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最終話:遂に実現した、秘密ロッカーの「ヒミツ」

秘密捜索メモ#05:「昔の自分みたいな人がいるんだったら、『好きなことやっちゃえばいいんだよ』ってことは伝えたい」

タナカ

―どういうタイミングで曲や歌詞ができるのか、すごい気になるんですよね。“ヘブンズ・キル”の「ぶっ壊れそうだ」とか、そういうのって、何かきっかけがないと出てこないと思うんです。

アッコ

アッコ:あー、そうですかね。うーん……、そんな事ばっかりですけどね(笑)。それは聴いてる人が、それぞれ受け止めてもらえば。

タナカ

―でも、歌うことで何かを伝えたいこととか、そういうのはあるんですか? 誤解を招く言い方かもしれないですけど、自己満足で歌うのか、誰かに何かを届けたいのか。

アッコ

アッコ:どっちもあります。自己満足というか、全部自分のために歌ってるのもあるんですけど、昔の自分みたいな人がいるんだったら、「好きなことやっちゃえばいいんだよ」ってことは言いたいです。私がブルーハーツを初めて聴いたときに思ったように。本当に、大人になるとか無理だと思ってたので。だから、ライブハウスに10代くらいの女の子がいると、ちょっと燃えますね。

タナカ

―昔の自分を見てるみたいな?

アッコ

アッコ:全然違うんでしょうけど、勝手にそういう感じで思ってますね。

少し突っ込んだ質問をしてみたが、いちばん気になっていた歌詞については、残念ながら掘り下げきることができなかった。きっと何か嫌なことがあって、それが歌詞になっているに違いないと勝手に推測していたのだが、彼女の話を聞いているうちに、そんな単純なことではないのだろうと思った。ただ、彼女は感情が大きく動いたときに「生」を感じ、それを音楽に昇華することでまた「生」を感じているということは間違いないと思う。だからこそ、それを見聴きするこちらも心を揺さぶられるのだろう。歌詞の話はここで諦めて、彼らが今後目指す先について話を聞いた。

奥:アッコ 前:タナカ

タナカ

―秘密ロッカーは、最終的にはどういうふうになりたいんですか?

アッコ

アッコ:私はかっこいい曲を作って、かっこいいライブをやりたいです。笑っちゃうぐらいかっこいいバンドになりたい。

タナカ

―言い方は悪いですけど、売れたいとか、あわよくば音楽でメシを食いたいとか。

アッコ

アッコ:それもあります。とにかくいっぱいの人の前でライブをやりたいです。それはさっき言った、昔の自分みたいな人に会いたいから。例えばテレビとかに出れば、その人に会える確率も上がるじゃないですか。大きい会場でやれば、その人が来てるかもしれない。だから、いっぱいの人の前でやりたいし、知られたいし、全然バンドとかパンクとかに興味ない渋谷のセンター街にいるような人たちの前でもライブがしたいです。センター街への偏見ですけど(笑)。

タナカ

―要は「秘密ロッカーを見て人生が変わりました」みたいなことをたくさん起こしたい?

アッコ

アッコ:人生じゃなくても、一瞬だけでもいいです。「今日クソみたいな気分だったわ」っていうのが、「最高!」ってなっただけでもうれしいし、ライブにはそういう力があると思っているので。

前:アッコ 奥:タナカ

タナカ

―Dragon Ashのオーディション(注:秘密ロッカーは2011年に行われたDragon Ashのツアーオープニングアクト募集オーディションで勝ちあがり、渋谷AXのステージに立った。詳しくは連載第4話の3ページ目を参照)を受けたのも、そういう理由から?

アッコ

アッコ:その頃は、いつもウチらのことを知ってる人たちがいるライブハウスじゃなくて、まったく知らない人たちがいっぱいいる前で、ぶちかましたいっていうのがあって。そういうオーディションとかに応募してました。

タナカ

―そのときって実際、Dragon Ashは好きだったんですか?

アッコ

アッコ:アッキーは好きだったみたいなんですけど、私は全く聴いた事もなくてKjが誰だかも知らなかったんですよ。でも、今回のことで超リスペクトしました。アンダーグランドで活動しているバンドがデカイステージで大勢の人の前でライブをやれるきっかけの少なさを知ってるからだろうし、それを引っぱり上げてやろうっていう想いと行動にリスペクトしました。普段、ほとんどMCをしない人らしいんですけど、そのAXのライブでは、「オープニングアクトに出てくれた秘密ロッカーに拍手」って煽ってくれて。「いまは好きなことをできる人たちがすごくやりづらくなってる。だから今日、秘密ロッカーのライブを見てちょっとでもいいなと思った人は、ライブに足を運んであげてください」って。それで、いつもそこで「ミクスチャーロックは好きですか?」って言って始まる曲があるらしいんですけど、たぶんウチらが出たから「ロックンロールは好きですか?」って言って、その曲を始めてくれて。

タナカ

―Kjかっこいい!

アッコ

アッコ:応募するときは全然知らなかったんですけど、ライブも最高だったし、その後でちょっとしゃべったときも、すごく真摯に接してくれて。こういう場所で長く活動している人が「一番大事なのはライブだから」って言った事も嬉しかった。間違ってなかったって思えたし、「今度はフェスとかで会いましょう」って言ってもらったんで、次はどうしても自力で一緒のフェスに出てそこで会いたいんです。

タナカ

―それは実現しないと。でも、パンクバンドがオーディション受けるとかって、かっこ悪いと考える人も多いじゃないですか。

アッコ

アッコ:そういうのは全然ないですね。いろんな人に見てもらえるチャンスがあるのなら、もっとやらせろ! って思ってるし、待っててもチャンスは来ないので。

1時間近くにわたり、真夜中の駐車場で行ったインタビュー。話している中で強く感じたのは、彼女がありのままでいるためには、音楽、そしてそれを一緒に鳴らす仲間が必要だということ。しかし、ありのままでいようとするために、逆に苦労することもあれば、彼女が“ヘブンズ・キル”で歌にしているように「ぶっ壊れそう」なときもあるに違いない。自分を殺してしまったほうが、楽なときも当然あると思う。現にそうしていれば、バンドを結成するのに10年もかからなかったはずだ。/ただ、それでも彼女がありのままでいることを選ぶのは、自分を殺してしまっては絶対に得ることができない喜びがあるからだと思うし、そうしてしまった瞬間に秘密ロッカーがライブで見せる熱量や緊張感、そしてアッコの鬼気迫る歌声や鋭い目つきは消えてしまうだろう。彼女は何か大きなものを乗り越えて、音楽を生み出している。今回、その何かについてまで掘り下げ切ることはできなかったが、また取材できる機会が訪れた際は、もう一度そこについて問いかけてみたいと思う。今回と同じように、彼女はまた答えてくれないかもしれないし、もし答えてくれたとしても期待はずれなものになるかもしれない。それでも、この連載を通して感じた秘密ロッカーについてもっと知りたいという衝動を殺してしまっては、得られない喜びがあるかもしれない。その答えがわかるまでは、そして彼らが前に進み続けている限りは、秘密ロッカーを追い続けたいと思う。願わくば、Kjと約束したフェスで再会したい。

握手をするアッコとタナカ

全5回に渡ってお送りした連載も、これで締めくくりとさせていただきます。いろいろな角度から秘密ロッカーというバンドに迫り、できる限り実像が伝わるよう努力しましたが、バンドを目の前にして見れば、きっと記事とは違う印象もあるはずです。この記事から少しでも何かを感じてもらえたなら、是非その目、その耳で確かめてみていただければ幸いです。最後までご覧いただき、本当にありがとうございました。 完

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