コラム

『あつまれ どうぶつの森』コミュニケーションの代替だけでない魅力

『あつまれ どうぶつの森』コミュニケーションの代替だけでない魅力

テキスト
島貫泰介
編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)

(メイン画像:photo: Vantage_DS / Shutterstock.com)

コロナ禍の非日常下で生まれた、ある「日常」

みなさま、コロナ禍いかがおすごしでしょうか? リモートワークでの自宅勤務が日常になった方もいれば、こんな大変なときも変わらず電車に乗って職場に出勤しなければならない方もいらっしゃると思います。非日常下でも生活は続く。それぞれの場所でそれぞれのがんばり方や気晴らし方を見つけないと、気持ちが落ち込んじゃいますよね。ちなみに、以下は筆者のある1日の生活の記録。

起床。郵便ポストをチェックして昨日通販で注文した品物や友人からの手紙が届いていないかチェック。お得な商品や飛行機代にも交換できるマイレージを貯めるためのタスクを確認したら、おもむろに近所の巡回に。住民と話すだけでもマイルは貯まるから、見かけたらすぐに朝の挨拶。お得。白い石をスコップで叩くときは、叩いた反動で体勢がくずれないように後ろに余分な穴を掘っておく。鉄鉱石が出るとちょっと嬉しくて、まれに希少な金鉱石が出るとかなり嬉しい。

この近所は化石が無限に掘れることでも有名で、バッテン印の亀裂は埋まっていることのしるし。スコップで掘り出して、だいたい4つ、運がよければ5つの化石をゲット。この化石は24時間オープンというナイトタイムエコノミーにもしっかり対応した博物館で鑑定してもらえるので、さっそく島の外れに移築した博物館へ。この日は残念ながら新しい化石の発見はならず(未発見のものは展示室に飾られるのだ。誇らしい)。でも、恐竜や古生物の化石は高く売れる。

博物館を離れてふたたび朝の散歩へ。他の島で見つけた果物は高く売れるので、たわわに実った果樹を揺らしてさくらんぼをゲット。ときには斧や石斧で切り倒し、材木をゲットしてみたりもする。自然豊かなこの島は、海や川には魚、野には昆虫がたくさん生きている。なかにはリュウグウノツカイやヒラメなどの深海魚や高級魚、見た目も鮮やかな南洋の蝶もいるので、こまめに魚釣りや網を使った昆虫採集することも忘れずに。

そうこうしているうちに時間は午前8時。開店したばかりの、島にたった一軒の商店に駆け込んで、朝から集めた品々を売りに出す。今日の稼ぎは約4万ベル。なかなかの成果。そうそう、忘れずに株価のチェックもしておこう。だいたい買値の1.5倍になっていたら売りのタイミングだと思ってよし。ときには5倍近く高騰するときもあるので、午前と午後の株価チェックは忘れちゃいけない。さて、このあとは作業途中だった島の土木工事に取り掛かろう。今日は川幅を広げて、橋をかけるための基礎工事から始めようかな……。

お察しのように、もちろんこれはゲームの中の生活の様子。世界規模で大ヒット中の『あつまれ どうぶつの森』では、現実の時間とゲームの時間がリンクして、猫や羊の姿をした住人たちとの島暮らしがゆったりと続いていくのだ。春には花見、夏には花火、秋には紅葉、冬には白銀の雪景色。そんなうつろいゆく四季を愛でながら、自分なりのライフスタイルをつくっていけるのが『あつ森』の魅力だ。

コロナ禍でおなじみとなってしまった、無人の繁華街、誰もがマスク姿で人ごみを避けながら足早に歩き去るのとはまるで違った淡々とした暮らしの時間が、手のひらの上に収まっている。

『あつまれ どうぶつの森』は無人島が舞台。キャッチフレーズは「なにもないから、なんでもできる」

2001年から時代の変化にあわせて進化を続ける『どうぶつの森』シリーズ

『どうぶつの森』シリーズの歴史はけっこう長い。最初の『どうぶつの森』が発売されたのはアメリカで同時多発テロの起きた2001年だから、今年で19年目。人気が爆発したのは任天堂の携帯ゲーム機ニンテンドーDSで発売された2005年の『おいでよ どうぶつの森』からで、2012年発売の『とびだせ どうぶつの森』ではプレイヤーが着られる衣装のバリエーションが増え、衣服やインテリアを自分でデザインできる機能が追加された。現実社会の通信環境の充実もあり、プレイヤー同士がマイデザインを交換しあったり、友人の島に遊びに行きやすくなったりするなど、時代に則した進化が好評を博した。

2012年に発売されたニンテンドー3DS用ゲーム『とびだせ どうぶつの森』

そのあともスマホでの展開などがあったものの、今年3月20日にNintendo Switch用ソフトとして発売された最新作『あつまれ どうぶつの森』は久しぶりの正統な続編で、上記した要素をさらにパワーアップした村づくりができるようになっている。

『あつまれ どうぶつの森』ゲーム内の様子(筆者提供)
『あつまれ どうぶつの森』ゲーム内の様子(筆者提供)

「ごっこ遊び」の自由度を押し広げる、任天堂らしい「遊び」の哲学

特筆すべきは、無人島自体を開発できるようになったことで、地形を変えて山や川自体を作ったりできる。島のいたるところに恐竜の骨格標本や美術品が立ち並ぶアートな村を作ることもできるし、パンキッシュな衣装やアイテムを飾れば『マッドマックス』や『AKIRA』のような世紀末SF感溢れる村も作れる。2011年に発売された『Minecraft』の大ヒット以降、プレイヤーが自由に目的を決めて世界を創造できる、いわゆる「サンドボックス(砂場)」と呼ばれるタイプのゲームジャンルが確立されたが、今回の『あつ森』は、そういったトレンドも引きつけながらシリーズ独自の「ごっこ遊び」の自由度を丁寧に押し広げてみせた。

『あつまれ どうぶつの森』テレビCM。自由にファッションやインテリアを変えて楽しむことができる

できないことはあったとしても、ふつふつと沸き上がった自分の空想を別の方法で置き換えて「工夫」したくなるモチベーションをプレイヤーに誘発させる巧みさは、『どうぶつの森』シリーズに限らない任天堂のまさにお家芸。例えば京都在住の筆者は、鴨川周辺の再現に取り組んでいるさいちゅうで、限られた手数のなかで川の広さや、五条大橋の大きさを表現する試行錯誤がとにかく楽しい。YouTubeでは、世界のプレイヤーが作ったとんでもない村を紹介する動画がたくさんアップされているが、完成度にこだわらずとも「自分なりの◯◯」を作って空想の世界にひたれるのは、たしかに幼い頃に夢中になった砂場遊びやおままごとの感覚に近い。

先日、新しいゲーム開発エンジン「Unreal Engine 5」のデモが発表されたように、世界的なゲーム開発の潮流は現実と見紛うばかりのリアリティの実現に向けた競争が過熱しているが、あくまでも「遊び」の楽しさ・面白さの哲学に軸足を置く任天堂らしさが、この『あつ森』にも凝縮されているのだ。

5月に初公開されたEpic Gamesのゲームエンジン「Unreal Engine 5」のデモ映像

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