2009年に始まったアジア最大規模のアートブックフェア『THE TOKYO ART BOOK FAIR』が、2017年10月5日からの4日間、天王洲アイルにある寺田倉庫にて開催されました。来場多数のため入場規制もかかる中、国内外の書店、出版社、アーティスト、ギャラリーなど350以上出展者が集結。そんな『THE TOKYO ART BOOK FAIR 2017』のレポートとともに、会場で見つけたオススメの5作品を紹介します。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
アジアに飛び火する、Art Book Fairとは!?
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2009年にはじまった『Tokyo Art Book Fair』(以下、TABF)は、アメリカやヨーロッパで既に開催されていたアートブックフェアの文化を、アジアに輸入する形で生まれたイベント。ZINEカルチャーの広がりとともに動員を増やし続け、それぞれの都市で独自に発展し、今では、数万人を越える一大イベントになりました。
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その勢いはアジア各国にも飛び火し、TABFと同年にはじまった韓国・ソウルのアートブックフェア『Unlimited Edition』をはじめ、 2013年にシンガポールではじまった『Singapore Art Book Fair』、そして2017年から台北ではじまった『Culture & Art Book Fair in Taipei』など、アジア各国にも広がりを見せています。
そんな中開催された、2017年のTABFは、大きくテーマを設けた企画展やトークショーなどのイベント、そして各々のブース出店によって構成。開催場所である天王洲エリア一帯を巻き込んだ展開がされていました。
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まず、特定の地域の出版文化を取り上げるゲストカントリーの企画では、アジアをテーマに中国、韓国、シンガポール、台湾の4ブースが設置されており、それぞれに個性豊かで各国のアート文化の勢いを感じることができる写真集やイラスト集やリトルプレスを展開。
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また、資生堂の企業文化誌「花椿」の80周年を記念するブースやドイツの出版社Steidl社が創立したアワード『Steidl Book Award Asia』によるブース、作家陣によるトークセッションのブースなど例年にも増して盛りだくさんの内容となっていました。
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今回の取材で訪れた6日(金)は、平日でありながらも会場に詰めかける人の数は後を絶たず、エレベーター前には行列ができていたほど。客層も幅広く、20代〜30代とおぼしき人を中心としながらも、学生のような若年層そして海外からのお客さんの姿も目立ち、ブースに立つ作家本人たちとの交流を思い思いに楽しむ姿が印象的でした。そのなかから、気になったブースを5つ紹介します。
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11人の写真家が捉える今の東京ストリート:『VoidTokyo』
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国際色豊かなフロアで異彩を放っていたのが『VoidTokyo』のブース。『VoidTokyo』とは、複数の写真家によって成り立つグループ。
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2020年のオリンピック開催に向けて、刻一刻と変化していく国際都市である東京をストリートフォトグラフィー達が撮り続けた作品。写真家達の作品から感じることは、簡単な表現には収まらない、東京の深部をえぐり出しているようなもの ばかり。
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街に息づく時代の空気感を写真に捉えるというストリート写真の存在感を感じさせる、『VoidTokyo』。発起人の鈴木達朗さんを中心に東京を克明に捉えようとする11人の作家たちの意志を垣間見ることができるZINEです。移り変わる東京の点と点が結びついたとき、この作品はどのような解釈をすることができるのでしょうか。2017年時点で2冊発売されています。
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VoidTokyo
URL:http://voidtokyo.media/
ネットを賑わすインフルエンサーを取り扱ったZINE集:『#イットガーリー』
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柔らかい写真のトーンが目を引いたのは『#イットガーリー』というブース。『#イットガーリー』とは、SNS上のインフルエンサー個人にフォーカスをあて、一冊のZINEにまとめるコンセプトフォトシリーズ。これまでに、フォトグラファー梅澤勉&デザイナー大原大次郎によって、6つのZINEシリーズを展開してきました。
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今や当たり前に使われるようになった「インフルエンサー」という言葉。個人がSNSを通じて強い影響力を持つ時代に、メディアに出演せずとも自分たちの発信の場を通じて、東京のカルチャーを賑わしているインフルエンサーの様子をまとめたZINEを展開しています。
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このZINEの企画を手掛ける伊勢田世山さん曰く、「タイトルは90年代のガーリーフォトブームからとった造語」だそう。例えばピンク色の表紙の第3号は、原宿のカリスマショップ店員・むゆあをフィーチャー。時代の流れを上手く捉える手腕と、どこか懐かしくも感じる作品のギャップが印象に残る作品となっています。
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#イットガーリー
URL:https://itgirlie.theshop.jp/
地方のリアルはココにあり!? 地方の「おじい」と「おばあ」を捉えた写真集:『鶴と亀』
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おしゃれなブースが並ぶ中で一際目を引いたのが、床屋と思しき場所でパーマを当てるおばあちゃんの写真。ここは『鶴と亀』のブース。『鶴と亀』とは、長野県奥信濃で生きるイケてるおじいちゃんやおばあちゃんを、スタイリッシュに発信するフリーペーパー。
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おじいちゃんとおばあちゃんのリアルな生活と生き様を、長野県で活動する20代の兄弟2人がヒップホップ的な解釈で編集し、過去に4冊のフリーペーパーを発行。そして2017年9月18日(敬老の日)に初の書籍化として『鶴と亀 禄』販売されました。
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いわゆるIターンやUターン紙にある地方創生的視点ではなく、20代の若者が自分たちのルーツである奥信州という場所とそこで生き抜いたおじいちゃんとおばあちゃんたちに焦点を当て、自分たちの目線でみるという新しさ。飽和した街にあるそれっぽい表現ではなく、自分たちのルーツにある魅力を伝えようとする試みはほかの雑誌とは比較にならない魅力を放っています。
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ブースに座っていた『鶴と亀 禄』のアートディレクター兼デザイナーを務める中屋辰平さん曰く、「普段のフリーペーパーは約10000部配布され、すぐに捌けるんです」とのこと。これまでのアーカイブをまとめた『鶴と亀 禄』では、女優の“のん”と魚屋のおじさん、ロックバンドYogee New Wavesの角舘健悟と親戚のおばあちゃん、ラッパーの田我流と山梨県のおばあちゃんの対談企画を織り込んでおり、質・量・インパクトともにボリューム満点の内容となっています。
第一線で活躍するイラストレーター・絵本作家の展示ブース:『Kentaro Okawara & OKATAOKA』
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多くの人達の注目を集めていたのは、雑誌や書籍を中心に活動するイラストレーターを始めバンド『水中図鑑』のメンバーとしても活動するオカタオカさんと、絵画やプロダクトの制作を中心に活動するアーティスト・大河原健太郎さん2人のブース。
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オカタオカさんはこれまでの作品群とともに今年発表した作品『SEA AND HIM』という名のイラスト集を展開。今回の作品は、「お父さんの写真などをモチーフに描いた」という作品はどこかセンチメンタルな空気が漂います。
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対する、大河内さんは今、『ももたろう』や『さるかにがっせん』などの作品群を手がける絵本作家としても活躍。物語も現代的な口調に書き換えられ、ユーモアのあるイラストが添えられ、新たな解釈で再提案しています。
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Kentaro Okawara & OKATAOKA
URL:http://momonga-pyonpyon-magazine.blogspot.jp/
次世代を担う若手作家たちの展示も多数あり:『Mt.Sand』
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著名な作家や出版社などと同列に次世代の作家が出店しているのがTABFの醍醐味の一つ。最後に立ち寄った、ポップなイラストとデザインが目についたこちらは『Mt.sand』という名義で出展する、1994年生まれの山越真衣と高砂結衣の現役芸大生によるユニットです。
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タバコサイズのZINEや数字の0と英数字のOのカリグラフィーをモチーフにしたZINE、自分達のユニットをモチーフにした砂漠(女性の乳房にもみえる)ポスターなど、展示物の随所に遊び心が満載。
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さらに、サコッシュや来年のカレンダーなどかわいらしいグッズがたくさん揃うなど、今後の活躍に期待したくなる印象的なブースでした。
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Mt.Sand
URL:https://myamakoshi.tumblr.com/
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