チャラン・ポ・ランタン、監督に挑戦。制限があるからこそ全力で

チャラン・ポ・ランタンが、「監督」に挑戦。ソニーが若きクリエイターを応援する企画展示をレポ

スマートフォンの性能向上や、動画アプリの機能充実によって、昨今は誰もが気軽にムービーを撮影し、感覚的にエディットできるようになった。しかもSNS等を利用すれば、世界中の人に自分の作品を観てもらえる時代。実際に、TwitterやYouTubeへの投稿がきっかけとなって、それまで無名だったクリエイターがプロとしてデビューする「シンデレラストーリー」も、あちこちで起きている。今や、プロもアマチュアも同じスタートラインに立ち、センスと才能だけで勝負できるのだ。

そんな中、東京・渋谷モディの1階にあるソニーの情報発信拠点「ソニースクエア渋谷プロジェクト」が、ユニークな企画展示を7月10日より開催している。『Directed by You –ソニーと創る「60秒フィルム」–』は、ブース内に家の中のようなスタジオを設置し、参加者はソニーの最新スマートフォン「Xperia 1 II」を使用して「監督」体験ができるというもの。あらかじめ用意された台本に沿って、俳優の演出やカメラアングル、照明の調整など自由に行いながら、オリジナルの映像を撮影。そこにコラボレーションクリエイターが撮影した映像や、ソニーのAI技術とクリエイターが生み出した楽曲を組み合わせることによって、世界で一つだけのショートフィルムを完成させることができる。いまや当たり前のものになったスマートフォンで映像作品を制作する体験を通して、日常的な「撮影」をよりクリエイティブなものにしようという意味も込められた企画だ。

今回CINRA.NETでは、この『Directed by You –ソニーと創る「60秒フィルム」–』にチャラン・ポ・ランタンのももと小春を招いて実際に体験してもらうことにした。

彼女たちは、今年3月にリリースしたシングル『コ・ロシア』のMVをロシアにて撮影し、ディレクターは小春が自ら行ったという。さらに、5月27日に配信されたシングル『空が晴れたら』を皮切りにスタートした「8週連続『宅録』配信シングル」では、作詞作曲はもちろん、レコーディングやミックス、ジャケット制作、そしてMV制作までのすべてを自分たちで担当。新型コロナウイルスの感染が世界中に広がっていく中、自宅にこもってコツコツとDIY精神を発揮していたのだ。そんな2人なら、今回の企画展示もきっと楽しんでくれるはず。期待どおり、終始笑いの絶えない刺激的かつクリエイティブなひとときとなった。

チャラン・ポ・ランタン / 左から:もも、小春
もも(唄 / 平成生まれの妹)と小春(アコーディオン / 昭和生まれの姉)による姉妹ユニット。2009年に結成、2014年にエイベックスよりメジャーデビュー。バルカン音楽、シャンソンなどをベースに、あらゆるジャンルの音楽を取り入れた無国籍のサウンドや、サーカス風の独特な世界観で日本のみならず、海外でも活動の範囲を広める。チャラン・ポ・ランタンとしての活動のほか、映画 / ドラマへの楽曲提供、演技・CM・声優・イラスト・執筆など活動の範囲は多岐に渡る。

渋谷モディで体験するショートフィルム制作。さあ、シナリオを元にどうアレンジする?

『Directed by You –ソニーと創る「60秒フィルム」–』で、あらかじめ用意されているオリジナルシナリオは、コントユニット「テニスコート」の神谷圭介が「コメディ編」3本を、劇団「ロロ」の三浦直之が恋愛編3本を手がけた。その中でも今回は、神谷によるシナリオ「トロフィー」で撮影を行うことに。昔の恋人が残していったトロフィーをめぐり、同棲中の男女が喧嘩を繰り広げるという、ちょっと不条理なコメディだ。

家の中のような舞台がセットされたスタジオに2人は驚きながら、スタッフより簡単なレクチャーを受けつつ撮影をスタートした。

まずはスタジオ内で撮影準備から。「Xperia 1 II」を操作しながら「アングルはどうする?」と相談中

もも(Vo.):今回「監督をやってみませんか?」と言われてびっくりしたんですけど、シナリオが用意されていたので思ったよりも難しくなく挑戦できました。決められたストーリーを、自分たちなりにアレンジしていくのは楽しかったですね。こんなユニークな企画、どうやって考えたんだろう(笑)。

俳優を前に、最初は戸惑い気味の2人。しかしダイニングテーブルに置く小物などを棚から選んだり、小春が持参したアコーディオンを俳優に持たせたりしているうちに、徐々にエンジンがかかってきたようだ。

「Xperia 1 II」のズームやアングルなどを何度も試したり、セリフのトーンやボリューム、視線の置きどころなど俳優への演技指導も入念に行ったりと、ディティールにもこだわりを見せる。さすが、普段から自分たちが撮られ慣れているだけあるし、『コ・ロシア』のMVディレクションや8週連続リリースで培ったスキルも存分に発揮しているようだ。

小春の商売道具であるアコーディオンを俳優に持たせるという、チャランポらしいアレンジが炸裂
スタッフのカチンコを合図に、ついに撮影開始!

コロナ禍で増えた自宅での時間。もどかしさを創作意欲に変え、さらに成長したもも&小春

もともと8週連続リリースは、ももの発案により始まった。コロナによって自粛期間が続き、「この先どうなるか全く分からない」という不安の中、小春から送られてきた“空が晴れたら”のデモ音源を聴いた瞬間、「これは絶対に出したい」と強く思ったという。

小春(アコーディオン):最初の打ち合わせでももから「どうせ暇だし毎週曲を出したくない?」って(笑)。7月17日がチャラン・ポ・ランタンの結成日だから、そこに向けて逆算したらちょうど8週間あったから「じゃあ、8週連続リリースにしよう」という感じで決まったんです。

チャラン・ポ・ランタンは今年で結成11年目に入るんですけど、これまでずっと、ほとんど1日も休まず進んできたところがあって。もちろん、それが楽しかったし「生きてる!」という実感でもあったのですが、コロナによって全てが突然止まってしまったことで、「生きる意味」さえ見失うような感覚があって……。2人とも、相当ストレスが溜まっていたと思う。演奏したいし仕事もしたいのに、何もできないもどかしさ。だからこそ、「録音から撮影まで全部自分たちでやる」という、ももからの無茶なアイデアに私も乗ったんだと思う(笑)。

8週連続リリースの第一弾となる”空が晴れたら”。撮影は自分たちのスマートフォンで行なったという

ずっと家にいなければならないのなら、家でできることを見つける。限られた空間の中で、工夫して映像を作る醍醐味は、今回の『Directed by You –ソニーと創る「60秒フィルム」–』とも通じる部分があるのではないだろうか。

小春:本当に部屋の中だけで撮影しましたからね。いろんな角度からいろんな場所を撮ったから、もう私の部屋の間取りもバレちゃったんじゃないかな(笑)。

もも:それに、私たちはプライベートスタジオを持っているわけでもないので、録音なども本当に自宅の部屋だけでやっていて。

小春:冷蔵庫の低周波ノイズが入っちゃって、その消し方から学んでいく感じ(笑)。でももう締め切りが近づいていて間に合わないかから、「今のベストはこれです!」みたいに発表する。で、次の曲ではその問題はクリアできるようになって……という具合に。

もも:毎週、小春ちゃんの腕が上がっていったよね(笑)。

小春:8週目に到達した頃には、1週目の音源とか聴くとやり直したくなっていました。そう感じるということは、エンジニアとしてのスキルも少しは上達したのかも知れないですね。最初から順番に聴いていくと、私の成長を感じてもらえるかと思います(笑)。

AIと一緒に曲が作れる。新しい時代の到来に驚き

「Xperia 1 II」の画質のよさ、レスポンスの速さに驚きながら、シナリオに沿って撮影を続けることおよそ40分。全てのシーンを無事に撮り終わった2人は、シーンに合ったBGMを選んでいく。BGMは、多様なスタイルのメロディーを自由自在に生成することができるAIアシスト楽曲制作ツール「Flow Machines Professional」を用いて制作したもの。今回『Directed by You –ソニーと創る「60秒フィルム」–』では、プロのクリエイターがソニーのAIとともに生み出したオリジナルのBGMが「コメディ編」「恋愛編」それぞれ4曲ずつの合計8曲用意されている。

もも:え、ということは「Flow Machines Professional」を使えばチャラン・ポ・ランタン風の楽曲もAIが作ってくれちゃうってこと? すごくないそれ?

小春:やってみたいよね。例えば、全く得意じゃないジャンルに挑戦したいときとか、アレンジの提案をAIにしてもらったらすごく助かるんじゃないかな。

もも:すごい時代だなあ(笑)。

撮影が終わり、ももと小春はBGM選びへ。じっくり耳を傾けている

2人によって撮影された映像と、すでに撮影済みの映像を組み合わせ、セレクトしたBGMを付けるなど編集作業におよそ10分。ついに「Directed by チャラン・ポ・ランタン」とクレジットされた、世界で一つだけのオリジナルショートフィルムが完成した。早速ブース内にある大画面で作品を鑑賞する2人。「うわあ、すごい!」「めちゃくちゃ面白い!」と感嘆の声が上がった。

作った映像と実際のご対面

もも:何が大変って、あの編集作業だよね(笑)。

小春:ほんとそう。ちょっとした「間」が大切で、そこが前後にズレただけで面白さは半減しちゃうから。

もも:そういう意味では編集にしても、役者さんにしてもBGMにしても、本当に整った環境の中で監督になりきらせてもらえる。誰がどんな風に撮影しても、満足感は絶対に得られると思いますね。

全部スマホでできちゃうからこそ、問われるセンス。2人は「無意識のクセ」から作品を生む

スマホの技術が向上し、誰もが気軽に映像作品を作れるようになり、撮影やディレクションに対するハードルが下がったからこそ、8週連続リリースといった試みにもチャレンジすることができたのだろう。

もも:とにかくスマホの解像度の高さには驚きました。自分たちで全てやろうと思えた最大の理由はそこですね。今年3月リリースの“コ・ロシア”も、8週連続リリースのMVも全てスマホ。しかも、スマホで撮影するための周辺機器もすごく充実しているんですよ。

“コ・ロシア”はロシアで撮影して、小春ちゃんがディレクションをしているんですが、これもスマホとスマホ対応のスタビライザーだけ持って行ったんです。そうすると本当にプロっぽく撮れちゃうんですよね、ワンタッチで4K撮影もできちゃうし。知識も何も必要なくて、充電すれば使えてしまう。それは動画撮影することのハードルを本当に下げてくれました。

小春:露出やピント合わせとかも自動でやってくれますからね。

もも:ただ、誰でもできるようになったからこそセンスが問われるというか。そういう時代になりましたよね。

2020年3月にリリースされた”コ・ロシア”。MVはロシア・ウラジオストクで撮影され、小春が監督・編集全てを務めた

誰もが同じ機材環境を整えられるようになり、プロとアマチュアの境界線がどんどん曖昧になっていく中、ももの言う「センス」を磨くためにはどうすればいいのだろう。日常の中のハッとする瞬間を捉えるコツや、そのために心がけるべきことはあるのだろうか。

小春:文章や詩を書く人って、ロマンチストだったりナルシストだったりするんですよね。意味のないところに意味を持たせたりしちゃうのって、そういう気質がないとできないじゃないですか。ほんの一瞬の出来事を、何分ものドラマにしちゃうクセみたいなものは、私たち2人ともある。「気持ち悪いな」と思いますね(笑)。

もも:そう、歌を書く人とか基本的に気持ち悪くないと無理。「こんなこと、表現しちゃうの?」って思うことをさらけ出すわけですから。それってもう、無意識にやっちゃっていることで、意識して心掛けていることではないかも知れないですね。

チャンスはどこにでも転がっている。恐れることなく、片っ端から作品を発表せよ!

ここ数か月、新型コロナウイルスによる感染拡大が世界中を覆う中、私たちは「制約」の中で工夫しながら暮らしていかざるを得なくなった。が、そうした「制約」がクリエイティブを生み出すモチベーションになったこともまた事実だ。

小春:本当にそう思います。不謹慎に聞こえるかも知れないけど、今回のことは「貴重な体験」だなと。この体験をしないまま一生を終えるのと、体験したのとでは全く違いますよね。まさか自分が生きている間に、「家から出られない日々が続く」なんてことが起きるとは思っていなかったわけじゃないですか。

こんなことにならなかったら8週連続リリースなんて思いつかなかったし、自分たちでMVまで撮ってそれを配信しようなんて絶対ならなかったはず。きっとこの先、いろんなところで新しいアイデアがどんどん出てくるんじゃないかな。

『Directed by You –ソニーと創る「60秒フィルム」–』では、設定されたテーマに基づき自由にショートフィルムを制作し、SNSで投稿するとソニースクエア渋谷プロジェクト内のシアターで上映される「オンライン編」も実施している。その中からプロのクリエイターに選ばれた作品は、渋谷モディ壁面の大型街頭ビジョンで上映され、プロからレビューを受けるワークショップにも参加できるという。

もも:面白い試み! いろんな人の作品を観たいですね。

小春:クリエイターを目指す人は、これに限らず自分の作品をSNSなどに発表し続けてほしい。音楽業界でも映像業界でも、新しい才能を探している人たちは必ずいるので、才能さえあれば絶対目に止まると思う。

全く無名だった漫画家志望の人が、とんでもないリツイート数を獲得したおかげで単行本が出版されることとか今は普通にあるじゃないですか。「これ、ちょっと微妙かも」なんて思わず、自信がなくても片っ端から発表することをおすすめします。

2010年にシングル『親知らずのタンゴ』でデビューしてから10年、今後はどのような活動をしていきたいと考えているのだろうか。

小春:今はなかなかライブなど難しい状況ですが、もともと私たちは野外で演奏していたユニットなので、例えば「半野外」のような、屋根があって換気もしっかりした場所で演奏できるといいなと。大がかりなステージを組まなくても2人だけで演奏できる、「フットワークの軽さ」が私たちの強みなので、そういった場所からまた生演奏を復活させられたらいいなと思います。

もも:レコーディングやミックス、MV撮影などこの自粛期間にできることがまた増えたので、今後もそれを活かしつつ音楽を届けていきたいですね。

どんな苦境や制限された環境の中でも、「工夫」と「DIY精神」でクリエイティブへとつなげてきたチャラン・ポ・ランタン。『Directed by You –ソニーと創る「60秒フィルム」–』でも披露したスキルを身につけた、彼女たちの今後の活躍が楽しみだ。

イベント情報
『Directed by You –ソニーと創る「60秒フィルム』–」

ソニースクエア渋谷プロジェクト内での撮影体験
期間:2020年7月10日(金)~2020年9月末
会場:東京都 渋谷モディ1階 ソニースクエア渋谷プロジェクト

ソニースクエア渋谷プロジェクトでは、まるで家の中のような舞台セットが登場。そこで参加者がショートフィルムの監督として作品を演出。ソニーの最新フラッグシップスマートフォン「Xperia 1 II(エクスペリア ワン マークツー)」を使って撮影します。用意されたシナリオをどんな風に役者に演じさせるかは参加者次第です。ライティングや小道具も選び、カメラの設定やカメラアングルを自由に変えながら撮影を行います。
撮影した映像には、プロのクリエイターがソニーのAI技術を使って制作したオリジナルのBGMが加わるとともに、監督として自分の名前がクレジットに入り、世界で一つのショートフィルムが完成します。完成した作品は、シアターエリアで上映されます。自分のスマートフォンに転送し、持ち帰ることもできます。
シナリオは、神谷圭介さんの制作したコメディ編「トロフィー」「恩返し」「記念日」、三浦直之さんの制作した恋愛編「紙飛行機」「ホラー」「結婚しよう」の計6本の中から選んで体験できます。

『Directed by You –ソニーと創る「60秒フィルム』–」オンライン編

期間:2020年6月30日(火)~2020年9月末

「60 seconds -One room-」と題し、8月7日(金)より恋愛編のテーマでの募集を開始。「紙飛行機」「ホラー」「結婚しよう」のテーマに沿ってそれぞれが自由に60秒のショートフィルムを制作。シナリオ、演出、撮影方法は自由です。BGMを使用の場合は、ソニースクエア渋谷プロジェクト公式サイト内からダウンロードしたものをご利用ください。
作品が完成したら「#ソニーと創る60秒フィルム」と「#ソニースクエア渋谷」のハッシュタグをつけてTwitterもしくはInstagramでぜひ投稿してみてください。
投稿された作品は、ソニースクエア渋谷プロジェクト内シアターで上映。
また、シナリオライター、カメラマン、映画監督それぞれのクリエイターの目線から選ばれた作品は、渋谷モディ壁面の大型街頭ビジョン「ソニービジョン渋谷」で上映される他、プロのクリエイターから直接レビューを受け、ショートフィルムについて話すワークショップ(9月4日に実施)に参加することができます。

クリエイター選定作品募集期間
恋愛編:8月7日(金)~8月24日(月)23:59

ワークショップの生配信や関連情報は、ソニースクエア渋谷プロジェクト公式Twitter(@SonySquareSP)で随時発信しています。

アンケート情報

本記事をご覧いただいた読者の皆様に簡単なアンケートを実施しております。以下のフォームよりご回答いただけますと幸いです。

プロフィール
チャラン・ポ・ランタン

もも(唄 / 平成生まれの妹)と小春(アコーディオン / 昭和生まれの姉)による姉妹ユニット。2009年に結成、2014年にエイベックスよりメジャーデビュー。バルカン音楽、シャンソンなどをベースに、あらゆるジャンルの音楽を取り入れた無国籍のサウンドや、サーカス風の独特な世界観で日本のみならず、海外でも活動の範囲を広める。チャラン・ポ・ランタンとしての活動のほか、映画/ドラマへの楽曲提供、演技・CM・声優・イラスト・執筆など活動の範囲は多岐に渡る。



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