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変化を続けるノラ・ジョーンズ アメリカ音楽を再編する才能に迫る

変化を続けるノラ・ジョーンズ アメリカ音楽を再編する才能に迫る

ノラ・ジョーンズ『Begin Again』
テキスト
原雅明
編集、構成、リードテキスト:久野剛士、川浦慧(CINRA.NET編集部)

型にはまらず、新しい領域に自分を広げていく。それは、優れたアーティストに共通する特徴のひとつだ。2002年にBlue Noteからリリースしたデビューアルバム『ノラ・ジョーンズ』で『グラミー賞』を獲得したノラ・ジョーンズもまた、その1人といえる。読者の中には、ジャズシンガーとして登場したデビュー時のノラ・ジョーンズからイメージが更新されていない人もいるかもしれない。しかし、彼女は作品ごとに新しい挑戦で「ジャズ」の音楽性を更新し、「ジャズ」とも「ポップス」とも括れない音楽を作ってきた。

「ジャズ」という伝統的なアメリカの音楽から出発し、作品ごとにジャンルに新しい解釈を加え、スターに上り詰めていくさまは、「カントリー」というジャンルでそれを行うテイラー・スウィフトとも重なって見える。そんな彼女の新作が2019年4月12日にリリースされた。今作で、ノラはどんな新しい挑戦を行ったのだろうか。

ジャズにもポップスにも括れない音楽。ノラ・ジョーンズは自身のイメージを更新する

ノラの新作はWILCOのジェフ・トゥイーディー、ダヴマンことトーマス・バートレットとの制作が話題となっている。「オルタナカントリー」とも呼ばれたUncle TupeloからWILCOへと至ったシカゴ出身のトゥイーディーと、アメリカ生まれながらロンドンでピアノを学び、キーボード奏者、プロデューサーとして多岐に渡る活躍をし、スフィアン・スティーヴンスらと深く関わってきたダヴマンという2人が、このアルバムでつながるというのは、ノラだからこそ実現できたことだ。そのことは、彼女の音楽がどういう成り立ちにあるのかを象徴してもいる。

スフィアン・スティーヴンス“Futile Devices (Doveman Remix)”

若いジャズミュージシャンに渡される、なにをやってもいい「許可証」

そもそも、なぜ彼女はデビュー以来、Blue Noteからリリースを続けているのだろうか? このことは、彼女の「新しい音楽に挑戦する姿勢」と無関係ではない。2012年にドン・ウォズが社長に就任して以来、Blue Noteは精力的にレーベルカラーを刷新するようなリリースを重ねてきた。しかしノラの一連の作品は、それをはるかに先駆けるリリースだったといえる。そして、それは至極当然の流れでもあったのだ。

『Begin Again』収録のノラ・ジョーンズ“Just A Little Bit”

「ジャズから出てきた若い世代は、ジャズをやったらあとは何をやってもいいって許可証をもらったようなものだと思う。クリスチャン・スコットやロバート・グラスパー、エスペランサ・スポルディングなんかもそうだよね」。昨年インタビューしたシンガーのホセ・ジェイムズは、現在の自分の立ち位置をそう説明した。彼もグラスパーもBlue Noteからリリースを重ねてきた。そして、ともに1978年の生まれで(ノラもほぼ同世代である)、ジャズとBlue Noteの長い歴史の中では「若い世代」といわれる。「許可証」とは誰かが授けるもので、彼らはそのことを意識せざるを得ない世代だった。それは一概に「不自由なこと」だとはいい切れない。

少なくとも彼らは、「ジャズの歴史を学ぶこと」と、「ヒップホップやR&Bと繋がる現行のジャズを演奏すること」を両立してみせた。これは、現在のBlue Noteのレーベルカラーを体現するスタンスそのものであり、広義のブラックミュージックとしてジャズが影響力を持つことにもつながっている。

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リリース情報

『Begin Again』
ノラ・ジョーンズ
『Begin Again』国内盤(CD)

2019年4月12日(金)発売
価格:2,268円(税込)
UCCQ-1097

1. マイ・ハート・イズ・フル
2. ビギン・アゲイン
3. イット・ワズ・ユー
4. ア・ソング・ウィズ・ノー・ネーム
5. アッ・オゥ
6. ウインタータイム
7. ジャスト・ア・リトル・ビット

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