ORIONBEATSこと廣山哲史が辿り着いた、新たなる「発見」

15年ほど前、沖縄出身の父親が「音楽は70年代に出尽くされたよ。あとは、今あるものをどう組み合わせるかだと思う」と言ったのを覚えている。当時ローティーンだった筆者は「そうかなあ」といぶかしがったものだが、確かに今や音楽は、それをつくる側にとっても聴く側にとっても、組み合わせの斬新さなくしては語りえないものになっているように感じる。「発明」ではなく「発見」。沖縄ひとつとってみても、RYUKYUDISKOや琉球アンダーグラウンド、TAKUJI a.k.a GEETEKが出てきたときは「沖縄音楽とクラブミュージックを結びつけるか!」と驚いたものだ。他にも、民謡とEUサウンドを混ぜ合わせたONSEN-TARO、ダブにのせてお経を読むTariki Echo、あるいは阿波踊りのリズムをロックにすべらせたゆらゆら帝国、鳥取県民謡「貝殻節」をフリージャズに流し込んだ坂田明。その組み合わせの「発見」には枚挙にいとまがない。

ただこうした斬新さは、そのもの珍しさゆえに一過性で終わってしまうことも多い。だから表現者にとっては、一度きりにするかやり続けるか、厳しい覚悟が強いられることになるだろう。そうしたなかで「沖縄音楽とクラブミュージックの融合」を掲げ、続けることを選んだ1人が、今回取り上げる廣山哲史である。前述したRYUKYUDISKOやTOQUIO LEQUIO TEQUNOで活動し、地元のDJやVJを集めたレギュラーパーティイベント『RAKUEN』を主催、自身で立ち上げた「RAKUEN RECORDS」のレーベルプロデューサーも務める。「哲史」という名前の通り、独特の「哲学」と「歴史」を感じさせるが、そんな彼のソロプロジェクトORIONBEATSが、初のアルバム『AWESOME BEATS』を完成させた。2枚組、トータル収録時間は100分を超える大作で、DISC1はORANGE RANGEのYAMATOやMONGOL800の儀間崇などなじみのアーティストが参加したほか、りんけんバンドやかりゆし58らの代表曲をサンプリングしたりと、沖縄愛あふれる作品になっている。DISC2は26曲ぶっ続けのMIX CDだ。


しかし、「沖縄音楽とクラブミュージックが融合したポップなアルバム! 夏にぴったり!」という常套句だけでこのアルバムを語るのは、あまりにもったいない。そもそも沖縄音楽もクラブミュージックも、踊る・踊らせるための音楽、つまりはダンスミュージックである。そういう意味で本作は、国内外のトレンドをうまくちりばめた、バランスのとれたダンスミュージックアルバムだと言えるだろう。マーチと三線と合唱をテクノでまとめあげた“Let's ORIONBEATS feat. YAMATO”、レゲエフレイバーたっぷりの“Save The Sea, Save The Sky feat. TAKASHI”、ハードなロックチューン“ROCK IN CHATAN FES feat. NEON”と振り幅の広さを見せつつ、特に印象に残ったのは次の4曲。“TANDIGA DANCE feat. SHINJI”ではガバ、“Humoresque 8”ではドヴォルザークのピアノ曲『ユーモレスク」を下敷きにかなりざらっとしたチップチューン、“Tweet Me, Tweet You feat. AWICH”では何語なのわからないリリックをのせたグリッチホップ、“Anmar from. KARIYUSHI58”ではボイスサンプリングが耳に残るダブステップをやっているからだ。沖縄音楽があってクラブミュージックがあるというよりは、クラブミュージックがあって沖縄音楽があるというような、現行のシーンに呼応しているような楽曲群が興味深かった。こうした組み合わせの試みが、どんな反応を引き起こすのかを自分自身でも楽しみながら、探りながらつくっているという廣山の姿勢が伝わってきた。

ところで、筆者が今年6月、UKベースミュージックを牽引するレーベルHyperdubの首領Kode9にインタビューしたとき、「今新しいこととして俺が感じてるのは、多くの人達がデジタルでつながったローカルのクラブシーンのネットワークを通して、異なるサウンドを組み合わせてることだね。例えば、シカゴで生まれたフットワークやジュークみたいなレーベルがここ数年UKの多くの連中に大きな影響を与えてる」と話してくれた。沖縄も、そうしたシーンに切り込んでいく拠点になればいいと思う。ORIONBEATSの「オリオン」とはもちろん星座のことだが、沖縄ではそのベルト部分にあたる3つの星を「黄金三星(クガニミチブシ)」と呼び、神が住む星と言われているそうだ。ORIONBEATSの「土地への愛着」と「融合への挑戦」というふたつの星は見えた。あとひとつの星はなんだろう。それを探し当てるために、彼はこれからもビートをつくっていくのかもしれない。

リリース情報
ORIONBEATS
『AWESOME BEATS』(2CD)

2012年6月12日発売
価格:2,625円(税込)
RAKUEN RECORDS / RKEN-002

[DISC1]
1. Let's ORIONBEATS feat.YAMATO
2. TANDIGA DANCE feat.SHINJI
3. iSanshin 3GS feat.Fencer
4. Save The Sea, Save The Sky feat.TAKASHI
5. Kabira Bay feat.C-R
6. ORION BEACH
7. Humoresque 8
8. Medetai Medetai from.RINKEN BAND
9. ORION MATSURI
10. Eisa from.DIAMANTES
11. Tweet Me, Tweet You feat.AWICH
12. Anmar from. KARIYUSHI58
13. Pop'n Talk feat.lichard.
14. ROCK IN CHATAN FES feat.NEON
15. GarageDJ
16. The Orion Nebula
[DISC2]
1. Let's ORIONBEATS Remix
2. ORION Boy
3. ORION MATSURI Remix
4. Hangover
5. Pop'n Talk Remix
6. Fresh Plaza Un10n
7. Fifty Eight Drive Music
8. Toshin Electric Boy Remix
9. Tequno Eisa
10. I Just Wanted To Be A Drummer
11. Tweet Me, Tweet You Remix
12. ORION BEACH Remix
13. Hungry Birds
14. The Orion Nebula Remix
15. RAKUEN Break
16. Space Opera
17. UCHUNCHU
18. iiTenki
19. DidgeridooooOOOOOO
20. One Day
21. Tablama Remix
22. Mukashi no Tekuno
23. Ketchup on The Fish & Chips
24. DAN DAN DAN
25. TANDIGA DANCE Remix
26. From The Three Stars in Orion's Belt,Via Okinawa to You. At the Crack of Dawn, Play ORIONBEATS and Enjoy it.

プロフィール
ORIONBEATS

RYUKYUDISKOの活動でも知られる廣山哲史のソロプロジェクト。2011年からは本格的なソロ活動を開始し、那覇市桜坂セントラルでのレギュラーパーティー「RAKUEN」の開催や、そこから派生して生まれたクラブミュージックレーベル「RAKUEN RECORDS」を運営。近年は、元BEAT CRUSADERSのクボタマサヒコ、カトウタロウ、マシータらと結成したバンドTOQUIO LEQUIO TEQUNOSでも活動中。



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