「過去」ではなく「今」を強く感じさせる抽象画のような写真

色やカタチ、素材への鋭い感受性によって切り取られたこれらの画面は、写真というよりも抽象的な絵画を思わせる。しかし、ここに写っているのは、普段私たちが何気なく目にしている街中の物や壁や道路である。普通だったら見向きもしないものが、写真に撮られて、こうして私たちの目の前に大きく立ち現れることで、その表情の豊かさに驚いてしまう。擦り減っていたり、ペンキなどが剥がれ落ちていたり、穴があいていたり、ひびが入っていたり、錆びていたり。こうした朽ちゆく様がなぜこんなにも美しいのだろうか。

ただ単に色やカタチの組み合わせによる視覚的な面白さだけではなく、人間の奥底にある感情を呼び覚ましてくれる。喜怒哀楽では片づけられない、喜も怒も哀も楽も全部入り混じったような、うまく言葉では言い表せない感情を。写真をみるときに、私たちはその光景を、過去の出来事としてみる。昔をふりかえるように私たちは写真をみることが多い。しかし、miusは、「過去」ではなく「今」を強く感じてしまう。そう、今も、街のどこかで、人や虫や天候や湿気などのあらゆる要因によって刻々とそれらは変化していて、現に今日も私たちは壁にふともたれかかったり、道路を強く踏みつけたりして、痕跡を残して生きているのだから。

※このコンテンツは旧「ピックアップアーティスト」の掲載情報を移設したものです

プロフィール
木内美羽 (mius)

時と共にモノに刻まれた汚れは、人々の日常生活の痕跡とも言える。それら無作為に刻まれたはずの痕跡が生み出す、表情豊かな色彩やマチエールに着眼し、写真によって切り取る事で抽象的な作品群を制作している。



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