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1968年、激動の日本で何があった?『日本写真の1968』展

1968年、激動の日本で何があった?『日本写真の1968』展

内田伸一
撮影:佐々木鋼平
2013/05/29

1968年はどんな年? THE BEATLESが“Revolution”を、THE ROLLING STONESが“Street Fighting Man”をリリースした年であることからもわかる通り、世界的に社会変革が人々の間で語られ、またその挑戦がなされた季節でもありました。そしてこの1968年は、日本の写真界でもそれまでの価値観に収まらず、ときにそれを挑発し、覆すような動きが同時発生した時期。半世紀近くを経たいま、これを見つめ直す展覧会が、東京都写真美術館での『日本写真の1968』展です。激動の季節に起きた4つの写真史的「事件」とは? それは現代にどうつながるのか? 企画を手がけた金子隆一・同館専門調査員に伺いつつ探りました。

写真家たちが自ら動いた『写真100年―日本人による写真表現の歴史展』

読者の多くがそうかと思いますが、これを書いている僕自身、1968年にはまだ生まれていません。試しに「1968年」でWikipediaしてみると……(ちなみにWikipedia設立者のひとり、L・サンガーも同年生まれ)。チェコで「プラハの春」が、パリでは「五月革命」が勃発。アメリカではベトナム戦争や公民権運動のただ中で、キング牧師やR・F・ケネディの暗殺が世に衝撃を与え、秋にはニクソンが大統領に選出。日本では、続々開通する新交通網、初の超高層建築・霞が関ビル完成などが目立ちますが(ほか『少年ジャンプ』創刊、川端康成の『ノーベル賞』受賞も)、東大闘争、三里塚闘争といった言葉が踊るものものしさもあります。

展示風景
展示風景

今回の『日本写真の1968』展では、この年に起こった写真界の大きな動きを4セクションに分けて紹介します。最初の「事件」は1月早々、西武百貨店で開催され、いまも語り継がれる写真展でした。その名も『写真100年―日本人による写真表現の歴史展』。幕末・明治から太平洋戦争終結までの日本写真の歩みを、ほぼ初めて体系化した試みだったそうです。さらに注目したいのは、実現のための調査に奔走したのは、東松照明、多木浩二、内藤正敏、中平卓馬など、後に巨匠と呼ばれるものの、当時はまだ中堅〜若手の写真家たちが多かったことです(主催は日本写真家協会)。

撮影者不詳 武士と従者 1871-1880年頃 (写真一〇〇年展複写パネルより) 日本大学藝術学部
撮影者不詳 武士と従者 1871-1880年頃 (写真一〇〇年展複写パネルより) 日本大学藝術学部

今回の展覧会では、この『写真100年』展の一部を再現するような一画が出現。明治期に撮られた有名・無名の肖像から、アラーキーも影響を受けたという近代写真のパイオニア・野島康三がとらえる野性的な女性の美まで。歌舞伎スターの写真と名台詞を組にした『俳優写真競』から、原爆投下後の長崎を象徴する写真が世界的に知られる山端康介まで。何せ100年ぶんの厳選・濃縮なので、被写体も技法も本当にさまざまです。展覧会名にもある「写真表現」という言葉の意味合いと、その変遷を考えさせられます。

撮影者不詳 アイヌ 1871-1880年頃 (写真一〇〇年展複写パネルより) 日本大学藝術学部
撮影者不詳 アイヌ 1871-1880年頃 (写真一〇〇年展複写パネルより) 日本大学藝術学部

今回『日本写真の1968』展を手がけた金子隆一・東京都写真美術館専門調査員も、写真青年だった大学時代にこの『写真100年』展に衝撃を受けた1人でした。

金子:とにかく全体の質と量が生む厚みに圧倒されました。企画メンバーは日本中を分担調査し、50万枚超の写真を見て展覧会を作り上げたそうです。さらにこの試みは、日本写真の本格的な収集・保存への議論のきっかけにもなりました。それは後にこの東京都写真美術館が生まれ、収集を始めていく流れとも密接につながります。私自身にとっても、写真を研究するうえで根底にある出来事の1つなんです。

(右)土門拳 一億一心歯車のように (左)真継不二夫 海軍兵学校<br>1943年 (写真一〇〇年展複写パネルより) 日本大学藝術学部
(右)土門拳 一億一心歯車のように (左)真継不二夫 海軍兵学校
1943年 (写真一〇〇年展複写パネルより) 日本大学藝術学部

いまでは日本全国の美術館・博物館やギャラリーで「写真史」が語られ、日々新たに積み重ねられています。それをさかのぼれば、気鋭の写真家たちが高名な評論家や研究者に任せず、自らの手で紡ぎ出したこの『写真100年』展がある。当然、彼らにはその延長線上で自らの写真を正当に位置づけたいという動機もあったかもしれませんが、そこに捧げられたパワフルな熱量はいまなお色褪せません。『写真100年』展の功績は、それまで全国区で評価されていなかった田本研造(開拓期の北海道を記録。土方歳三のポートレートも有名)らの「発見」にもあったそうです。2013年を生きる僕らは、ここに何を発見できるでしょうか。

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イベント情報

『日本写真の1968』

2013年5月11日(土)〜7月15日(月・祝)
会場:東京都 恵比寿 東京都写真美術館2階展示室
時間:10:00〜18:00(木、金曜は20:00まで、入館は閉館の30分前)
出展作家:
東松照明
森山大道
中平卓馬
高梨豊
田本研造
武林盛一
桑原甲子雄
牛腸茂雄
鈴木清
新倉孝雄
田中長徳
田村彰英
渡辺眸
ユニット69
ほか
休館日:月曜(月曜が祝日の場合は開館し、翌火曜休館)
料金:
当日 一般600円 学生500円 中高生・65歳以上400円
前売・団体 一般480円 学生400円 中高生・65歳以上320円

シンポジウム
『日本写真の1968』
2013年6月15日(土)14:00〜17:00(開場13:30)
会場:東京都 恵比寿 東京都写真美術館1階ホール
出演:
倉石信乃(明治大学教授)
金子隆一(東京都写真美術館専門調査員)
ほか
定員:190名(事前予約不要)
料金:無料
※同展覧会の半券をお持ちの方に当日10:00より整理券を配布

担当学芸員によるフロアレクチャー
2013年6月14日(金)、6月28日(金)、7月12日(金)16:00〜
※同展覧会の半券(当日有効)を所持の上、会場入口に集合

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