ライオットガールムーブメントを率いたSleater-Kinney、10年ぶりの再結成の意味とは?

ライオットガールムーブメント=自分の居場所を作るための女の子たちの反抗

1990年代、シアトル近郊の街オリンピアに端を発し、やがてアメリカ北西部を中心に大きな盛り上がりを見せていったライオットガールムーブメント。それは、男性中心主義的で女性蔑視の傾向があった当時のパンクシーンに対する、女の子たちの反抗だった。自分たちの居場所を作るため、そして自分たちも表現するため、ときに過激なメッセージを放ちながら、自分たちのパンクロックを鳴らし始めた幾多のガールズバンドたち。その中心的存在だったバンド、Bikini Killのライブに感化される形で、1994年オリンピアで活動を開始したSleater-Kinneyは、そんなムーブメントの終盤に登場した。コリン・タッカー(Vo&G)、キャリー・ブラウンスタイン、ジャネット・ワイズ(Dr,Cho)――ベースレスの三人組のツインボーカルという変則的な編成で打ち鳴らされるそのアイデア豊かなサウンドは、やがてライオットガールの括りを超えて高い人気と評価を獲得。ポストNIRVANA期のオルタナティヴシーンをリードする存在となっていった。しかし、そんな彼女たちも、2005年のアルバム『The Woods』を最後として緩やかに活動を休止。三人は、ソロワークや別プロジェクト、あるいは子育てなど、個々の活動に入ってゆくのだった。

再スタートを切ったSleater-Kinneyが追求した、「圧倒されるほど強烈な楽曲」の実態

それから10年。彼女たちは再びSleater-Kinneyとして活動を開始した。ここで確認しておきたいのは、今回の再始動は、いわゆる温故知新的な一過性の「リユニオン」ではなく、入念な準備を経た上での再スタートであるということだ。実は2年前から楽曲制作に入り、最新型のSleater-Kinneyの音楽を作るべく試行錯誤を続けていたという彼女たち。「私たち三人、みんな同じものが欲しかったの。私たちが欲しかったのは、圧倒されるほど強烈な楽曲」(ジャネット・ワイス)。

かくして生まれた本作は、それぞれのフィールドで積み重ねてきたキャリアが新たな化学反応を引き起こした、実にフレッシュなロックアルバムとなっている。本作が決して温故知新的でないことは、そのリリックを見ても明らかだろう。<アンセムが欲しい 一曲のアンセム 答えと力 静寂の中でリズムを感じるために 暴力ではなく武器を パワー、パワーの源を>と歌う“No Anthems”(アンセムは無い)をはじめ、“Price Tag”(値札)、“Surface Envy”(表層的な羨望)、“No Cities To Love”(愛すべき街など無い)、“Bury Our Friends”(友だちを埋葬せよ)など、ヒリヒリとした焦燥や背反する思いを感じさせる楽曲たち。それは、最新型のSleater-Kinneyのサウンドの切れ味や迫力に見合う、現在進行形の刹那の感情を、これまで以上に鋭利な形で鮮やかに描き出している。


フェミニズムの思想から、音楽そのものが生み出すパワーへ。ガールズバンドの心に火をつける燃料の変化

その根底にあるテーマは、「パワー」だったと彼女たちは言う。「私たち自身、バンドでプレイするときは、いつも『力』を感じていた。ステージに上がったときの自分たちの役割は、すごく『力』に満ちたものだった。その役割とは何なのか、そしてその『力』をどう伝えるのか――それが本作のテーマだったの」(コリン・タッカー)。さらにコリンは続ける。「歌詞とか内に秘めた思いは、怒りや反発がこれまで以上に強い」と。ここで思い出して欲しいのは、ライオットガールというムーブメントの本質だ。それは決して男性中心主義に対するアンチを表明するだけのものではなかった。むしろ、かくあらねばならないという社会的な慣習の中で身動きが取れなくなっている女の子たちに、「あなたは何でもできる」と伝えること。そのメッセージは、Sleater-Kinneyの旧い友人であり、本作のリード曲“Bury Our Friends”のPVの監督も担当しているミランダ・ジュライをはじめ、多くの「ガール」たちの心に火をつけ、それぞれの行動へと駆り立てていったのだ。


改めて思うに、その中心には、やはり音楽があったのではないか。自らを奮い立たせるような激しい音楽、パワーの源となるような音楽が。かつてフェミニズムの思想は、確かに彼女たちのトリガーだった。しかし今、Sleater-Kinneyは、思想ではなく音楽そのものが生み出すパワーによって、再び自らを奮い立たせようとしているのだ。妻となり母となっても決して消えることのなかった不安や孤独を打ち払うために、あるいは決して良い方向に向かっているとは思えない今の世の中を生きる人々を鼓舞するために、三人が持ち寄る最高の音楽を鳴らすこと。冒頭に引用したキャリーの言葉ではないけれど、このアルバムはSleater-Kinneyというバンドの重要性と、このバンドが打ち鳴らす音楽が意味するものを、これまで以上に多くの人々にリアルに感じさせるであろう一枚――言わば、オルタナティヴロックの渾身の一撃なのだ。

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