本なのか、壁なのか、はたまたキャンバスなのか。文庫本によるインスタレーション

彼の代表作ともいえる文庫本によるインスタレーション。よく見るとそれらが本棚ではなく、背表紙のみの集合体であることに気づくだろう。本来は核であるはずの中身をもたない本の抜け殻ともいえる作品にも関わらず、本棚というより壁に近いそれらは、圧倒的なパワーを保持したまま、いや、むしろ不思議な奇妙さを纏ってパワーアップして迫ってくる。空間に突如と出現した色とりどりの本たちは、私たちの生活に普段入り込んでいる本とは、まるで本質の違う物体のようにも感じることができ、それは本の本質に迫る試みであるともいえる。

今年開催された最新の個展では、白い背表紙の海外文学作品に素材をしぼった同シリーズの新作がお目見えした。配色に規制をかけることにより視界は狭まるはず、なのだが目の前に広がる白の物体はこれまでの作品とはまた違う静寂をもってそこにたたずむ。これは果たして本なのか、壁なのか、はたまたキャンバスなのか。与えられない答えの中で迷いながらも、ふと気を緩ませると自分の好きな作品を見つけてしまって、うっかり微笑んでしまったりするのだった。

※このコンテンツは旧「ピックアップアーティスト」の掲載情報を移設したものです

プロフィール
施井泰平

1977年、東京に生まれ幼少期をアメリカで過ごした施井は「インターネットの時代におけるアートのあり方」を喚起するWeb プロジェクトや美術制作を行なっています。最近では文庫本を加工した作品群を制作し、同シリーズ最大の作品は建築家の安藤忠雄氏が購入しました。また昨年NYのトライベッカにオープンし、各方面から注目されている「Tokyo Bar」に巨大な壁面インスタレーションを納めたことでも話題を集めています。2011年1月から「泰平」として活動中。



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