コラム

欅坂46・平手友梨奈の不在と存在。言語化を拒む「平手らしさ」の輪郭

欅坂46・平手友梨奈の不在と存在。言語化を拒む「平手らしさ」の輪郭

原友昭
編集:佐伯享介

平手友梨奈がいない

1月31日と2月1日に行なわれる予定だった欅坂46にとって初の単独日本武道館公演は、これまでにリリースされた6枚のシングル全てのタイトル曲でセンターを務めてきたグループ内で最年少の平手友梨奈が上腕三頭筋損傷で全治1か月の怪我と診断されたことを受けて、欅坂46の妹分的なグループ「けやき坂46(ひらがなけやき)」の公演に振り替えられた。その代替も兼ねた公演として、“サイレントマジョリティー”でのデビューから2周年を記念するライブ『2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE』が4月6日から3日間にわたって武蔵野の森総合スポーツプラザで行なわれたが、そこに平手と、欅坂46の「クール」な側面を担ってきたと言える志田愛佳の姿はなかった。

平手らしさの輪郭。「そうなってしまったので」

平手についてはアニバーサリーライブの開催発表から数日後の3月9日に「スケジュールの都合により」、志田については初日の開場数時間前に「体調不良により」とそれぞれ欠席理由がアナウンスされ、それについて平手は自身がパーソナリティーを務めるTOKYO FMのラジオ番組『GIRLS LOCKS!』の3月19日放送回で「いろいろ悩んだ結果、そうなってしまったので、本当にすいません」と述べている。この「いろいろ悩んだ結果」が後に判明することになる映画出演発表の際に語った「最初はどうしようかすごく悩みました」と直接的な関係があるのかどうか確かなことはわからないが、「そうなりましたので」ではなく「そうなってしまったので」というところに平手らしさがあるような気もする。

コツメカワウソやフクロモモンガ、ハリネズミと戯れる。ラジオでは「クソガキ」な側面も

欅坂46の冠番組『欅って、書けない?』や、握手会には姿を見せないが、毎月第3週に登場する『GIRLS LOCKS!』では平手の「クソガキ」な側面や、穏やかな話し声、笑い声、『ガラスを割れ!』の特典映像『欅坂46 平手友梨奈 <自撮りTV>』では、ギプスをした平手がコツメカワウソやフクロモモンガ、ハリネズミと戯れてはしゃぐ様子や、今後欅坂46でやってみたいことを語る姿が確認できるだけに、表立ってグループとしての活動をしていない状態は、それが長く続けば続くほど、“エキセントリック”で「あれってああだって聞いたよ ホントはこうらしいって聞いたよ 推測だらけの伝言ゲーム 元のネタはどこにある?」「肯定も否定も嘘も 都合いいようにされるだけ」と歌われるように「差出人のない噂の類い 確証ないほど拡散する」ことに拍車をかける。

平手不在のアニバーサリーライブ。そして欅坂46の新たな局面

平手と志田が不在のまま迎えた欅坂46の2歳の生誕祭は、平手に代わって今泉佑唯と小林由依をダブルセンターに据え、19人全員が平手を象徴する赤のMA-1に身を包んで登場した“ガラスを割れ!”で幕を開けた。平手の代わりにセンターを担ったメンバーはそれぞれの仕方で、平手がこれまで受けてきたであろう計り知れない重圧を、そして平手の代理である限りにおいて必然的に平手との比較を余儀なくされるという重圧を引き受けながらパフォーマンスを全うしたことは、“二人セゾン”で可憐なソロダンスを披露して会場から歓声を沸き起こした原田葵がMCで流した涙、その涙が次々とメンバーに(そしておそらく会場にも)伝染したことが証明している。“不協和音”でセンターを務めたキャプテン・菅井友香の会場全体を物理的にも精神的にも震わせた「僕は嫌だ」は欅坂46の新たな局面を予感させ、MCで菅井が語った「3年目を迎えましたが、今までの私たちとは違います。私たちを信じてください!」という言葉に説得力を与えた。

不在が育む存在の強度。「止めようたって止められない」

欅坂46 赤いMA-1を着用した平手友梨奈(中央)
欅坂46 赤いMA-1を着用した平手友梨奈(中央)

“ガラスを割れ!”で全員が平手を思わせる赤いMA-1を纏って登場したことは、平手の不在と同時に平手の存在を強調する。なぜなら誰かがそこにいないことがわかった瞬間に、そこにいない誰かの存在が否が応でも頭のなかに呼び起こされるからである。同じく平手と志田が不在のなか“ガラスを割れ!”を披露した3月9日放送の『ミュージックステーション』では、冒頭で赤のMA-1がステージ上に設置されたフェンスに掛けられ、ダブルセンターの今泉と小林が中盤で黒のMA-1を赤に裏返して登場すると同時に先ほどの赤いMA-1が舞台上から消えていた、という「MステSP」演出がなされたが、平手不在を強調すればするほど平手という存在の強度は、“エキセントリック”で「本人も知らない僕が出来上がって」と歌われるように増してゆく。

『響 -HIBIKI-』キャスト ©2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 ©柳本光晴/小学館
『響 -HIBIKI-』キャスト ©2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 ©柳本光晴/小学館

アニバーサリーライブからおよそ1週間後の4月16日に、平手主演の映画『響 -HIBIKI-』が9月に公開されるという発表があり、それについて平手は「このオファーを頂いたときに、最初はどうしようかすごく悩みました。でも、原作を読んで、この物語の主人公、鮎喰響という女の子にひかれてしまったのと、彼女の生き様を届けたいなと思ったので、やってみようと思いました」と語っている。「ひかれた」ではなく「ひかれてしまった」というところに、本人の与り知らぬところで「平手像」が肥大してゆくことを「止めようたって止められない」(“エキセントリック”)、そういう星の下に生まれてしまったことが、つまり「スター性」を帯びてしまった(?)ことが物語られているような気がする。「もう、そういうのうんざりなんだよ」(“エキセントリック”)。

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