コラム

映画『モキシー』を彩るパンクロック。校内の性差別にZINEで抵抗

映画『モキシー』を彩るパンクロック。校内の性差別にZINEで抵抗

テキスト
岡俊彦
編集:井戸沼紀美(CINRA.NET編集部)

「わきまえない女」を賞賛するBikini Killの名曲“Rebel Girl”と映画の親密な関係

さて、主人公の母親がかつてZINEを集めていたのは1990年代初頭にアメリカで始まった、ライオットガールムーブメントからの影響であり、当然ながら作中においても音楽は非常に大きな役割を果たしている。その中核となっているのがBikini Killの名曲“Rebel Girl”だ。

Bikini Kill“Rebel Girl”を聴く(Apple Musicはこちら

<堂々と顔を上げる彼女の親友になりたい / 反逆する少女 / あなたは私の世界の女王>いう歌詞で「わきまえない女」を賞賛する、ライオットガールムーブメントにおいて非常にアイコニックな楽曲となったこのナンバーは、かつて『東京国際レズビアン&ゲイ映画祭』で上映された『ちっちゃなパイパイ大作戦!』(2007年)や女性解放運動の歴史についてのドキュメンタリー『怒ればその美しさひときわ輝く』(2014年)などで女性たちの反逆のアンセムとして使われてきた。

それが2018年Netflix配給のアニメーション映画『ネクスト ロボ』あたりからは、(映画でロンドンが舞台になればThe Clashの“London Calling”が流れるのと同じような感じで)かなりポップな使われ方もされるようになってきた印象がある。『モキシー』ではそのメッセージ性とポップさの両方を活かした理想的な使われ方がされていると言えるだろう。

『モキシー ~私たちのムーブメント~』キービジュアル
『モキシー ~私たちのムーブメント~』キービジュアル

ちなみに同曲は最近だと『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017年)のブルックリン・プリンス主演のテレビシリーズ『レポーター・ガール』(2020年)において非常に強い印象を残したことも特筆しておく。こちらは『キット・キトリッジ アメリカン・ガール・ミステリー』(2008年)や『ナンシー・ドリュー』(2020年)などの系譜に連なる「少女記者 / 少女探偵もの」で、世間から蔑まれている女性たちが共闘して殺人事件の真相を探っていく燃えるシスターフッド展開の上に“Rebel Girl”が高らかに鳴り響く! という最高の作品なので未見の方はApple TV+でぜひチェックを。

“Rebel Girl”が効果的に使用されている作品としては、その他にも女性ロッカー2人の友情と愛を描いた『Trigger』(2010年。主演のトレイシー・ライトが癌に蝕まれていく中で撮影された、まさに「魂の映画」)や、コラム集『女になる方法―ロックンロールな13歳のフェミニスト成長記―』の著者、キャトリン・モランの半自伝的小説をビーニー・フェルドスタイン(『ブックスマート』)主演で映画化した『How To Build A Girl』(2019年)などが挙げられる。

映画『How To Build A Girl』予告編。キャトリン・モランが10代で音楽ライターとしての仕事を始めた頃の思い出を綴った半自伝的小説が原作

音楽を紐解くと見えてくる、未来への確かな眼差し。The Linda Lindasが歌う“Big Mouth”に込められた想い

そんな“Rebel Girl”だが、『モキシー』ではBikini Killによるオリジナル音源のみならず、新進気鋭のパンク・バンド、The Linda Lindas(バンド名の由来は映画『リンダ リンダ リンダ』から。THE BLUE HEARTSの“リンダリンダ”は彼女たちのライブのレパートリーでもある)が出演してこの曲を熱演するシーンまで用意されているのだから至れり尽くせりだ。

The Linda Lindas“Rebel Girl”を聴く(Apple Musicはこちら

The Linda LindasがTHE BLUE HEARTS“リンダリンダ”を演奏する様子

そして、The Linda Lindasが“Rebel Girl”に続けて劇中で演奏するのはThe Muffs“Big Mouth”のカバー!

〈アンタなんて大嫌い / 好きな振りなんてするわけないじゃん〉という歌い出しから始まる“Big Mouth”もまさしく「わきまえない女」についての名曲。1960年代音楽のポップネスを1990年代に爆発させたThe Muffsは現在に至るまで過小評価バンドの最たるもの。バンド結成前にThe Muffsのライブでメンバーが踊り狂っていた姿も写真として残っているThe Linda Lindasが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)との闘病の末に2019年に逝去したThe Muffsのボーカル、キム・シャタックの遺志を受け継ぐかのようにこの曲を演奏するのだから感動する他ない。The Linda Lindasのレパートリーには、『ワイン・カントリー』でも大フィーチャーされていたキム・ワイルド“Kids In America”のカバーもあるが、これはおそらく映画『クルーレス』(1995年)のサウンドトラックでThe Muffsが同曲をカバーしていた影響も大きいと思われる。

The Linda Lindas“Big Mouth”を聴く(Apple Musicはこちら

キム・ワイルド“Kids In America”を聴く(Apple Musicはこちら

『モキシー』ではさらにCSSの“Alala”やプリンセス・ノキアの“Kitana”といった21世紀に入ってからのダンスミュージックやヒップホップもBikini KillからThe Muffsの文脈の延長線上でフィーチャーされており、単なるノスタルジーではない、未来への確かな眼差しも感じることができる。そして、The Linda Lindasによる“Big Mouth”のカバーは劇中のみならず、映画のエンディングテーマとしても使用されているのだった。

『ワイン・カントリー』でもプリンス(同作が公開される数年前に逝去)“I Would Die 4 U”の出演陣によるカバーがエンディングテーマとして使用されていたので、エイミー・ポーラーの作品には「故人の遺志を受け継いで、未来への希望を紡いでいく」という隠れテーマもあるのかもしれない。The Linda Lindasも『モキシー』が配信開始された時にインスタグラムでこう書いていましたよ。「#kimshattuckforever(キム・シャタックよ、永遠なれ)」ってね!

『モキシー ~私たちのムーブメント~』はNetflixで配信中
『モキシー ~私たちのムーブメント~』はNetflixで配信中(Netflixを見る
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作品情報

『モキシー ~私たちのムーブメント~』
『モキシー ~私たちのムーブメント~』

2021年3月3日(水)Netflixで配信

監督:エイミー・ポーラー
出演:
ハドリー・ロビンソン
エイミー・ポーラ
ニコ・ヒラガ
アリシア・パスクアル・ペーニャ
ローレン・サイ
パトリック・シュワルツェネッガー
ほか

イベント情報

『サム・フリークス Vol.12』

2021年5月8日(土)

上映作品:
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料金:1,374円

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