日本と台湾の絆が生んだ、マーケットイベント『島作』レポート

2017年9月に3日間にわたり台北で行われたマーケットイベント『島作』。話を聞くと、このイベントは、愛知県で毎年開催される人気の野外イベント『森、道、市場』がきっかけで生まれたのだとか。出店者、来場者共に日台双方の人々でにぎわった『島作』のレポートをお届けします。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

3日間で18,000人を集客。『島作』とは?

レトロなレンガ造りの建物の松山文創園区で9月15日から3日間にわたり開催された『島作』。台湾から21店舗、日本から17店舗の計38店舗が集結し、3日間で合計1万8千人が来場を記録しました。

来場者の多くは普段からよくマーケットイベントに遊びに行く人が多いようで、ぬくもりを感じる特別なものを買い揃える、感度の高い台湾人のお客さんが口をそろえて「『島作』は面白い!」と話していたのが印象的でした。

そもそもこの『島作』が生まれたきっかけは、愛知県で毎年開催される人気の野外イベント『森、道、市場』だったのだとか。2017年の『森、道、市場』では「台湾日和」というブースに台湾から9つ、日本から4つ出店がありました。今回、『島作』の主催者である台中の雑貨店『實心裡 生活什物店』のオーナー・華さんも、この時台湾から初めて日本のイベントに参加したのだそうです。

そこで華さんは「日本には、こんなにコンセプトがはっきりとして、どの出店者も参加者を満足する情熱に溢れたイベントがあるんだ」と感動したのだとか。

台湾に戻った華さんは、「台北で『森、道、市場』のようなイベントをやろう」と、動き始めました。ちなみに華さんは台中市在住。距離のハンデキャップがありながらも、華さんの熱い想いを感じた多くの台北のクリエイターやショップのオーナーたちが、一緒に台北での開催準備を手伝ってくれたそうです。

実は、準備期間は3ヶ月間しかなかったんです。大きなイベントを開催したことがない私が今日の日を迎えられたのも、多くの人が手伝ってくれたから。この会場が借りられることがわかった後は、無我夢中で走り抜けましたね。みんなが『島作』を作ってくれた。出店者とお客さん、みんなが一緒に作り上げるというかたちを創れたことが一番嬉しいです」と華さんは言います。

『島作』が他の台湾で開催するイベントと何が違うのかを伺ってみると「台湾では、今マーケットイベントが流行っていますが、結局イベントに出店している店舗っていつもだいたい同じだったりします。だから『島作』では他のイベントやフェスで見たことがない顔ぶれにしたかった。今回は私が全ての店舗を招待したんですが、全ての出店者が高品質で個性がある人たちが集まったと思っています」と。

今回、日本の出店者のほとんどは台湾での出店は初めて。台湾の出店者に聞いても「普段は店外で活動をすることはないけれど、華さんが誘ってくれたから」という声が多かったのも印象的でした。

台湾人はみんな、好奇心ビンビン!?

長野県から『島作』に参加したデザインスタジオ『山鳩舎』。『山鳩舎』のイラストレーターであるみやぎちかさんは、台湾で何度か個展を開かれていたそうですが、イベントでの参加は今回が初めて。「『森、道、市場』で同じ台湾日和ブースに出店したのがきっかけで、華さんが台湾に帰った後、お誘いがあったんです。実は『山鳩舎』としては、日本以外の場所でブースを出すのは初めて。でも、あの時のメンバーでイベントができたら、絶対に楽しいだろうなと思って参加を決めました」と、みやぎちかさんは言います。

次にお話を伺ったのは広島・尾道のチョコレート工場『USHIO CHOCOLATL(ウシオチョコラトル)』の栗本さん。チョコレートファンの間ではすでに有名なカカオ豆の仕入れから製造、販売までを手がける『USHIO CHOCOLATL』が台湾初出店について尋ねてみると、「初の海外出店! 嬉しいのとワクワクとドキドキが混じった気分。台湾の人にもカカオ豆ごとに風味が異なるということを伝えたいし、僕達のチョコレートをぜひ楽しんで欲しいですね」と栗本さん。

また栗本さんを驚かせたのは、平日にも関わらず多くのオシャレな若者が遊びに来ていること。「台湾人は、好奇心がビンビンで人とコミュニケートするのが本当に好きなんだなと思いましたね。実は台湾はカカオ豆の産地でもあるんです。いつの日か台湾でも『USHIO CHOCOLATL』の店舗をオープンして、台湾のカカオ豆でできたチョコレートを提供できたらいいなって改めて思いました」とのこと。

会場内でも、苔がむした緑あふれる空間が目を引いた台北の人気セレクトショップ『日常生活 a day cafe』のブース。お店の人気商品アイスコーヒーとジャムを求めるお客さんで、終日とても賑わっていました。

ほとんど店外でのイベントには参加したことがなかったけれど、華さんの熱意に心動かされて参加を決めたんです。華さんは台中にいるから、台北での集客やいろんな雑務は、台北に住んでいる僕らが頑張らなきゃって」と、オーナーのオヴェンさん。

こんなに全ての出店者の質が高くて、あったかいムードを持っているイベントは実は台湾では本当に少ない。華さんからイベントのコンセプトを聞き、絶対『島作』を成功させたいという気持ちが生まれたし、イベントの準備が進むに連れて、協力者がどんどん増えたのも嬉しかった。今日、お客さんがみんな楽しそうにブースを巡る姿を見て達成感を感じているよ」と語るオヴェンさんの顔からは、インタビューの間ずっと満面の笑みが溢れていました。

『島作』とは、一体何だったのか?

日本で行われた『森、道、市場』で生まれた日本人と台湾人の強い絆が、海を渡って台湾にたどり着き、そこで生まれたイベント『島作』。会場では日台のアーティストやアパレルブランド、アクセサリーショップ、本屋、セレクトショップそして飲食店と、ジャンルを超えた本当に良質なものに出会える空間となっていました。

緑あふれる会場の中をゆっくりと、出店者と話しながらめぐる来場者たち。確かに日本でも台湾でも見たことがない熱を感じる空間であったことは間違いなかったでしょう。

取材中に語ってくれた華さんの本音が胸に響きました。 正直に言うと台湾の工芸・デザインシーンはまだまだ発展途中。でも今、私たちはみんなの生活を良くしていきたいって、一生懸命頑張っている。だからこの時代の私たちの努力を見て欲しい」。

「良いものを届けたい」この純粋な気持ちがこんなにも多くの人の心を動かしたという事実。たくさんの来場者が第2回目の開催を待ちわびつつ、今後も日本のお店と台湾のお店が海を超えて、『島作』のように共に創り上げるイベントが増えていくことを期待したいです。



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