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『クリエイターのヒミツ基地』 Volume10 関根光才(映像ディレクター)

日本が世界に誇る若手広告映像ディレクターは誰か? 関根光才さんは、間違いなくその候補のひとりとして挙げられる人。アディダス・資生堂・マクドナルド・NTTドコモなど数々の企業CMを制作し、ミュージックビデオやショートフィルムも手がけています。まだ35歳ながら、カンヌ国際広告祭をはじめ受賞歴も多数。印象に残るストーリー性とインパクトある演出が特徴な関根さんの作品は、どのように生まれているのでしょうか? 関根さんの創作現場に迫ります。

テキスト・田島太陽
撮影:CINRA編集部
取材協力:株式会社GLASSLOFT

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関根 光才せきね こうさい
1976年生まれ、東京都出身。上智大学文学部哲学科を卒業後、CM制作会社在籍中に『RIGHT PLACE』を発表し、各国で多数の映画賞を受賞。翌年のレインダンス映画祭CM「Daughter」篇では、2006年のカンヌ国際広告祭新人監督賞「Young Directors Award」にてグランプリを獲得し、同年Shotsが発表した年間広告制作者ランキングNew Director部門で、世界ランキング1位となる。その後も国内外問わず数多くの広告を手がけ続けている。

関根光才(せきね こうさい)

日本のCMはあまり面白くないと思っていた

20代の頃、関根さんは常に焦りを感じていました。

学生時代にヴィム・ヴェンダース監督の『パリ、テキサス』を観たことがきっかけで映像の世界に憧れ、英語の勉強とアメリカのカルチャーを肌で感じるために留学を経験。現地で触れた数々の広告に可能性と面白さを感じ、日本に戻ると映像制作を学ぶべくCM制作会社に就職します。しかしそこでのおもな仕事は、プロダクションマネージャーとしての進行管理や予算の調整でした。ディレクターになるために転職を行うも、下積みは5年ほど経験するのが勤務先での通例だと知ります。CMだけでなく、映画・ショートフィルム・ミュージックビデオなど作りたいものがたくさんあった関根さんにとって、それはあまりにも長い時間に感じられました。「30歳になってからでは遅い」。関根さんは日々、そう考えていたのです。

ターニングポイントとなったのは、2005年のアジア太平洋広告祭に出品したショートフィルム『RIGHT PLACE』でした。仕事の合間を縫っての制作でしたが、世界各国の映画賞を獲得。この受賞をきっかけに、「物語も撮れる若手ディレクター」として関根さんの名前は世界に知られました。

「正直なところ、日本のCMはあまり面白くないと思っていたんです。だから海外で認知されれば楽しい仕事ができる、と思って。『RIGHT PLACE』も日本以外で注目されるべく戦略的に作りました。意識したのは『言葉に依存しないこと』、そして『東京ならではの雰囲気が感じられること』。このふたつを共存させられれば、きっと海外でも受け入れてもらえると思ったんです。結果として、望んでいたステージへとピンポイントで上がることができました」

関根光才さんのオフィス

企画の目的からロジカルに考える

現在は国内外問わず、ミュージックビデオ・CM・映画などの分野で幅広く活動しています。研ぎ澄まされた洗練さや遊び心、感情を揺さぶる驚きや切なさなど、作品それぞれに個性的な演出が映え、観る人の興味を惹きます。ハイペースで作品を制作する中で、どのようにアイデアを練っているのでしょうか? そこには関根さん独特の発想法が隠されていました。

「アイデアがなにも浮かばないことはほとんどないんです。それは多分、企画を大事にしているから。すべての広告には目的があるので、それを達成するためにはどんな映像で、どんな演出がいいのかをロジカルに考えるタイプなんです。ただ、最近増えてきたファッションの仕事は、直感で作るようにしていますね。女性に共感してほしいものを、ロジカルに作っても届かないのかなと考え、できるだけ直感的、動物的に頭を動かすようにしています」

しかし、やはり悩む時はあるもの。その時に決まって行うのが、音楽を聴くことだそう。明るいテイストの広告を作る時はアップテンポの曲を、ダークな雰囲気でも許される時は暗い曲を聴く。そうすることで、イメージが自然と浮かんでくるのだそう。

「音から映像が見えてくるんです。普段から、映像よりも曲のイメージが先に出てくることが多いんですよ。昔から音楽が好きだったので、その影響かもしれませんね」

なりたい人は勝手になってしまうのがディレクター

海外の広告に可能性を感じ、海外のアワードで評価を高めた関根さん。その目は若き頃から海の向こうに照準が合わせられていました。では、国内と海外の広告制作の現場は、いったいなにが違うのでしょうか?

「新鮮なアイデアを重要視するのか、モノの動きを重要視するのかが最も違うかもしれません。日本ではマジメにマーケティングやモノの流れを心配して、日本国内の市場でのみ流通するような広告表現が多いような気がします。それはそれでとても面白いのですが、本当に世の中を刺激しているイノベーティブなことや、見たことのないアイデアは、普遍的で、ただの広告ではなく文化になる。その違いかと。でも最近ではWebコンテンツを始めとして、日本のクリエイティブが画期的なものを作り、世界に先駆けるケースが多くなってきました。これからが楽しみです」

広告業界の中心で日々忙しく世界を飛び回りながらも、やはりいつかは映画を撮りたいという夢も持っている関根さん。最近も、企画や脚本を練っていたそう。さらに大学の授業に講師として参加するなど、若手の育成にも参加しています。「まだ自分のことで手一杯だし、ちゃんと教えられているかどうか分かりません(笑)」と謙遜しますが、生徒たちを見ていて感じることがあったそう。それは、「新しいものを取り入れて満足してしまう傾向がある」ということ。

技術が進化して撮影の敷居が下がった今、映像は限られたクリエイターのものだけではなくなりました。だからこそ一過性の流行や目新しさに惑わされるのではなく、「自分が本当に撮りたいものはなにかを見極めてほしい」と関根さんは言います。

「若い人と関わって改めて感じたことですが、ディレクターは育てられないんです。内側から湧くものがいちばん重要だから、他人が教えられることなんてほとんどない。作りたい人は勝手に作るし、ディレクターになりたい人はなにも教えなくてもなってしまう。やろうと思えばなんでもできてしまう時代だからこそ、どんどん作品を作ってほしいですね」

関根光才さんのオフィス
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