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『ヨコハマ カルチャーガイド』-街から生まれるクリエイティブ- vol.3:大谷能生と行く横浜

馬車道〜伊勢佐木モール

ここからは先は、大谷さんが日常的に訪れている場所を巡ります。まずは馬車道駅を出てすぐ、哲学書や専門書、特にキリスト教の文献が豊富な誠文堂書店。さらに親子丼が安くておいしい「半ドン」、伊勢佐木モールにあるコーヒー豆の専門店「南蛮屋」……住んでいるからこそ知っているスポットをどんどん紹介して下さる大谷さん。全長1.2kmに及ぶこの伊勢佐木モールは、「イセブラ」という言葉が生まれた「まち歩きの街」としても有名な場所。明るく気持ちのよいストリートには、面白そうなお店がたくさん並んでいます。

伊勢佐木モールの「JohnJohn」で買ったホットドッグを頬張りながら歩いていると「ここは昔映画館だったんですよ」という場所が何カ所か。ここ10年で少しずつ横浜の街も変わってきているそうです。それでも横浜に住み続ける理由は?

「生まれ育った八戸もそうなんですけど、港町で、海が近いのが好きなんです。海があると方角が分かるので便利だし、それが体に合ってるのかな」。

「街」=雑多で人の接点が希薄な場所、と考えている大谷さん。生まれた八戸も同じような「街」であり、そのため横浜に来た時も違和感がなかったそう。「だから八戸を地方とか、横浜を都会とか思ったことはありません。僕にとってはどっちも一緒だし、ただ『街』に住み続けていたいだけなんです」
そういえば、活動を共にすることが多い菊地成孔さんも、同じく港町・銚子生まれの歌舞伎町暮らし。港町に生まれ「街」に暮らすという共通点がありますね。「お互いごちゃごちゃしたところが好きで、郊外には住めない性格なんです。偶然なんですけど、シンパシーを感じますよね」。

伊勢佐木町三丁目〜横浜橋商店街

伊勢佐木町三丁目の風俗街、横浜橋商店街入口近くにある「豊野丼」などを覗き、立ち飲みできる「浅見屋」で乾杯。お洒落なベイエリアや伊勢佐木モールから一転、魚屋など食料品店などが並び、人の営みを肌で感じられる町並みです。その間に境界はなく、徒歩で移動できるエリアに密集しているというのも横浜の意外な側面。この街の性質は、大谷さんの作品にどんな影響を与えているのでしょうか?

「自分じゃよく分からないけど、コツコツやるのがいちばん大切だとは感じています。だって、映画業界とか音楽業界は不況で大変とか言うけど、現場では未だにサンドイッチもコーヒーも出てくるでしょ。それはおかしいんです。一本80円の焼き鳥を毎日必死で売ればいいし、僕はそうありたい」。

それは商店街で魚や野菜を売る人たちと同じ価値観。毎日の営みや生活があるからこそ作品は生まれる。大谷さんはそう表現します。

この界隈に住んでいたこともある大谷さん。街の隅々まで詳しくガイドしてくれました。

ジャック&ベティ

最後にやって来たのはミニシアターの「ジャック&ベティ」。学生の頃は毎日通い、「僕の学校だった」と振り返る大谷さん。ヒッチコックの特集上映や、勝新と雷蔵の二本立て上映など、ここで鑑賞した映画は数知れず。大谷さんが横浜に移り住んだ頃にオープンした映画館でもあり、思い入れも深いそうです。

「青森にいた頃から映画は好きでした。地元ではいつも2本立てで観てて、それが変な組み合わせだったことをよく憶えてます。『メジャーリーグ』と『未来世紀ブラジル』、『霊幻道士2』と『キングコング2』とか(笑)」。

映画館の魅力は「人が映すこと」にあるそう。上映する作品を選ぶ人がいて、映写する人がいる。自分ではない誰かがその作品を「見せてくれる」ことに、感動すら覚えるといいます。間もなくジャック&ベティで開催される『爆音映画祭@横浜』の上映ラインナップを見て嬉々とする大谷さんの、映画に対する想いが感じられた一幕でした。

「僕は実家から出る時に、これからは『街』で暮らしてジャズをやろうとを決めたんです。理由は覚えてないし、そこに意味はない。大事なのは自分で決めたってこと」。そう大谷さんは語ります。その決意を固めた日から、音楽をやめようと思ったことも、違う街に住もうと思ったことも全くないそうです。

「他の選択肢が選べるならとっとと辞めればいいけど、僕には無理。だから今は、降りられないから続けているだけ。鯖は鯖を辞められないし、猫は猫のまま死ぬでしょ。それと一緒(笑)」 大谷能生は大谷能生を降りれない。常に自然体な大谷さんの創作の源に、少しだけ触れられた気がしました。


住所:横浜市中区若葉町3-51
電話:045-243-9800
HP: http://www.jackandbetty.net/

爆音映画祭@横浜

大谷能生さんと歩いた横浜、いかがでしたでしょうか。アートやクリエイティブカルチャーというイメージがある横浜ですが、人の生活が根付いているのもまた、歴史ある横浜の姿。日々の営みと作品は常に地続きなのです。この独特のリアリティがあるからこそ、新しい潮流が生まれる刺激的な場所として発展しているのかもしれません。「僕がやっているのはクリエイトじゃない。ただ、この街で生活しているだけ」。そう強調する大谷さん。数々の作品が生み出される横浜の「生活」を、ぜひ肌で感じみて下さい。

『INVITATIONtoOPENYOKOHAMA 2010  -くわしくはヨコハマの街で-』開催!

日本にあるさまざまな観光地の中でも、特にカルチャーに力をいれている街「ヨコハマ」。開港以来、長年にわたり培ってきた開放的で自由な空気が、創造性を豊かに育んできたのでしょう。そんなクリエイティブシティ・ヨコハマが、9月10日(金)から11月3日(水・祝)の2ケ月間、街の魅力をより多くの方々に届けるためのキャンペーンを開催します。また公式ウェブサイトでは、創造界隈拠点、文化施設、街中空間などで開催される200を超えるイベントやツアーの情報が網羅されているほか、twitterを活用する団体のタイムラインも掲載され、現場の様子や最新情報を提供中。そしてさらに、市民や横浜にゆかりのある1000人から<あなた>へ宛てた招待状も公開中されています。

公式ウェブサイトをチェックして、ぜひあなたの興味のある横浜を体験してください。

今回ご登場いただいた 岡田利規さんからの 招待状も掲載中
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