特集 PR

『Jazz World Beat』が示す、変化するワールドミュージック事情

『Jazz World Beat』が示す、変化するワールドミュージック事情

Jazz World Beat 2018
テキスト
栗本斉
編集:久野剛士、矢島由佳子

折衷的な動きが活発。ceroらが示したワールドミュージック再評価の兆し

ワールドミュージックが再評価されている。いや、この表現はちょっと誤解を生むかもしれない。ようやくポップミュージックと同列になったと言ったほうがいいだろう。土着的なリズムやエキゾチックなメロディーを取り入れることは、少し前までイロモノ的な感覚があった。

しかし先日、新作アルバム『POLY LIFE MULTI SOUL』を発表したceroは、アフリカやブラジルのリズムを「借り物」ではなく、自分たちの音楽へと自然に消化しているのが印象的だった。もちろん、これまでにもワールドミュージックをロックやポップスに取り入れるアーティストは多数存在したが、ceroのように日本人ならではの感性で血肉化している例は稀だったし、J-POPの先鋭としてそれをやりきったことは、くるりと並んで非常に大きな意味があると考えている(参考記事:ceroの傑作『POLY LIFE MULTI SOUL』を、5人のライターが語る )。

cero『POLY LIFE MULTI SOUL』収録の“魚の骨 鳥の羽根”

海外では、このようなミクスチャーな動きはそれほど珍しいことではない。ロックやポップスはもちろん、ジャズやヒップホップ、ダンスミュージックなどを含めたさまざまなジャンルで定番になりつつある。特にジャズシーンは顕著で、アルメニアのティグラン・ハマシアン、インドネシアのジョーイ・アレキサンダー、キューバのアクセル・トスカなど、近年活躍するジャズピアニストは欧米以外からも多数輩出されており、いずれもジャズと自国の音楽を絶妙にブレンドすることに成功している。ジャズボーカリストにしても、キューバのダイメ・アロセナやマレーシアのユナなどが、軽々と世界デビューを果たしているのも目立つ。

アッシャーとのデュエット曲“Crush”も話題となった、ユナのアルバム『Chapters』

また、ロバート・グラスパーはナイジェリア発アフロビートの騎手シェウン・クティをプロデュースして話題になったばかりだし、大作を続々と発表しているサックス奏者のカマシ・ワシントンの作品にはアフリカ大陸がモチーフとして欠かせない。そして、彼らジャズミュージシャンを積極的に起用するケンドリック・ラマーら、ヒップホップアーティストによるアフリカ回帰は言わずもがなだ。

ロバート・グラスパーがプロデュースした、シェウン・クティの『Black Times』

ストリーミングサービスが崩壊させた音楽シーンの「英語圏至上主義」

そもそも、「2017年に全米で最もヒットしたシングル曲」と言われるルイス・フォンシ(プエルトリコ出身のラテンポップミュージシャン)の“Despacito”はスペイン語詞だった。加えて、先日は韓国のBTS(防弾少年団)のアルバムが全米1位になって大きな話題となった。

2017年にスマッシュヒットした、ルイス・フォンシの“Despacito”

これらのことからも、欧米の「英語圏至上主義」の音楽シーンの中枢にあった言葉や国境の壁は、ほぼ崩壊しつつあると言えるし、新しい音楽が非英語圏から生まれてくる事例も多くなった。それも、センセーショナルなことではなく、ごく自然に登場しているように見えるのだ。

そんな仰々しい話を持ち出すまでもなく、ストリーミングサービスを通じて世界中の音楽にアクセスできるようになり、それまでは「マニアック」と言われたジャンルも気軽に聴けるようになったのは、誰もが感じているはずだ。

ひと昔前までは、ワールドミュージックの音源は専門店で入手するのが一般的だったことを思うと、音楽環境自体が大きく変化しているわけだから当然である。わざわざ「ワールドミュージック」と呼ぶことすら、いまはナンセンスなのかもしれない。だからこそワールドミュージックと呼ばれるアーティストのライブも、これまでのようなマニアだけでなく、ニュートラルに音楽を感じられるリスナーが足を運ぶものに変化するだろう。

Page 1
  • 1
  • 2
次へ

イベント情報

『Jazz World Beat 2018』
『Jazz World Beat 2018』

2018年7月7日(土)
会場:東京都 めぐろパーシモンホール
[大ホール]
チャボロ・シュミット・トリオ
浜田真理子
RS5pb
※17:00開演

[小ホール]
仲野麻紀withヤン・ピタール
岩川光トリオ
Tokyo Django Collective feat.北床宗太郎
喜多直毅&黒田京子デュオ
MC:
中川ヨウ
※13:30開演

料金:
大ホールのみ:前売 全席指定6,500円
小ホールのみ:前売 全席指定4,500円
1日通し券:大ホールS席+小ホール9,000円
※未就学児入場不可

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

LUMINE ART FAIR - My First collection / Art of New York City

10月12日、13日にルミネ新宿で開催する『LUMINE ART FAIR -My First Collection』のために制作された動画。現地アーティスト2名の言葉と、リアルな空気感とともにNYのアートシーンを紹介している。「NY、かっこいい!」という気持ちがムクムク膨れ上がってくるはずだし、アートに触れるきっかけはそれくらいがちょうどいいと思う。(石澤)

  1. ドラマ『まだ結婚できない男』。新キャスト迎えて13年後を描く 1

    ドラマ『まだ結婚できない男』。新キャスト迎えて13年後を描く

  2. 中山美穂がダンサーに恋 松尾スズキ監督・脚本・主演『108』本編映像公開 2

    中山美穂がダンサーに恋 松尾スズキ監督・脚本・主演『108』本編映像公開

  3. セクゾ中島健人&菊池風磨が「ガルボ」のキニナル食感を70種の表情で表現 3

    セクゾ中島健人&菊池風磨が「ガルボ」のキニナル食感を70種の表情で表現

  4. 『全感覚祭』が10月13日に渋谷複数会場で急遽開催、千葉会場中止を受け 4

    『全感覚祭』が10月13日に渋谷複数会場で急遽開催、千葉会場中止を受け

  5. 宮藤官九郎の新作舞台『もうがまんできない』に阿部サダヲ、松尾スズキら 5

    宮藤官九郎の新作舞台『もうがまんできない』に阿部サダヲ、松尾スズキら

  6. フレデリックの表現がユニークな理由 双子の関係と想像力に秘密が 6

    フレデリックの表現がユニークな理由 双子の関係と想像力に秘密が

  7. 『水曜どうでしょう』漫画化、『週刊少年チャンピオン』で連載 7

    『水曜どうでしょう』漫画化、『週刊少年チャンピオン』で連載

  8. 宮沢氷魚と藤原季節が額をくっつける、今泉力哉『his』ポスター&場面写真 8

    宮沢氷魚と藤原季節が額をくっつける、今泉力哉『his』ポスター&場面写真

  9. 細野晴臣『NO SMOKING』特別映像公開 坂本龍一、高橋幸宏、星野源ら登場 9

    細野晴臣『NO SMOKING』特別映像公開 坂本龍一、高橋幸宏、星野源ら登場

  10. 小沢健二の新アルバム『So kakkoii 宇宙』11月発表、新曲配信&ライブも 10

    小沢健二の新アルバム『So kakkoii 宇宙』11月発表、新曲配信&ライブも