『嘘じゃない、フォントの話』

連載『嘘じゃない、フォントの話』(supported by モリサワ) 第8回:文字のはじまり -世界の文字、日本の文字-

欧文フォントの盛衰

それでは、日本の文字はどうでしょうか。世界中に存在する文字の中で、日本語は漢字・ひらがな・カタカナという種類とその文字数の多さ故に、現代のフォント開発にも時間とコストがかかります。しかも、今ではラテン文字も「ローマ字」として日本語の中に使われているので、欧文フォントの需要も高まっているのです。そもそも、なぜ4種類もの文字ができたのでしょうか。

漢字のはじまり

もともと中国で誕生した漢字。それは日本にも伝わり、日本社会の時代の荒波に揉まれながら独自の変化をしてきました。日本の漢字書体は、国策で字数が制限されたり、印刷技術のデジタル化によって形を変えたりと、社会の変化に大きく影響を受けています。「勘亭流」に代表されるような江戸文字も、日本の文化が生んだ独自のデザイン書体です。

1920年
安

江戸時代に、歌舞伎の番付や看板用にデザインされたのが「勘亭流」。現在でもフォントとして演劇のちらしなどに使用されています。

勘亭流
ひらがなのはじまり

日本にはもともと文字がありませんでした。そこで、日本語を書き表す文字として平安時代に生まれたのが「ひらがな」です。当時は、清少納言や紫式部といった女の人が和歌などを書く時に使われました。現代では、一番最初に学校で習う文字がひらがなです。ひらがなの丸みを帯びた字形は見ためはきれいですが、この丸みこそがフォント開発をする上で一番難しい部分だそうです。

1920年
あ

字を習うための規範となる形が表された「教科書体」。子どもが習いやすいという特徴があります。

教科書体
カタカナのはじまり

カタカナもまた、平安時代にその体系が誕生しました。カタカナは、中国から伝わった漢字の文章や仏教の仏典を読むための、読みがなとして考えられました。漢字の一部を使って書き表したので、漢字の一部分に似たところがあります。また、漢文の横に付けられる読みがなとして作られたので、狭いスペースに簡単に書き込めるように簡略化されました。現代では、外来語や擬音語を表す時によく使われます。

1920年
あ

タイトルや本文などに幅広く使用される「ゴシックMB101」のカタカナ。太さが変化しても読みやすいのが特徴です。

ゴシックMB101
ローマ字

日本人が日本語のなかで使っているのは、ひらがなやカタカナ、漢字だけではありません。4つめの種類として、ラテン文字があります。この文字は、室町時代にポルトガルから来た宣教師によって日本に持ち込まれました。ラテン文字は、日本で「ローマ字」と呼ばれ、今では駅の看板や道路の案内板、パスポートの名前の表記など日本語を表す文字としても使われています。

1920年
あ

文章にアルファベットや英数字を使うことが多い現代のニーズに対応してデザインされた欧文フォント、「Clear Tone SG」。

Clear Tone SGの フォントを見る

[参考文献]
書籍『人間と文字』 平凡社、矢島文夫監修
DVD『人間と文字』 株式会社モリサワ、矢島文夫・田中一光監修
『こくごの図鑑』 小学館、青山由紀監修
『世界の文字の図典 普及版』 吉川弘文館、世界の文字研究会著

次回は?

今回は、文字のそもそものはじまりと現代の姿を大きく紹介しました。次回は、その変化の過程を、日本の漢字に焦点を当てて迫ってみたいと思います。甲骨文字として誕生した漢字が、携帯電話やパソコンで使うフォントになるまでに、どのような過程を歩んできたのでしょうか。その歩みを見ることで、テクノロジーやメディアの変化と文字の密接な関係をひも解いてみましょう。

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