『BANDWARS』実行委員の山田孝之らが若者に語りかける

RTや「いいね」の数もポイント SNS時代のオーディション開催

去る7月14日、吉祥寺のライブハウス「吉祥寺CLUB SEATA」に、8組の若いバンドが集まった。音楽性もメンバー編成もバラバラな彼らの共通項は、この時点で事務所やレーベルに所属していないアマチュアバンドであること。そして、LINE RECORDSが主催するオーディション『BANDWARS』の1stステージと2ndステージを突破し、Final Stageにまで歩を進めたバンドである、ということだ。

この日、行われたのは『BANDWARS』のFinal Stage。「グランプリ」を受賞したバンドには、その栄誉として、LINE RECORDSからのデビューが約束されている。m.c.A・T、コモリタミノル、nao、山田孝之という4人の実行委員と、現地に集まったオーディエンス、そしてLINE LIVEを通して様子を見守る視聴者たちの前で、8組のバンドはそれぞれ2曲(オリジナル曲と課題曲)のパフォーマンスを披露。この記事では、実行委員のコメントを交えながら、Final Stageの模様、さらに、新たなオーディションの在り方としての『BANDWARS』の意義を振り返っていきたい。

『BANDWARS』イベントビジュアル
『BANDWARS』イベントビジュアル

『BANDWARS』のホームページには「僕らのバンドを、僕らで決める、僕らの戦い」という言葉が掲げられている。それ以外にも、「僕らのバンドを探している」「大人には歌えない歌がある」など、『BANDWARS』が掲げる言葉の端々には、新しい世代の価値観の中で、もう1度「バンド」という表現を見つめ直したい――そんな意識が伺える。それは、若い世代を中心に広まったコミュニケーションプラットフォームである「LINE」が協力パートナーとして参加するオーディションならではの観点だろう。

ゆえに、『BANDWARS』は審査方法も特殊だ。1stステージ(SNS審査、LINE LIVE審査)と2ndステージ(作詞、作曲審査)では、LINE LIVEでの視聴数やハート数、さらにTwitterでのリツイート数や「いいね」数が評価基準になるなど、ソーシャルネットワークを駆使した判定も実施。SNSを通じたコミュニケーション能力や拡散力、自己プロデュース能力など、「自分たちの力で、どれだけの人を巻き込めるのか?」というポイントが参加バンドには問われることとなった。

『BANDWARS』イベント終了後の全体写真
『BANDWARS』イベント終了後の全体写真

セミプロ化したアマチュアバンドに必要とされたのは、「柔軟性」

もちろん、そんな『BANDWARS』の「新しさ」は、バンドを判定していく上での難しさや複雑さにも繋がっている。実行委員のひとりであり、これまでSMAPやaiko、嵐、安室奈美恵など、数多くの有名アーティストに楽曲提供してきたコモリタミノルはこう語る。

コモリタ:オーディションというシステムは昔からありますけど、インターネットを通して審査するというのが、自分がこれまで関わってきたものとは違っていて。いまはある程度、力のあるミュージシャンは、自前でネットを通して活動することで、お客さんもつくようになるんですよね。ある意味、「プロ」という領域が曖昧になって、アマチュアでも「セミプロ」化しているバンドも多い。

コモリタミノル
コモリタミノル

コモリタ:今回参加したバンドたちも、右も左もわからない人たちではなく、自分たちのこだわりや美意識は既に持っているバンドがほとんどだった。でも、次のステージに行くには、他の価値観を受け入れながら、変わっていかなければいけないんだけど、その部分に対する免疫があまりないバンドが多い印象を受けました。

「僕らはもうこのやり方でうまくやっているから、これでいいんです」っていう感覚が、ともするとあるんですよね。こちらは「もっとこうした方が、世の中に出るチャンスはあるかもしれないよ」という提示の仕方をしているつもりなんですけど、もしかしたら、それが彼らの純粋な気持ちを踏みにじってしまうことになっているのかもしれない……。そこは、実行委員としては難しいところでしたね。

今回、2ndステージでの作詞審査では、バンドがSNSで投稿した歌詞について、実行委員がアドバイスする形がとられた。SNSを通して自分たちをアピールする力を求めるのと同時に、他者の価値観を受け入れ、変わっていける柔軟性を求めたのが、『BANDWARS』の重要なポイントだったと言えるだろう。

現代におけるSNSでのアピール力の必要性を前提とした上で、「デビューするとはどういうことなのか?」「プロとはなにか?」このオーディションには一貫して、そんな問いかけが秘められていたのかもしれない。Final StageがLINE LIVEやSNSを通した審査ではなく、それぞれの分野におけるプロフェッショナル4人の実行委員の審美眼に委ねられたところも、それを象徴していた。

オーディションで重要視されていた、バンドとしての「総合力」

この日、ステージに登場したのは以下の8組(出演順)。キャッチーなキャラクターとシリアスな楽曲とのギャップで会場を沸かせたUnfitcooder。既に『仮面ライダードライブ』の劇中歌を担当した経験も持つ、ヴィジュアル面もスタイリッシュな4人組Breathing Booost。

Unfitcooder
Unfitcooder

Breathing Booost
Breathing Booost

奇抜な衣装とメイク、さらに演劇性の高いパフォーマンスで笑いも誘った栃木出身の便所の草。端正な楽曲と歌詞の完成度が高く、会場では既に多くのファンからの注目も集めていたab initio。

便所の草
便所の草

ab initio
ab initio

毒気とユーモアが入り混じった世界観で会場の空気を掴んだ大阪出身の4人組、密会と耳鳴り。「姉妹と同級生の3人組」という一風変わった編成と穏やかな音楽性で、そよ風のような独自の空気を会場にもたらしたWORLD WAND WOOD。

密会と耳鳴り
密会と耳鳴り

WORLD WAND WOOD
WORLD WAND WOOD

ブラックミュージックを昇華した、モダンでソウルフルなサウンドと歌唱を響かせたUCURARIP。そして、思いの丈をぶつけるような熱い演奏とMCで観客を惹きつけたHIP BEAN SPROUT。

UCURARIP
UCURARIP

HIP BEAN SPROUT
HIP BEAN SPROUT

8組のそれぞれの演奏を見て、改めて理解したのは、これは「バンド」の戦いなのだということ。ただ「ミュージシャン」や「パフォーマー」としての魅力だけではいけない。かつてI WiSHでデビューし、現在は様々なシンガーソングライターに楽曲提供やプロデュースで関わる実行委員のひとり、naoはこう語る。

nao:僕は普段、シンガーソングライター系を手掛けることが多いんですけど、やっぱりバンドとなると、「全体評価」になるんですよね。シンガーソングライターだったら、その人ひとりを見ていればいいんだけど、バンドの場合はボーカルだけをフォーカスする、ということはできない。

でも、バンドだからこそ出会える新しい才能っていうのもあって。ライブでお客さんと一体となる力、グルーヴ感は、やっぱりバンドならではのものだと思うし、人の五感に刺さっていく力を持っているかどうかは、今回バンドを見ていく上で重要視しました。

nao
nao

実際、個々のバンドの演奏終了後の総評で、実行委員がバンドの総合力やバランス感覚に言及する場面が多かった。同時に、リズム隊とボーカルだけがステージに立ち、ストリングスやギターの音を同期によって補っていたWORLD WAND WOODは、バンドとして評価の難しさに意見がわかれているようでもあった。

アマチュアだからこそ、必要なのはオリジナリティー。

また、もうひとつ評価の重要なポイントとなっていたのは、オリジナリティー。いくらアマチュアだからといっても、いや、アマチュアだからこそ、「どれだけ他とは違った特殊なスタイルをしているのか?」という点は、とても重要な評価ポイントとなっていたようだ。実行委員のひとりであり、DA PUMPなどへの楽曲提供やプロデュースでも知られるm.c.A・Tはこう語る。

m.c.A・T:聴きやすいバンドや優等生的に見えるバンドは自分の中から排除しようと思いました。最初は嫌われるようなバンドでも、「なにかが間違っている」っていうことは、この先、応援してくれる人がついてくる可能性があるっていうことでもあるんですよね。

僕が嫌いなのは、二番煎じ、オリジナリティーがないもの、流行っているものをちょっと取り入れるようなものなんです。だから、いたずらっ子や暴れん坊を応援したくなるんですよね(笑)。もちろん、ただ暴れているだけではなくて、自分の責任において暴れている「芯の通った暴れん坊」ですけどね。僕は、それが「個性」だと思うので。

m.c.A・T
m.c.A・T

さらに、実行委員のひとり、俳優の山田孝之も「オリジナリティー」について次のように語る。

山田:1stステージからバンドを見ていて、多くのバンドはすでに売れている人気のバンドを目指していて、模倣している印象を受けました。もちろん、みんななにかに憧れて始めるので、そこからオリジナリティーを見つけていけばいいと思います。でも、なんだってオリジナリティーが大事ですからね。それはバンドでも俳優でも一緒だと思います。「自分になにができるのか?」を考えて、それをとことん突き詰めていく。それを考えることが、いちばん大事だと思います。

山田孝之
山田孝之

そして、さらに大きなポイントとなっていたのは、やはり「プロとして通用するか?」ということ。その点で、ステージ上からとても印象的な言葉を発したのは、HIP BEAN SPROUTのボーカル、森智仁だった。

彼は覚悟を持って「いつまでもライブハウスで『売れたい』と嘆き続けるバンドではいたくないのだ」と、ファンも観に来ているこのステージで伝えた。その森の姿勢を強く称賛したのが、実行委員の山田孝之だった。

HIP BEAN SPROUTのボーカル、森智仁
HIP BEAN SPROUTのボーカル、森智仁

山田:HIP BEAN SPROUTの森さんがMCで言っていたことには、すごく心を動かされました。プロとしてやるつもりなのであれば、「売れたい」という気持ちがあるのであれば、ああいった意識を持つことはすごく重要なことだと思います。

僕もバンドが好きでよく聴くんですけど、バンドって長年やっていると、本人たちも歳をとっていくし、時代が変化していく中で、表現の在り方も変わっていくものだと思うんですよ。でも、それに対して「1stアルバムの頃はよかったのに」なんていうことを言う人がいますよね? 僕は、あれに違和感があって。そういうことを言う人は、そのバンドがずっと同じことをやってくれれば安心なんでしょうね。でも、そのバンドと一緒に歳をとって、変化を楽しむのがバンドのよさだと僕自身は思っているんです。

応援してくれているファンを大事にしたいっていう気持ちももちろん大事でしょうけど、「変わらないでほしい」っていうファンの意見だけを受け入れているバンドは、正直、そこから伸びることはなかなか難しいのかなと思います。

「失敗を恐れるな」俳優・山田孝之の若者へのメッセージ

全てのバンドの演奏が終わり、実行委員による判定・審査発表の時間に移った。ステージ上で語られた選出理由と共に受賞バンドを紹介すると、「m.c.A・T賞」は「彼女たちが出てくる前と後で会場の空気が変わった」と評された密会と耳鳴り。「コモリタミノル賞」は「歌、演奏、歌詞、それぞれが一丸となったバンドの勢い」を評価されたHIP BEAN SPROUT。

「コモリタミノル賞」を授与したHIP BEAN SPROUT
「コモリタミノル賞」を授与したHIP BEAN SPROUT

「nao賞」は「バンドという観点で見たときのまとまりのよさ」を評価されたBreathing Booost、「山田孝之賞」は「ギラギラしたバンドが多かった中で、癒されるような存在感の特殊さ」を評価されたWORLD WAND WOOD。

「山田孝之賞」受賞後、喜びのスピーチをするWORLD WAND WOOD
「山田孝之賞」受賞後、喜びのスピーチをするWORLD WAND WOOD

「実行委員会賞」は「ロックサウンドが多かった中で、クラブミュージックに近いサウンドを生バンドで聴かせた」という点でサウンドのオリジナリティーを評価されたUCURARIPが受賞。そして「グランプリ」は、ab initioが受賞した。演奏終了時の総評でも、コモリタに「光っている人っているんだなと思わされた」と言わしめたab initioは、演奏もさることながら、その歌と言葉に対する真摯な姿勢、音楽からにじみ出る「伝えよう」という意志の強さを実行委員から評価されていた。

見事「グランプリ」に輝いたab initio
見事「グランプリ」に輝いたab initio

受賞バンド発表後、m.c.A・Tは8組のバンド全てに対して「歌をないがしろにしないようにしてください」と伝えた。この言葉は、SNS審査などを通して、多角的な視点からバンドを評価し続けてきた先に出てきた言葉だからこそ、重く響くメッセージだった。

今回、受賞することができなかったUnfitcooderと便所の草の2組も、そのユーモラスなキャラクターで、司会を務めたアルコ&ピースの2人や実行委員サポーターの齊藤英里とのやり取りで会場を大いに盛り上げており、LINE LIVEを通してオーディションの模様を見ていた視聴者たちにも強烈なインパクトを与えたことだろう。最後に、山田孝之が語った若い世代の表現者たちに対するメッセージがとても印象的だったので、引用したいと思う。

山田:失敗などを考えず、まず「やれ」っていうことですね。やるしかないんですよ。1回目は失敗するのは当然なんです。初めてなんだから。それで批判されることもあるかもしれないけど、でも、批判を恐れていたらなにもできないですから。

世の中の90パーセント以上の人は、そうやって恐れることで、なにもできず留まってしまう。でも、失敗してもいいから、叩かれてもいいから、新しいことをやって自分を高めていきたい、周りに刺激を与えていきたい……そのぐらいの勢いで、挑戦していくべきだと思います。そうじゃないと、すぐ人生は終わってしまう。若い人たちには、そう言いたいですね。

山田孝之

オリジナリティーとはなにか。バンドとはなにか。そして、プロとはなにか――。そうしたことを考えさせられると同時に、これから出てくる若い表現者たちを、彼らの上の世代の人間はどのように迎え入れていくのか? そういうことを考えさせられる、とても熱く、意義深いオーディションだった。

「グランプリ」を獲得したab initio
「グランプリ」を獲得したab initio

イベント情報
『BAND WARS』

2018年7月14日(土)
会場:吉祥寺CLUB SEATA

出演:
Unfitcooder
Breathing Booost
便所の草
ab initio
密会と耳鳴り
WORLD WAND WOOD
UCURARIP
HIP BEAN SPROUT
実行委員:
m.c.A・T
コモリタミノル
nao
山田孝之



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