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細部の力で魅了するヨルシカの音楽。「演出」と「演技」の妙

細部の力で魅了するヨルシカの音楽。「演出」と「演技」の妙

ヨルシカ『創作』
テキスト
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編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)
2021/01/29

(メイン画像:ヨルシカ“春泥棒”MVより)

YOASOBI、ずとまよと並び「夜好性」リスナーの支持を受ける。ヨルシカならではのユニークさとは?

コンポーザーのn-buna(ナブナ)とボーカルのsuis(スイ)によるユニット・ヨルシカが、新作EP『創作』をリリースした。ボカロ以降の志向をメインストリームに浸透させる一群として、YOASOBI、ずっと真夜中でいいのに。(以下、ずとまよ)らと並んで、強い支持を獲得しているヨルシカ。この3つのバンドのファンたちは自ら「夜好性」を名乗り、SNSで存在感を放っている。そんなヨルシカを特徴づけ、その人気の源になっているのが、サウンドや歌詞からアートワークにいたるまで、メディアを横断しながらつむぐ「物語」だ。とりわけ近作、『だから僕は音楽を辞めた』(2019年)や『盗作』(2020年)は、楽曲をつらぬくさまざまなサブテクストがトータルなアルバムの姿をかたちづくる、まさしく「コンセプトアルバム」だった。

ヨルシカ<br>2017年より活動を開始。コンポーザーとしても活動中の“n-buna”が女性シンガー“suis”を迎えて結成したバンド。n-bunaが生み出す文学的な歌詞とギターを主軸としたサウンド、suisの透明感ある歌声が若い世代を中心に支持されている。最新作3rd Full Album『盗作』は、Billboard Japan総合アルバム・チャート“HOT ALBUMS”初登場1位を記録。
ヨルシカ
2017年より活動を開始。コンポーザーとしても活動中の“n-buna”が女性シンガー“suis”を迎えて結成したバンド。n-bunaが生み出す文学的な歌詞とギターを主軸としたサウンド、suisの透明感ある歌声が若い世代を中心に支持されている。最新作3rd Full Album『盗作』は、Billboard Japan総合アルバム・チャート“HOT ALBUMS”初登場1位を記録。
ヨルシカの3rdフルアルバム『盗作』(2020年)。「音楽の盗作をする男」を主人公とした物語を表現した(Apple Musicはこちら

今回リリースされる『創作』は、EPということもあり、そうした物語を主軸とする諸作とは少し距離をとっている。「春」というゆるやかなテーマのもとまとめられた楽曲たちにこめられた言葉、メロディ、サウンドが際立つ作品だ。まるで、少し皮肉っぽく、不条理で、ユーモラスな掌編が、丁寧に綴られていくかのよう。ガチガチのコンセプトに貫かれていないぶん、いくぶんか力を抜きつつ、ヨルシカの世界に浸ることができる。

それでは、そんなヨルシカの世界のユニークな点、おもしろさはどんなところにあるだろう。本稿では、さまざまな側面からヨルシカの面白さを紐解いていきたい。「夜好性」のリスナーに支持されるYOASOBIやずとまよとの比較を通じて考えていこう。

ヨルシカ『創作』ジャケット
ヨルシカ『創作』ジャケット(特設サイトはこちら

「物語」に対するアプローチ。ヨルシカは「音楽そのもの」で物語を紡ぐ

「夜好性」のなかでも、物語と関係が深いのはYOASOBI。けれども、リスナーには周知のことだろうが、この二組では物語へのアプローチがぜんぜん違う。YOASOBIは、「小説を原作に曲をつくる」というかたちをとる。物語と楽曲が一対一で対応する。対してヨルシカの本領は、先述したように、一枚のアルバムを通じて大きな物語を紡いでいくところにある。一曲一曲は、物語のなかに場所を与えられ、役割をまっとうする。

YOASOBI“夜に駆ける”MV

YOASOBIがある種「テーマソング」や「イメージソング」のような形で物語の世界を広げたり深めたりするとすれば、ヨルシカはサウンドの細かいディテールからアレンジ、メロディ、言葉……と、さまざまな音楽の要素を総動員して、音楽そのもので物語を紡いでいる。それゆえ、ボーカル曲のなかにはさみこまれたインストもまた、何気ない、しかし物語を成立させるのに欠かせないワンショットのように思える。

ヨルシカは、オーガニックなアコースティックのサウンドと、DAW上でエディットしたエレクトロニックな質感とのハイブリッドな手ざわりが極めて印象的なバンドだ。『創作』収録曲で言えば、“風を食む”の手数・音数は少ないながらも充実したサウンドは、ヨルシカのある一面を代表しているように思う。アコースティックギターを中心にさまざまな具体音(楽器や声とは異なる、現実から切り取られたありふれた音)が配置され、楽曲の世界をぐっと身近なものにしてくれる。

ヨルシカ“風を食む”MV。『創作』収録曲

とりわけ、ヨルシカの歌詞は、平易な表現のなかに耳慣れない語彙や飛躍する比喩が飛び出す。「この詩はあと八十字」(『だから僕は音楽を辞めた』収録、“藍二乗”)とか、「この歌の歌詞は380字」(『エルマ』収録、“夕凪、某、花惑い”)みたいに、自己言及的なフレーズが登場してリスナーをどきっとさせることもある。言葉遊びや押韻もしばしばで、あるいは“風を食む”に印象的に用いられている文語調などもふくめ、散文とも詩とも戯曲ともつかない言葉が連なる。

メタな視点をも含みこんだきわめて虚構性の強い歌詞に、それでもなおリスナーを没入させる。あるいは、リスナーのまわりの風景のなかにそうした言葉を自然に溶け込ませるにあたっては、こうしたサウンドが大きな役割を果たしている。

音楽以外の仕掛けにも注意が行きがちだが、細かな質感からアルバムを貫くプロットに至るまで、まず音楽によって語る、ということを丹念に実践している。それがヨルシカのユニークなポイントのひとつだと思う。

ヨルシカ『だから僕は音楽を辞めた』を聴く(Apple Musicはこちら

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リリース情報

ヨルシカ『創作』
ヨルシカ
『創作』Type A(CD)

2021年1月27日(水)発売
価格:2,090円(税込)
UPCH-2215

1. 強盗と花束
2. 春泥棒
3. 創作(Inst)
4. 風を食む
5. 嘘月

ヨルシカ
『創作』Type B(CDなし)

2021年1月27日(水)発売
価格:1,100円(税込)
UPZZ-1839

※Type Bには音源メディアの収納はなし

1. 強盗と花束
2. 春泥棒
3. 創作(Inst)
4. 風を食む
5. 嘘月

プロフィール

ヨルシカ
ヨルシカ

2017年より活動を開始。コンポーザーとしても活動中の“n-buna”が女性シンガー“suis”を迎えて結成したバンド。n-bunaが生み出す文学的な歌詞とギターを主軸としたサウンド、suisの透明感ある歌声が若い世代を中心に支持されている。最新作3rd Full Album『盗作』は、Billboard Japan総合アルバム・チャート“HOT ALBUMS”初登場1位を記録。

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