実用だけが学びじゃない。ゆうこす、りゅうちぇるらが社会を語る

「新しい教養」に触れて学ぶ、大人のためのコミュニティ型スクール『Social Coffee House』が6月に本オープンした。それに先駆けて、5月14日からプレオープンの無料特別配信を実施。CINRA.NET編集部では、「Z世代が考える社会課題への意識」をテーマに掲げた第3回目の配信を取材した。

大人のための「学びの場」だけど、「学校」じゃない?

『Social Coffee House』メインビジュアル

『Social Coffee House』は、クリエイティブディレクレター・辻愛沙子が代表を務めるarcaが運営しているもの。ジェンダー、環境、アート、経済などの領域で社会がアップデートされていくなか、大人に「学べる場」が少ないのではないか、という想いから、社会にまつわる事柄や課題を学び、よりよい未来を語りあうことを目的に誕生した。

「学び」の場でありながらも、学校のように明確な答えを知る場所ではなく、自分自身で考えていく土台を養う場所、と規定されている点がユニークだ。

『Social Coffee House』で用意されている場は、オンラインコミュニティー機能である「Club(交流)」とゲストと共に様々なテーマを学んでいく「Class(学び)」の2つ。

「Club(交流)」はチャットツールを使用し、「これってどうなの?」「自分はこう思った」など最新ニュースからカルチャーまで語り、学びあうことができるクローズドなコミュニティーだ。SNSでは質問しづらい「よくわからないこと」も気兼ねなく問うことができるような場づくりを心がけるという。

「Class(学び)」では、各分野に詳しいゲストを招き、様々なテーマの知識をオンライン配信もしくは会場で深めていく。

「アクティブ」と「マイペース」の2コースを用意

「コーヒーハウス」とは何か?

『Social Coffee House』の名前の由来となった「コーヒーハウス」は、17世紀半ばから18世紀にかけて、イギリスで流行した場所だ。政治家、文人、商人、学生といった多種多様な出自の人々が集ったコーヒーハウスでは、人々がコーヒー片手に議論し、ジャーナリズムの発生・発展にも一役買った。ジャーナリストたちがコーヒーハウスで語られたことを記事にし、発行するという形で新聞や雑誌が次々と刊行され、さらにコーヒーハウス内でそれらが読まれて客たちが議論するという循環が作られていたという。

英文学者・小林章夫の著書『コーヒー・ハウス 18世紀のロンドン、都市の生活史』(講談社学術文庫)によれば、初期のコーヒーハウスでは酒を提供せず、賭博も禁止されていた。訪れる客は「身分・職業、上下貴賤の区別なく、どんなぼろを着た人間だろうと、流行の衣装に身を固めた伊達男だろうと、誰でも店に出入りすることができた。いわば一種の『人間の<るつぼ>』的性格を持っていた」という。

小林章夫『コーヒー・ハウス 18世紀のロンドン、都市の生活史』(講談社学術文庫)
小林章夫『コーヒー・ハウス 18世紀のロンドン、都市の生活史』(講談社学術文庫 / サイトで見る

身分に関係なく気軽に立ち寄ることができ、さまざまなトピックをフラットに学び、語り合うことができる場所。そして、そこから何か新しいものが芽生えていく……そんなポジティブなメッセージを「コーヒーハウス」は体現している。

しかし「誰でも店に出入りすることができた」という点については、ただし書きが必要だ。実際には、男性以外の客は立ち入ることができなかったのだ。小林も著書でその点について理由ははっきりしないとしつつ、「明らかな差別が行なわれていたといえるかもしれない」と評している。

「コーヒーハウス」の意匠をまとった『Social Coffee House』ではあるものの、こちらはもちろんジェンダーに関係なく学び、語ることができるし、ジェンダーも重要なトピックになりそうだ。その点では「本家」を大きくアップデートしたかたちといえるだろう。

一方的に教わる「学校」ではなく、中心人物が決まっているオンラインサロンでもない。共用部分を備えた集合住宅「ソーシャルアパートメント」のように、日常生活の延長線上にありながら、ゆるやかでフラットな繋がりをかたちづくっていく。『Social Coffee House』が提供する体験は、そういったものになるのかもしれない。

『Social Coffee House』プレオープン配信はアーカイブ視聴も可能

本オープンに先駆けたプレオープン配信は、5月14日から毎週金曜に実施された。初回は「Social Coffee Houseとは何か?」をテーマに据え、辻愛沙子、牧野圭太、かえで、はつこといった運営チームが『Social Coffee House』のコンセプトや今後の展望などを語った。

5月21日に配信された第2回はベンチャーキャピタリストの佐俣アンリ、ジャーナリストの浜田敬子が辻愛沙子とともに「ビジネスパーソンは社会とどう向き合うか」をテーマに語り合った。

今回取材させてもらった第3回の配信は、5月28日に実施。ゲストにはゆうこすこと菅本裕子、りゅうちぇるを招いた。テーマは「Z世代が考える社会課題への意識」。笑顔が絶えないなごやかな雰囲気の中で、社会課題を意識したパネルトークが繰り広げられた。

『Social Coffee House』で語り合いたいテーマは多岐にわたる

りゅうちぇる「買い物は投票」

第3回「Z世代が考える社会課題への意識」パネルトークのテーマ

パネルトークの最初のテーマは「買い物で意識している事」。

ゆうこすは再利用できるシリコンのストローに興味を示しつつ、環境に配慮した商品という繋がりから、竹を使ったバンブーロールの定期購入サービスを利用していることを明かした。

りゅうちぇる

りゅうちぇるは「買い物は投票だと思っている」と発言。「買い物をすることで企業に成果が出る。環境を意識しながら買い物をしていかないと、10年後や20年後の若い子が困ってしまうかも」と警鐘を鳴らした。

次のテーマは「発信の時に気をつけている事」。

りゅうちぇるは「絶対に人を傷つけないこと」に気を配っているとコメント。「僕は自分の意見をはっきり言うほうだけど、僕の反対意見の人は世の中に絶対いる。そういう人たちは僕が想像していない環境で育ってその考えになったのかもしれない。背景がわからないのにその人を否定するのも違うと思っている。反対意見であっても、その人の思考を尊敬する心を持っていないと、本当のダイバーシティではないんじゃないか」と語った。

ゆうこすこと菅本裕子

ゆうこすは「1対1のような少人数での関係なら話し合えるけれど、SNSの場合は1対大人数になりがち。あまり話し合うことができない」と指摘。「2年くらい前まではけっこう炎上していた。容姿の悪口を言われたりして許せなくなることがあった。結果、どんどん『自分は被害者』っていう意識が強くなってしまい、逆に加害者になっていた時期があったかもしれない。その経験があるから、意見を発信しようとするときは『強い言葉になってないかな』と思うために一度寝るとかして時間をおくことにしている」と明かした。

ゆうこすがアップデートした、2021年の「3つのモテ論」は?

パネルトークではお題を起点として、ゆうこす、りゅうちぇるが次々と自身の考えや生活のなかで体験したエピソードを披露。それらに合いの手を入れつつ、社会課題へのアプローチに話を繋げていく辻愛沙子の手腕も見事だった。

『Social Coffee House』代表の辻愛沙子

「社会の意識/周りの変化は感じる?」というお題に対して、「モテクリエイター」として活動しているゆうこすは「私は伝統的な性役割が強固な地域に育った」と明かし、「ちょっとおバカなふりをして、弱く見せて、あまり稼げない、というのが女の正しい生き方だと思っていた。モテクリエイターというのも、もともとはそういう価値観に基づいたものだったけれど、東京に出てきて仕事させてもらうなかで、違和感を少しずつ持ち始めて、自分が思ってきた『モテ』は昔と変わったと自覚した」と告白した。

自分のYouTubeチャンネルなどでアップデートした「いまのモテ論」を発信しているというゆうこす。いまのモテ要素は、「自立していること」「常に成長し続けていようという気持ちがあること」「自分の気持と相手の気持ちを大事にしていること」の3つだという。

普段は忌避されがちな「生理」の話題でも大盛り上がり

社会や周囲への変化というテーマから派生して、「生理」にまつわるトークも盛り上がった。

ゆうこすは「自分は『生理』という言葉を出すのもダメな世界で育った。生理っていう言葉を男子の前では言っちゃダメですよ、と学校でも言われた。だから生理用品のプロジェクトの話があったとき、何を言ってるんだと思った。打ち合わせに行ったら、生理について当たり前のように語り合っていた。そのとき、『話していいんだ』と思って、びっくりして号泣しまった」と身振り手振りを交えてコメント。

生理をテーマにしたゆうこすの動画

生理をテーマにした番組に出演したこともあるりゅうちぇるが「自分の性も大事だが、相手の性を理解することはとても大事。姉妹のいない男の子は、CM映像の影響で、生理の血の色が青いと思っている人もいる。症状はみんな一緒で、ちょっとお腹が痛いだけでしょ? と思っている人もいる。でも知らないからと言って、知る機会がなかったということだから、男性を責めるのも違う」と話すと、辻は「生理の番組に男性が出演するのは希望だと思います」と深く頷いた。

りゅうちぇるとパートナーのぺこ出産時を振り返る動画

辻愛沙子「役に立つ学びだけが大人の知るべきことではない」

次のお題は「ニュースや社会に関心をもったきっかけは?」。

ゆうこすが「社会問題についてあまり関心がなくて、怖いイメージがあった。『Social Coffee House』のような取り組みや、SNSなどで若い世代の人たちが政治的な発言をしているような状況をきっかけにして、興味を持ち始めた」と明かすと、辻はそれを受けて『Social Coffee House』について「不安定な時代だから、ビジネスやノウハウといった役に立つ学びを求める大人が多い。それも大事なことだが、ジェンダーの問題や人を傷つけない表現などは、人間関係や日常生活においては重要。役に立つ学びだけが大人の知るべきことではないと思い、『Social Coffee House』を始めました」とSocial Coffee Houseの話題に。

さらにゆうこすが『Social Coffee House』のよいところについて「イベントだけでなくコミュニティー機能もあるところ。Twitterなどでは、わからない状態で質問したことで、人を傷つけたり、叩かれたりする可能性がある。『Social Coffee House』のようにクローズドな場所で語れるような環境が10代の頃からあってほしかった」と続けると、辻は「わからないときに『わからない』と言える場がいまどこにあるのか。たとえば報道番組のCMが炎上したことがあったが、ああいったCMが問題なかった時代もあったはずで、いまはなぜダメなのかわからないという人もいる。知りたい、という学びに対する芽生えがあるのに、場がないというケースが多いのではないか」と指摘した。

りゅうちぇるは「大人の学び」について、「僕は小学生向けの政治の本から読み始めた。本当にわかりやすかった。最近だと、シオリーヌさんの小学生向けに書かれた性教育の本を読んで感動した。小学生向けの本って恥ずかしいと思うかもしれないけれど、知らないほうが恥ずいから!」とりゅうちぇるならではの言い回しで視聴者を触発した。

助産師で性教育YouTuberのシオリーヌによる動画

りゅうちぇる「世の中は自分についてくるもの」

後半に入っても、ゆうこすとりゅうちぇる、そして辻のトークは盛り上がる一方。個々がはっきりと意見を言い合いながらも、異なる意見を頭ごなしに否定せず、肯定感溢れるムードに包まれていたのが印象的だった。

次のお題は「10代or上の世代に伝えたい事」。

りゅうちぇるは「SNSで人の失敗を簡単に見られる時代。人が失敗する様子を見て、自分がやる前に諦めてしまう人が多い。それが『さとり世代』なのかもしれない。でも自分が挑戦しないと自分の実力ってわからない。上の世代のことはわからないことも多いが、認めあうことが大事」と指摘すると、ゆうこすは1月に放送されたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類! 新春スペシャル!!』を親戚たちと共に視聴し、社会課題に関する世代的な感覚の違いを実感した経験を例に挙げ、「楽しい場所で、みんなの意見を否定しあうんじゃなくて話しあう場所が欲しい」と期待を寄せた。

『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類! 新春スペシャル!!』予告映像

最後のお題は「未来の社会、不安?希望?」。

りゅうちぇるは「僕は世の中に期待したことは一度もない。世の中がこんなふうに変わればいいなと思っていないけれど、僕を見て、こんな男がいてもいいんだと思って誰かが変わるきっかけになればと思っている。自分の考え方、感じ方が何よりも大事。自分への期待しかない。自分の人生のことを考えていて、それが世の中にこぼれていく。世の中は自分についてくるもの」と力強く語った。

ゆうこすは、「以前YouTubeチャンネルで、婦人科の検診の様子を撮らせてください、と初めて自分からお願いしてコラボさせてもらった。そういうふうに自分からどんどん発信していく人が増えることが希望」と表情を輝かせた。

『Social Coffee House』3つのルール

『Social Coffee House』の「コミュニティーのルール」として辻は、「無自覚さに気づく」「想像力を持つ」「自分の声を聞く」の3つを挙げた。

「無自覚さに気づく」は、「自分は差別をしていない」とか「偏見を持っていない」と思い込むことをやめ、自分が気づいていない偏見があるかもしれないと思って学んでいくこと。

「想像力を持つ」は、善と悪とか、若者と年配の人とか、そういったわかりやすい二項対立で考えないことに加えて、「あなたは女の子だから」といった「らしさ」を押しつけないこと。

「自分の声を聞く」は、例えばセクハラに直面した際に「こんなに小さなことを指摘したら組織が大変なことになるかもしれない」とか「面倒くさいやつだと思われるかもしれない」とか、そういった懸念があるかもしれないが、違和感や疑問を大事にして、蓋をせずに口にしていくこと。いずれも『Social Coffee House』を離れた日常生活においても心がけたいルールだ。

りゅうちぇるとゆうこすが語った「愛」

りゅうちぇるは、視聴者へのメッセージとして「自分で自分のコップに愛をいっぱいためてください」と訴えた。「コップに注いだ愛が溢れ出したときに、ようやく人に愛を与えられる。何を始めるにしても、自分を愛していることが重要。どんなに小さいところでもいい。昨日の自分より今日の自分を好きになる。自分の素敵さに気づくという努力は大切にしてほしいなって思います」。

ゆうこすは、「モテクリエイターを名乗っていると、どうすれば愛されるんですかと聞かれることが多い。でも、どうやったら自分が人を愛せるのか、というのも重要。『愛する』というのは技術だと思っている。『好き』と思ったとき、その『好き』は本当に相手のことを思いやっている『好き』なのか。でも相手の気持ちを推し量るためには、自分の経験が必要。だから、『Social Coffee House』のような場所でいろんな人と話すという経験があったほうがモテるし、人のことを愛せると思う」と締めた。

現場では運営スタッフや撮影クルーたちがそれぞれの仕事に集中しながらも、三人のトークに真剣に聞き入り、相槌を打っている様子が印象的だった。この肯定感溢れる雰囲気や、17世紀のコーヒーハウスにも満ちていたであろう新しい何かが始まる予感、渦巻く熱が、今後の『Social Coffee House』にも引き継がれることを期待したい。

「Class(学び)」では多彩なゲストが続々登場

様々なテーマの知識をオンライン配信もしくは会場で深めると共に、ディスカッションを行なう「Class(学び)」では、様々な分野の専門家が登場。

6月4日の初回は辻が出演する「いま大人に必要な教養ってなんだろう?」を開催。6月18日は「SOGI(LGBTQ+)とは?」をテーマに据え、合田文(漫画でわかるLGBTQ+ / パレットーク編集長)が登場。7月2日は「スペシャル談義 -政治編-」と題してスペシャルゲストを迎える予定だ。

7月16日は「映画と多様性」をテーマに据え、映画監督の枝優花と記者の藤えりか(朝日新聞)、8月6日は「バリアフリー/ノーマライゼーション」をテーマに作家の岸田奈美、8月20日は「性教育」をテーマに助産師 / 性教育YouTuberのシオリーヌを迎える。9月3日は「マインドフルネス」をテーマに据え、ゲストは後日発表。9月17日は「ESG投資」をテーマに、新井和宏(株式会社eumo代表取締役)が出演する。

イベント情報
『Social Coffee House』プレオープン無料特別配信第3回「Z世代が考える社会課題への意識」

2021年5月28日(金)20:00からTwitterで配信

出演:
ゆうこす
りゅうちぇる
辻愛沙子



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