コラム

『映像研には手を出すな!』原作の初期衝動と「アニメ化」の妙味

『映像研には手を出すな!』原作の初期衝動と「アニメ化」の妙味

テキスト
小野寺系
編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)

「最強の世界」をアニメで表現。アニメ制作への初期衝動を描く『映像研には手を出すな!』

女子高校生3人がアニメーション制作に挑むテレビアニメ『映像研には手を出すな!』が1月からNHKで放映されている。

アニメ制作を描くアニメといえば、日本のアニメスタジオによく見られる内情を、描ける範囲で取り扱ったテレビアニメ『SHIROBAKO』があるが、本作が描くのは、アニメーションを作ることへの、よりプリミティブ(初期的)な感情だ。絵を動かすこと、作品世界を表現することなど、よりアニメ本来の楽しさを題材としているところが特徴となっている。

主人公・浅草みどりは、自分の妄想する「最強の世界」をアニメ作品で表現しようとする高校1年生。彼女は、得意の弁舌と合理的思考によってプロデュースや営業活動を担う金森さやか、カリスマ読者モデルでありながらアニメーターとして職人的な仕事を引き受ける水崎ツバメの2人とともに、学校内の部活として「映像研」を立ち上げ、周囲を魅了する作品を生み出していく。

テレビアニメ『映像研には手を出すな!』PV

原作は、独学でアニメーション作りをしていたという、1993年生まれの漫画家・大童澄瞳の、デビュー作であり現在『月刊!スピリッツ』で連載中の同名作品だ。この原作は漫画でアニメーション世界を表現していたが、アニメ版ではそのままアニメーションでアニメの魅力を表現するという趣向になっていて、宮崎駿作品風のファンタジーや、巨大ロボットと怪獣のバトルなどを喜ぶアニメファンが「こういうものがやりたい!」と思わされるような、ディティールに凝ったビジュアルや動きが展開するのが、毎回の見どころとなっている。

アニメ『映像研には手を出すな!』ポスタービジュアル ©2020 大童澄瞳・小学館 / 「映像研」製作委員会
アニメ『映像研には手を出すな!』ポスタービジュアル ©2020 大童澄瞳・小学館 / 「映像研」製作委員会

アマチュアである高校生たちのアニメ作りを、プロのアニメ制作者たちが映像化

浅草みどりがアニメーション制作にのめり込むきっかけとなったのは、宮崎駿監督のテレビアニメ『未来少年コナン』(『映像研には手を出すな!』のアニメ版ではタイトルが改変されている)を見た経験だ。たしかに『未来少年コナン』は、見れば見るほどマニアックなこだわりと、動きの面白さにあふれている名作だ。

本作では、コナンが巨大な爆撃機「ギガント」に乗り移り、銃撃をかいくぐりながら羽根の上をダッシュする場面が登場する。一見シンプルに見えるが、重力や空気抵抗など、複雑な条件を計算に入れながら、さらにそれを面白く強調した見事な動画表現は、オタク的なこだわりの世界を経て、芸術的な価値をも獲得しているように感じられる。それを何かのかたちで「真似してみたい」という気持ちは、『未来少年コナン』を見たことがある人ならば共感できるのではないだろうか。そして、多くの先人が言っているように、「創作は模倣より始まる」のだ。

アニメ『映像研には手を出すな!』 ©2020 大童澄瞳・小学館 / 「映像研」製作委員会
アニメ『映像研には手を出すな!』 ©2020 大童澄瞳・小学館 / 「映像研」製作委員会

とはいえ、アニメーション制作というのは専門的な技術と膨大な作業量を要する仕事だ。アマチュアの高校生が学生生活のうちの一部分である部活動のなかで、一定のクオリティをもって作品を完成させていくというのは、作品内でも言及されているとおり現実的には難しいところがある。

原作者によると、作品の時代設定は2050年であるという。近未来ならば少々のリアリティの欠如は許容されるという部分はあるのかもしれない。『SHIROBAKO』が、プロの現場をプロが描くという説得力を武器にしているのなら、『映像研』はSFの力を借りて、アマチュアの初期衝動のままでプロの領域まで到達したいという、おそらくは原作者の理想を叶える仕組みを作り出したのだといえるのではないか。主人公たちの作るアニメが、懐かしい日本のアニメ作品を模倣しているのも、いかにもアマチュア的な趣味だといえよう。だが、このような世界を、「アニメ化」というプロセスを経て、プロのアニメ制作者たちが手がけるとなると、また意味が変わってくる。

アニメ『映像研には手を出すな!』 ©2020 大童澄瞳・小学館 / 「映像研」製作委員会
アニメ『映像研には手を出すな!』 ©2020 大童澄瞳・小学館 / 「映像研」製作委員会
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番組情報

『映像研には手を出すな!』
『映像研には手を出すな!』

2020年1月5日(日)24:10~NHK総合で放送(関西地方は24:45~)、1月5日(日)26:00~FODで配信
監督・シリーズ構成:湯浅政明
原作:大童澄瞳
キャラクターデザイン:浅野直之
オープニング主題歌:chelmico“Easy Breezy”
エンディング主題歌:神様、僕は気づいてしまった“名前のない青”
音楽:オオルタイチ
アニメーション制作:サイエンスSARU
声の出演:
伊藤沙莉
田村睦心
松岡美里
花守ゆみり
小松未可子
井上和彦

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