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Serphがたどり着いたユートピア『Heartstrings』

Serphがたどり着いたユートピア『Heartstrings』

金子厚武
2011/04/15

ドリームポップ界の新たな旗手Serphが新作『Heartstrings』を発表する。プロデュース、作曲はもちろん、ミックスからマスタリングまでをすべて1人で手がけた本作は、彼がかねてより思い描いていたユートピアを遂に具現化したかのような、シンフォニックで、シネマティックな傑作である。現時点での知名度こそまだ高くはないものの、ゆくゆくはworld's end girlfriendやDE DE MOUSEらと同等の評価を獲得するであろう稀有な才能であることを、本作は改めて印象付けている。それでは、そんな彼の魅力を改めて紹介することにしよう。

作曲を始めてから5年足らず、いまだ急成長の途上

前作『vent』から、わずか9ヶ月という短いスパンで、Serphの新作『Heartstrings』が届いた。『vent』よりも1曲多い13曲収録の、堂々たるフルボリュームのアルバムである。ピアノと作曲を始めてわずか3年で作り上げた1st『accidental tourist』を発表したのが2009年7月、『vent』の発表がその1年後の2010年7月なので、先日10年ぶりにアルバムを発表した砂原良徳と比べるまでもなく、かなりのハイスピードで作品を発表していることがわかる。

もちろん、リリースのスパンはどちらがいい悪いではなく、すでに十分なキャリアがあり、自身の音楽的基盤を固めている砂原に対し、「毎日iTunesで音源をチェックして、あらゆるタイプの曲を日々作り続けている」と、『vent』発表時のインタビューで語っていたSerphは、今まさに急成長の途上にあるのだ。そういえば、前述のインタビューでSerphは、毎日iTunesで音源をチェックする理由について、勉強であると同時に、「世に出回ってる音源に失望することで、自分のやる気を奮い立たせる」というような発言をしていたのが印象深いが、こういったパンクな気質は、タイプこそ違えども、砂原にも通じる部分であるように思う。音楽でこそ物言わぬ電子音楽家は、案外尖った人が多いものなのだ。

では、改めて、Serphの経歴を簡単に振り返っておこう。Serphは、東京在住の男性によるソロプロジェクト。意外にも、中学時代に兄の影響でプログレやヘビメタから音楽に入ったというが、徐々にインストのクラブミュージックに傾倒し、学生時代のDJ活動を経て、自身の曲作りを開始している。竹村延和やdimliteといったエレクトロニカ系のアーティストをフェイバリットに挙げる彼の音楽は、ジャズを基調としながらも、エレクトロニカはもちろん、ハウスや映画音楽など、様々なジャンルを横断するイマジナティブなポップミュージック。ループを基調としたダンスミュージックとは違い、まるで夢を見ているかのように風景がコロコロと変わっていく、ダイナミックな曲展開を特徴としている。

前作『vent』から僕が連想したのは、美意識の強い独自の世界観をもった電子音楽という意味でworld’s end girlfriendやDE DE MOUSE、ジャズのテイストとメロウなメロディからはNujabes、ジャンルレスなドリームポップという意味ではトクマルシューゴなど、心ある音楽ファンであれば誰もがワクワクするであろう、そんな名前ばかりだった。『vent』のリリース後には、なんと平井堅の『裏 歌バカ』で、rei harakamiやHALFBYと共に、リミキサーとして名前を連ねていたことも記憶に新しい。



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