知識をつけてからボカロ曲を作り始めました。

晴いちばん(はるいちばん)
14歳のボカロP、作曲・編曲家。ポップなメロディを中心とし、様々なジャンルを生かしたアレンジを得意とする。幼少期から好きな曲をピアノで弾くことが好きで、小6でパソコンを用いた楽曲制作、中1でオリジナル曲の投稿を始める。現在ではオリジナル曲の投稿だけでなく、アイドルへの楽曲提供などの活動も行っている。

イラストや動画なしでは語れないボカロ文化。今の10代の音楽家はどのように活動の基盤を作っていくのか?

―みなさんがニコ動やYouTubeに投稿されている楽曲って、単に曲だけではなく、イラストと歌詞があってリリックビデオとして成立している動画ですよね。このあたりの制作はどうやって進めているんでしょうか。

晴いちばん:初投稿の曲は、他の絵師さんや動画師さんとつながりがなかったので、自分で動画を作りました。でも、やっぱり動画のクオリティは高いほうがいいなって思っていたところに、同じ年代のボカロPが集まっているTwitterのDMグループを見つけて入れていただいたんです。

その中にいらっしゃった、絵も動画も曲も作る「小宮かふぃー」さんというボカロPさんと仲良くなって動画をお願いしたら快く受けてくださって。完成した動画を見て、曲もイラストも動画もできるし、しかもクオリティが高いのに驚いて、2作目以降はずっと小宮かふぃーさんにお願いしています。自分はイラストを描けないので、曲を送っただけであとは完全に任せっきりになってしまうんですけど、自分のイメージに合ったイラストと動画を作ってくれるので、本当に頼りっぱなしです。

晴いちばん“ユースボイス feat.音街ウナ”を聴く

―最初にDMで連絡をとって、曲を出してから、徐々に世代や感性が近いクリエイター同士の輪が広がっている感じがあるんですね。

晴いちばん:そうですね。今回ご一緒させていただいている溺さんとど~ぱみんさんとも去年くらいから関わりがあって。同じ世代のボカロPさんは仲がよいと思います。

―皆川さんはどんなふうに動画を作っていますか?

皆川:最初に投稿した曲は恥ずかしくて消しちゃったんですけど、そのときは関わりもなかったので自分でイラストもイチからやっていて。2作目から人に頼んだ感じですね。

はじめたての頃はイラストレーターさんに絵を貸していただいて自分で動画をつける形でやっていたんですけど、そこからイラストを依頼して描き下ろしていただくようになりました。自分の場合は、自分でソフトを使って動画を編集することがほとんどです。イラストと曲に合った動画を作るのは楽しいですね。

―晴いちばんさんと同じように、皆川さんも曲を作っているうちにイラストレーターさんとのつながりができてきたという感じですか?

皆川:そうですね。やっぱ、みんな最初は誰とも関わりがないじゃないですか。そこから、だんだんこういう界隈で活動をやっていくにつれて、憧れの絵師さんとか動画師さんができていくと思うんです。活動の規模が大きくなってくると、描いてほしかった絵師の方々に依頼できるようになる。その喜びもこの界隈の魅力だなって思います。最近の曲で言うと、鮫島ぬりえさんがお願いしたかった絵師さんですね。

皆川溺“蘭亂ごっこ feat.GUMI,flower,結月ゆかり”を聴く

―動画はどんなソフトを使って、どんなふうに作っているんでしょう?

皆川:自分はAdobeのPremiere ProとかAfter Effectsという動画編集ソフトで編集しています。技術的にすごく凝ったものはまだ作れないんですけれど、シンプルかつカッコよく、オシャレにっていうのを意識しています。

―ど~ぱみんさんはいかがでしょうか。

ど~ぱみん:僕も結構溺くんと通じるところがありまして。“Liberty”から“メフィスト”までは一貫して爆発電波さんの絵をお借りする形で制作させていただいているんですけど。

僕は、どっちかというと、爆発電波さんの描いた絵をテーマにして曲を作ることが多かったんです。「あなたの描いた絵をイメージして勝手に曲を作っちゃいました」みたいな。イントロだけ作成してこの絵を使っていいか許可をいただくという感じで。ボカロPを始める前から関係のあった方だったからっていうのもあるのかもしれませんけど、快く承諾していただいて、それで作っていった感じです。

―動画に関してはどうでしょうか。

ど~ぱみん:動画も皆川くんと同じで、自分でやってますね。僕の作る曲って、だいたいBPMが120~130くらいなんですけれど、文字のベタ打ちでカッコいい感じのフォントをキックと同じリズムに並べたり、エフェクトかけたりっていうのが、曲調に一番合っていて、編集技術的にも楽なんです。そういう視覚的には情報量が少なくてわかりやすい感じの動画編集は、自分でやっちゃったほうが早いと思いました。

ど~ぱみん“蚕の冠 feat.flower”を聴く 

10代の音楽家たちが描く先々のビジョン。その欲求に寄り添い、手助けをするのが『Puzzle Project』の役目

―この先、『Puzzle Project』を使ってやってみたいことについてはどうでしょう? まず、ど~ぱみんさんから訊いていいですか?

ど~ぱみん:将来のことは漠然としていて、あんまり見据えてはいないんですけど、まずはコロナウイルスの蔓延がちょっとでも収まったら、ハコを借りて今まで作った曲をDJ感覚でかけるイベントをやってみたいですね。

やっぱりDJって、自分の曲をみんながどういうふうに聴いてくれるかがダイレクトに伝わるし、どういうところで盛り上がってくれるのかを知りたくて。あとは、自分の作る曲はエレクトロチューンが多いんで、配信サイトを用いて自分の曲が世界のどこらへんまで通用するのかを挑戦してみたい気持ちがあります。

―皆川さんはどうでしょうか。

皆川:自分はボカロがすごく好きなので、ボカロを中心に続けつつ、他にも普通じゃやれないことをチャレンジしていきたいなとは思っています。音楽という媒体にとらわれない活動や、文章や映像の部分でも周りとは違うことをやっていきたいですね。そういう、見たことがないような活動をやっていきたいです。

自分はあんまり本を読む人間ではないんですけど、今はアナログ、デジタル問わず、いろんな形での文章の出し方があると思うんです。インターネットミームっていうか、いわゆるネタみたいな文化も好きだし、そういうのを交えたコミカルな文章を作っていきたいとも考えています。

―晴いちばんさんはどうでしょう?

晴いちばん:最近思うのは、ひとりで曲を作るのもいいんですけど、誰かにギターを弾いてもらったり、いろんな人と関わりながら1曲を作り上げていくのが楽しいということで。ミックスやマスタリングを誰かにお願いして自分の音楽をブラッシュアップしていくこともやっていきたいです。いろんなアーティストさんに楽曲提供もやっていきたいですし、そういう曲を作りつつ自分のボカロ曲も投稿していくというのが、今の自分の理想です。

―屋代さんはどうでしょう? 『Puzzle Project』として今後はどんなことをやっていこうと考えていますか?

屋代:それぞれのクリエイターごとに個別に担当者が向き合って、そのクリエイターが表現したい世界を拡張していくことがまず基本になります。そこに『Puzzle Project』としての一種のラベルみたいなものを付けさせていただきながら広げていく作業もやっていきたいと思います。

それだけでなく、この3人はそれぞれ個別にコンタクトを取っていたり、そもそもネットシーン自体が横のつながりがあるカルチャーだと思うので、個人同士の関係性やコミュニケーション、ネットワークも尊重しながら僕らができる部分をやっていきたいと思っていますね。

―クリエイターに寄り添って、ネット発の音楽シーンを文化として育てていく視点を大事にしている。

屋代:そうですね。あとは、今回の3人もボーカロイドという共通軸はありながらもそれぞれ他にも関心分野があるクリエイターですし、他の『Puzzle Project』の参加者の方も、そもそもボカロ出自じゃない方、ボカロPとはまったく別の活動をされている方もいるので、そういう方とのコラボレーションも『Puzzle Project』としてチャレンジできる新しいクリエイションのひとつかと思っています。今のネットシーンのイメージを前向きに壊していくことも、『Puzzle Project』発信でできるといいなと思います。

プロジェクト情報
『Puzzle Project』

『Puzzle Project』は、次世代アーティストの音楽性・楽曲・世界観とソニーミュージックグループが持つソリューションを掛け合わせ、作品を世界に広げていくプロジェクトです。プロジェクトに参加することになったアーティストには、小説を音楽にするユニットYOASOBIを誕生させた小説投稿サイト「monogatary.com」によるクリエイティブサポートや、世界に45か国以上の拠点があり、2019年より日本でサービスを開始した大手音楽ディストリビューション会社「The Orchard」での世界配信サポート。その他ソニーミュージックグループが持つさまざまなソリューションを活用し、ライブ制作サポートや育成プログラムの実施などを行ないます。

プロフィール
屋代陽平
屋代陽平 (やしろ ようへい)

2012年、ソニーミュージックグループ入社。2017年に小説投稿サイト「monogatary.com」を立ち上げ、2019年、同サイトの企画の一貫でYOASOBIのプロジェクトを発足。新人開発育成と、原作発掘プラットフォーム運営の両視点でPuzzle Projectに携わる。

ど~ぱみん

18歳のクリエイター。2019年から音楽制作を開始。主にエレクトロ調のトラックをメインに制作している。独自のスタイルの音使いを特徴とし、音楽ゲームからボーカロイドまで、多種多様のジャンルの楽曲制作に努めている。

晴いちばん (はるいちばん)

14歳のボカロP、作曲・編曲家。ポップなメロディを中心とし、様々なジャンルを生かしたアレンジを得意とする。幼少期から好きな曲をピアノで弾くことが好きで、小6でパソコンを用いた楽曲制作、中1でオリジナル曲の投稿を始める。現在ではオリジナル曲の投稿だけでなく、アイドルへの楽曲提供などの活動も行っている。

皆川溺 (みながわ おぼれ)

2006年生まれのボカロP。ボーカロイド / ネット発のアーティストを聴いていたことから、2019年の6月より制作開始。活動当初は「23次元P」という名義で活動していたが、2020年7月に現在の名義に改名し、本格的に活動を始める。映像編集やアートワークも自身で制作するなどマルチに活動している。



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