コラム

映画界に進出したラッパー百科。『バッドボーイズ』復活に寄せて

映画界に進出したラッパー百科。『バッドボーイズ』復活に寄せて

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杏レラト
編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

祝『バッドボーイズ』シリーズ復活。俳優も務めるラッパー百科

「アンソニー・アンダーソンの息子が、『ウィル・スミスがラッパーだって本当?』っていっていたらしい」。2018年にラップ専門メディア『ラップ・レイダー(Rap Radar)』のインタビュー中に、ウィル・スミスが語った。アンソニー・アンダーソンは、『ハッスル&フロウ』(クレイグ・ブリュワー監督 / 2005年)などで知られる俳優で、彼の息子の生年月日はわからないが、現在大学生なので20歳そこそこだろう。そう、若い世代は、ウィル・スミスがラッパーだったことを知らない人もいる。『インデペンデンス・デイ』(ローランド・エメリッヒ監督 / 1996年)や『メン・イン・ブラック』(バリー・ソネンフェルド監督 / 1997年)とブロックバスタースターへと成長し、『ALI アリ』(マイケル・マン / 2001年)ではモハメド・アリを演じて「アカデミー主演男優賞」にノミネートされるなど、人気・実力ともに大スターへと成長していったウィル・スミス。そんなウィル・スミスは、DJ・ジャジー・ジェフ&ザ・フレッシュ・プリンスというラップデュオで、「フレッシュ・プリンス」を名乗りラッパーとしてデビューしている。『ラップ・レイダー』でのインタビューで、ラップについて語るウィル・スミスは目をキラキラさせ、彼の根本にあるラップ愛の深さ、そして同時に、彼自身のラッパーとしての誇りも感じられるものだった。

そして今回、1995年に大ヒットした『バッドボーイズ』(マイケル・ベイ監督)が、2作目『バッドボーイズ 2バッド』(2003)から17年の月日を経て、2020年に再びウィル・スミスとマーティン・ローレンスの「バッドボーイズ」コンビがスクリーンに戻ってくる! 日本公開を記念して、ウィル・スミスのようなラッパー兼俳優の活躍を追ってみよう。ウィル・スミスの相棒を演じているマーティン・ローレンスはラッパーではないものの、ラップ業界とは切っても切れない関係もある。ラッパー兼俳優の歴史を紐解きながら、ウィル・スミスとマーティン・ローレンス、そして『バッドボーイズ』の新たな魅力を伝えていけたらと思う。

1. アイス・Tとアイス・キューブ

アイス・T『Rhyme Pays』(1987年)を聴く(Apple Musicはこちら

1973年、ニューヨーク・ブロンクスのアパートの一室で、DJクール・ハークがハウスパーティーを開いたことが、ヒップホップの始まりだといわれている。ラッパーが本格的にスクリーンに登場するのは、丁度10年経て完成された『ワイルド・スタイル』(チャーリー・エーハン監督 / 1983年)である。ビジー・ビーやコールド・クラッシュ・ブラザーズなどが出演している半ドキュメンタリー調の作品だが、彼らをラッパー兼俳優と呼ぶのは少し違和感がある。本格的にラッパー兼俳優と呼べるのは、アイス・Tやアイス・キューブだ。『ワイルド・スタイル』の成功によって、ラップやヒップホップに関連する作品が量産されていた。アイス・Tは、LAのブレイクダンスを描いた青春映画『ブレイクダンス』(1984年)にて、クラブでラップするチョイ役でスクリーンデビューを果たした。続いて、マリオ・ヴァン・ピーブルズ(アメリカの映画監督、俳優)がラッパーを演じる『ダウンタウン・ウォーズ』(ジョエル・シルバーグ / 1985年)でも、本名の本人役で出演している。そしてこの映画でマリオ・ヴァン・ピーブルズに出会ったことが、彼の俳優としての運命を大きく変える。マリオ・ヴァン・ピーブルズは、監督としてニューヨークの麻薬汚染を描いた『ニュー・ジャック・シティ』(1991年)を完成させる。この映画で、麻薬密売でニューヨークの裏首領となったニノ・ブラウン(ウェズリー・スナイプス)を追いつめていく現場の刑事役をアイス・Tが演じ、大きな反響と好評を得た。

アイス・キューブ『AmeriKKKa's Most Wanted』(1990年)を聴く(Apple Musicはこちら

同じ1991年、センセーショナルなスクリーンデビューを飾ったのがアイス・キューブである。ロサンゼルスのサウスセントラルが舞台の『ボーイズ'ン・ザ・フッド』(ジョン・シングルトン監督 / 1991年)にて、主人公の仲間のリーダー格となるドウボーイを演じた。ジョン・シングルトン監督は、大学時代にN.W.Aの曲を聴きながら、『ボーイズ'ン・ザ・フッド』の脚本を書き上げたこともあり、ドウボーイはアイス・キューブの為に用意された当て書きのようなキャラクターで、オーディションを受けさせた。しかし、演技のキャリアを全く考えていなかったアイス・キューブは、そのオーディションを投げやりに受けたという。そこでジョン・シングルトンは、3回目となるオーディション時に真剣に怒りながらも、アイス・キューブを切望していることを熱く語り、俳優アイス・キューブを誕生させた。

そんなアイス・Tとアイス・キューブのWアイスが共演しているのが、『トレスパス』(1992年)だ。本作は『ウォリアーズ』(1979年)のウォルター・ヒル監督作品で、2人はセントルイスのギャングのリーダーと弟分を演じ、よそから来て金品を見つけようとしている男たちと争奪戦を繰り広げている。2人のその後の活躍は説明不要だが、「フッド・クラシック」ともいわれるほどカルチャーに影響を及ぼした『friday』(F・ゲイリー・グレイ / 1995年)では、アイス・キューブは脚本も担当し、マルチな才能を発揮している。

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作品情報

『バッドボーイズ フォー・ライフ』

2020年1月31日(金)全国ロードショー
監督:アディル・エル・アルビ、ビラル・ファラー
出演:ウィル・スミス
マーティン・ローレンス

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