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テキスト:小林宏彰
撮影:廣瀬育子、neutron、CINRA編集部
写真提供:neutron
『ふたりで描く、ひとつの絵 〜三尾あすか・あづち姉妹がひとりの「アーティスト」になるとき〜』 第2話:「いつまでも続く、トランスフォーメーション」をdel.icio.usに追加 このエントリーをはてなブックマークに追加 『ふたりで描く、ひとつの絵 〜三尾あすか・あづち姉妹がひとりの「アーティスト」になるとき〜』 第2話:「いつまでも続く、トランスフォーメーション」をlivedoorクリップに追加 『ふたりで描く、ひとつの絵 〜三尾あすか・あづち姉妹がひとりの「アーティスト」になるとき〜』 第2話:「いつまでも続く、トランスフォーメーション」をlivedoorクリップに追加 twitterでつぶやく
三尾あすか&あづち

私たちを助けてくれるような、大きな存在を描く

三尾あすか&三尾あづち合作
『ケシンたち』
2011年/1121×2911mm/ミクストメディア
三尾あすか&三尾あづち合作
『しずかな革命』
2011年/971×3241mm/ミクストメディア

初めての双子合作巡回展にも関わらず「そんなに気負ってはいなかった」と話すふたりだが、展示をじっくりと見るにつけ、これまでの集大成として、持てる全ての力をぶつけてきていることが肌で理解できた。

5月に取材をした際に制作中だった2つの大作『しずかな革命』『ケシンたち』。制作時に加え、いくつかのモチーフが描き加えられ空間の豊かさが増したこれらの作品は、所狭しとモチーフで埋め尽くされており、ファンシーでありながら過剰さを感じさせる作品に仕上がっていた。

『ケシンたち』に描かれたモチーフの中でも、ひときわ目を引くのは中央に描かれた白く大きな動物だろう。「あまり見る方のイメージを限定させたくない」と語るふたりだが、この大きな「ケシン」には、何か大きな感情が隠されているのではないかと思い、話を訊いてみた。

    あづち 「ケシン」は、神様のようなものをイメージして描きました。最近、あんまり楽しい話題がない世の中ですが、そういった雰囲気を変えてくれる、私たちを助けてくれるような存在という感じです。

『しずかな革命』もそうだが、これらの大作に描かれた大小さまざまな動物たちは、何かしらの目的を持ちながら、どこかへと向かう旅の途上にあるように見える。動物たちは、われわれの伺い知ることのできない場所を移動しており、まるで世界のネジが彼らの行進によってゆっくりと巻かれているかのようだ。

『ケシンたち』(部分)
    あすか いま生きている「現実」の世界と、これから行ってみたい「未来」の世界が入り交じっていて、そして想像の世界との間でもあるような場所。そういう、時間がゆっくりと流れているような世界を描いている感覚があります。
    あづち 世界って、一気になにかが変わるっていうようなことはなくて、毎日ちょっとづつ変わっていくもの。そんなイメージが、この絵を描き終わった時にありました。私たちが日常生活の中で感じていることだったり、観た映画や夢などから得た感情をこの世界の中で表現することが、私たちにとって大事なことなんです。

あすかとあづちが目を凝らし、耳を澄ませてキャンバスに記録しようとしているのは、私たちが生きているこの世界の深部でじつは常に起きている、静かな変化のようなものなのではないか。あすかは抽象的な模様、あづちは具象的なモチーフというアウトプットで、言葉にできない出来事をキャンバスに定着させる。その繊細な作業こそ、彼女たちが日々チャレンジし続けていることなのだ。

    あすか ひとりで描いていると、画面に目を惹くものがある絵を描けなかったんですけど、あづちがそれを描いてくれるから、お客さんにとって見やすい絵になっているのかな、と思います。
    あづち でも私だけで描いていると具象的なモチーフばかりになってしまうんですけど、あすかと描くことでそのモチーフが活きる。どんどん作品世界の雰囲気が変わってくるんです。私にとって、それは新鮮なことだったし、勉強になりました。
『ケシンたち』(部分)

「現実」と「想像」の間で揺れる緊張感のなかで

冒頭に挙げた『ワカラナイケドシッテイル』のような、描く領域をハッキリと分けた作品もあれば、ふたりのモチーフが貫入し合い、ひとりの作家が描いたとしか思えない『しずかな革命』『ケシンたち』のような作品もある。どれもが少しずつ異なる感情を表現しており、安易に描いた作品がないことは明らかだ。

今回の展覧会は、間違いなくふたりにとっての集大成となった。では今後、現時点でつぎつぎと溢れ出ているモチーフ(感情)は、どのように変化していくのだろうか? 「ふたりで描く」ことにより、作品としての体裁を突き破るほどの爆発的なエネルギーを溢れさせる彼女たちの感情は、どのように方向づけをされ、洗練していくのだろうか(または、洗練しないのか)?

「描く目的とは」という質問に対して、あづちはこのように語る。

    あづち 私は悲しいものが苦手なんです。悲しいのは現実だけでいい。悲しい気持ちを原動力にして作る人もいると思いますが、私は楽しいから制作しているし、自分の楽しい感情、目に見えないものを表現しておきたいと思っています。
三尾あすか&あづちの「描く目的とは」

ただ、彼女たちの想像力は、語られた言葉よりもどうやら先へと行こうとしているようだ。

聞けば、『ワカラナイケドシッテイル』に描かれた女性は、彼女たちの作品世界を客観的に見つめる「観客」の視線が投影されているという。そこには、作者である彼女たち自身の視線も含まれているそうだ。「最近描く機会が増えている」という、時には血を流してさえいるようなこの女性たちは、彼女たちの「楽しいから描いてきた」という想像世界を揺さぶり、崩し、そして新たな世界を再び生み出すための鍵となるかもしれない。そんな重要な変化が、彼女たちの創作には確かに起こり始めている。

三尾あすか&三尾あづち合作
『セカイは繰り返す』
2011年/1165×910mm/ミクストメディア

7月20日からneutron tokyoにて行われたグループ展、「来るべき世界」展。なみいる実力派作家の中に、彼女たちの新作が一点置かれていた。『セカイは繰り返す』と名付けられたその絵に登場するのは、3人の女性たちだ。かつてないほど具象と抽象がバランス良く配置され、ますます作品の世界観が構築的になったのと同時に、客観的に見つめる女性たちも増えてきている。この絵にみなぎっているかつてない緊張感は、彼女たちの成長の道筋を示唆するものだと感じた。

今後、彼女たちの展覧会は名古屋、そして神戸へと巡回する。「場所に合わせて変えていきたい」と語る彼女たちが、どのような展示を披露してくれるのか。その想像力のさらなるジャンプを見届けるため、引き続き伴走していきたいと思う。

第3話につづく

三尾あすか&三尾あづち 双子の姉妹展2011
『TRANSFOMATION 』in ノリタケの森

2011年8月17日(水)〜21日(日)
会場:ノリタケの森ギャラリー
時間:10:00 - 18:00 (最終日は16:00まで)
入場:無料
詳細はこちら

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