ビルがキャンバスになるアート「Canvas @ Sony 2010」

ソニービルの壁面、通称「アートウォール」に若手作家の作品を掲載するイベント、「Canvas @ Sony 2010」が10月28日より開催されている。「新進アーティストの夢をかなえるきっかけとなるプロジェクト」というテーマのもと、銀座の一等地に建つソニービルの外壁を巨大なキャンバスにするという意欲的な試みだ。その大きさ、なんと縦38m×横6m。約1000点もの応募の中から選ばれたグランプリ作品が、11月26日までの1ヶ月間数寄屋橋交差点を彩っている(ソニービル8Fのイベントは11月3日まで)。規格外のキャンバスでどのように自らの創造性をぶつけ、個性をアピールするか。気鋭作家たちが想像力とクリエイティビティを駆使し切磋琢磨する、注目のイベントの見どころをお伝えする。

縦長のアートウォールを活かした新鮮な表現

「『手あか』のついたモチーフである『バナナ』をこうも新鮮に表現をして、僕達の前に提出してくれたことに感謝する気持ちでいっぱいだ」(長友啓典氏/アートディレクター)「ダイナミックな表現力と『銀座にバナナ登場!』と言い切れるシンプルな訴求力が決め手になりました」(谷口純弘/digmeout プロデューサー)

審査員からそう評を得たのが、グランプリを受賞した神田ゆみこさんの作品。日常のありふれたものの中にある美しさ、面白みを描いた絵画作品を発表しているアーティストだ。木材や砂利などをモチーフにした過去の作品からも、外面だけには表れない美感に耳を澄ませて表現する作風が伺える。

ビルがキャンバスになるアート「Canvas @ Sony 2010」

今作では「なぜバナナなのか?」と一瞬首を傾げたくもなるが、そこにも気鋭クリエイターとしての独自の視点がある。

「バナナには熟していく姿にドラマチックな魅力がある。斑点の存在感だけで、時間の経過やいろんな想像をかきたてることができたら面白いと考えました。縦長のアートウォールに合わせて斑点の部分を切り取ったことで、新鮮な表現ができたと思います。私の作品は生活感の強いものなので、銀座の街に大きく飾られるのは意外性があって目立つだろうとは思いつつ、本当に選ばれるとは思っていませんでした。ですので、自分の作品が受け入れられたことに感激しています」(神田ゆみこ)

ビルがキャンバスになるアート「Canvas @ Sony 2010」

縦長のキャンバスで大胆に描き出された巨大バナナは、彼女も言うように銀座の街とはミスマッチなのかもしれない。そのコミカルさが生むギャップも魅力的で、街行く人々の視線が釘つけになることだろう。

実力のあるアーティストこそが選ばれる場

「若手アーティストに発表の場を」という想いから、前身となる「You are the NEXT!」が大阪で開催されたのが2005年。その後東京にも拠点を広げ、ソニービルを舞台とした「Canvas @ Sony」という名称としてから4年が経った。担当者に伺うと、応募数は格段に増え、作品のクオリティも高まってきたという。過去のグランプリ受賞者も、有名アーティストのCDジャケットや雑誌のイラスト、展覧会などで活躍を見せるようになってきた。

ビルがキャンバスになるアート「Canvas @ Sony 2010」

グランプリ受賞者は応募作品のほかに、これから1年間であと2回、アートウォールで新作を発表することができるのも特徴だ。つまり応募作の評価やインパクトはもちろんのこと、今後も継続して優れたクオリティの作品を発表できる力量があるかどうかも評価対象になってくる。

若手作家としては、老若男女が訪れる銀座の街で継続的にアピールできるまたとない機会。それだけに、公式ウェブサイトで公開されているファイナリストの作品だけを見ても、そのレベルの高さと個性豊かな作品群に驚かされる。しかし、縦長で巨大なフォーマットという制限の中で、自分の表現を追求するのは容易いことではなかったはず。創意工夫と試行錯誤を繰り返し、それぞれ異形のキャンバスに立ち向かったのだろう。

Twitterのつぶやきが表示され、会場を熱気で包む

さらにイベントの一貫として、Twitterで募集したつぶやきも展示コーナーに掲出される。お題は「夢をかなえるために、今なにをする?」。ハッシュタグ付きで投稿されたつぶやきをみると、「世界をひっくり返すようなことをするために、日々全力で生きていく」「とにかく挑む!!!」など、意欲溢れるツイートがすでに200以上も集まっている。アーティストを目指す若者たちの声が集約し、会場がどのような熱量に包まれるのかにも注目だ。

ビルがキャンバスになるアート「Canvas @ Sony 2010」

イベントしての認知度や会期中の盛り上がりも年々向上している「Canvas @ Sony」。それでも、「自分たちも一緒に楽しめること、産みの苦しみを共有していくこと」をモットーに、主催者側も常にチャレンジャーであることを忘れたくないという。その姿勢にシンパシーを感じるクリエイターも多いだろう。

ウェブでいくらでも作品が発表できる今の時代にあっても、リアルな場で人と交わり、他者の作品に触れ、自らの創作を顧みる機会の重要さは変わらない。日常ではありえない巨大なキャンバスに立ち向かったクリエイターたちの試行錯誤と、未来への想いに触れに、銀座へ足を運んでみてはいかがだろうか。

information

『Canvas @ Sony 2010』

2010年10月28日(木)〜11月3日(水・祝)11:00〜19:00
会場:東京都 銀座 ソニービル
料金:無料
主催:ソニー株式会社
共催:ソニー企業株式会社(ソニービル)
企画協力:株式会社FM802 digmeout

Sony Japan | Canvas @ Sony 2010



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