邦ラッパー12人との競演 DJ BAKUインタビュー

CINRA.NETが現在のような情報サイトになる以前にも特集を組んで紹介したDJ BAKU。これでCINRA.NET史上最多となる三回目の登場!テクノ、ロック、ダブステップなど他ジャンルのエッセンスを盛り込んだ独自のビート・メイキングで、日本国内はもとより世界各都市から熱いラブコールを受けるDJ BAKUが、12人のジャパニーズ・ラッパーをフィーチャーリングしたアルバム『THE 12JAPS』をリリース。さっそく彼に話を聞いた。

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今作はラップがメインだから、俺はある意味裏方なんですよね

―日本人ラッパー12人にフォーカスした本作ですが、制作に至った経緯は?

BAKU:以前からラップ・アルバムを出したいと思っていたんです。ツアー先で般若と一緒になる機会があって、一緒にやりたいねって話をしたり、MIC JACK PRODUCTIONのB.I.G.JOEさんが服役を終えて刑務所から帰ってきたり、タイミングが来たというか、やるなら今かな、と。去年のアルバムを出してからすぐ動いてたので、NIPPSとKーBOMBの曲はもうすでに昨年できてましたね。

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―2008年に4月にリリースした前作『DHARA DANCE』はソリッドなインスト・ビーツといった印象でしたが、今作は派手やかな作品ですね。

BAKU:インストのビート・メイキングはもちろん好きですけど、ラップものも好き。自分の中ではどちらも同じくらいやりたいことなんですよね。自分はそういうこと (=ラップもの)をやらないアーティストだと思われていたのかもしれないけど、今回ラップにフォーカスしたことで色んな可能性が広がったように思います。

―ラップをフィーチャーするにあたり制作面で意識したことはありますか?

BAKU:サビの音数を減らしたり、ラップが活きるような工夫をしました。ブレイクダンサーと一緒にイベントに出る機会もあるんですけど、ブレイクの部分が一番盛り上がるんですよ。あとはビートのずらしかたとか。今回、トラック先行で制作し、各アーティストに3曲 づつ投げて、それぞれ好きなものを選んでもらったんです。それぞれのラッパー用にトラックを用意してたんですけど、予想していたのと違うのをチョイスされたり意外性はありましたね。今作はラップがメインだから、俺はある意味裏方なんですよね。

全部俺の色に染めてしまうのであれば、リリックに関しても「この 歌詞は変えてほしい」と言うこともできたのかもしれないけど、それはやりたくなかったんです。もちろん自分の作品なんだけど、ある意味一歩引いていて……そのあたりの絶妙な感じを保ちたかったんです。



漢くんは器用だし、フリースタイルでめちゃくちゃ実力を発揮する革命的なMCだと思います。

―THA BLUE HEARBのILL-BOSSTINO、MIC JACK PRODUCTIONのB.I.G. JOE&INI、NIPPS、K-BOMB、Shing02、SD JUNKSTAのNORIKIYO&BRON-K、FREEZ(RAMB CAMP)、HIDADDY(韻踏合組合)、漢(MSC)、般若……それぞれ個性的で異なるバック・グラウンドを持つラッパー12人ですが、選出の基準は?

BAKU:実は基準という基準はないんです。単純に自分がかっこいいと思うラッパーに声をかけました。誘いたい人は他にもいましたが、最初はこの12人かなと。

―インディペンデントなスタンスのアーティストばかりですが?

BAKU:以前から交流のあるアーティストにお願いした結果、インディペンデントな顔ぶれになりましたね。全く知らないアーティストにいきなりお金を払ってオファーして……ということはしたくなかったんですよ。

―各MCの印象はどうでした?

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BAKU:意外と初めて一緒に仕事する人ばかりなんです。SHINGOくん、BOSSくんも。10年前から交流はあるんですけど、彼の曲を作るのは初めて。SHINGOくんは海外に住んでいるのであまり会う機会がないし。今回、収録曲のリリックを英訳してもらっているんだけど、SHINGOくんは英訳も自分でしてるんですよね。核問題にまで言及するようなラッパーは世界中探しても他にいないんじゃないかな?

彼はとてもインテリジェンスがあるラッパーだと思います。とは言え、ライブはノリノリで小難しさがないのが素晴らしい所だと思います。最初、さわやかなトラックを渡してたんですけど、ロックっぽいのを選んできましたね。SHINGOくんはサッカーを観るのが好きらしく「GOOOOOOOOOOOAL!!!!!!!」って曲名もO(オー)が11文字(笑)。元気が出るようなポジティブな曲に仕上がりました。

―MIC JACK PRODUCTIONのINIと韻踏合組合HIDADDYの組み合わせは意外性がありますが?

BAKU:この二人とは同年代で、少し前に三人で遊んだことがあって、その時の印象が強烈に残っていて、この組み合わせでお願いしてみました。HIDADDYはフリースタイルが滅茶苦茶巧いのに<無冠の帝王>になってしまっていて、まだまだ過小評価されているんじゃないですかね? INIとのタッグは少し変わった感じで面白いと思いますよ。

―漢と般若の2大MCがコラボした“COAST TO COAST”はアルバムの中でのハイライト曲ですね。

BAKU:二人ともフリースタイルのチャンプだし、彼らに対しては同世代でなんていうかライバルみたいな意識があるんです。別々の曲でオファーしても良かったんですけど、この二人、ステージで競演することはあっても、意外にも一緒に演った音源はリリースされていないんですよね。この二人は僕の中での東京のトップMC。なので「東京、東京」というスクラッチをひたすら集めて曲にしました。

―BAKUさんとそれぞれ縁の深い二人ですが?

BAKU:漢くんは器用だし、フリースタイルでめちゃくちゃ実力を発揮する革命的なMCだと思います。もしメジャーに所属していてもオファーしていたと思いますよ。般若は17歳の時に一緒に組んで以来なんですけど、前回のイベント『KAIKOO』で久々に一緒にライブした時に、相当緊張しましたね。本人自身は変わらないんだけど、すごくプロフェッショナルな感じで。「ここでこう言ったら、こうリアクションが帰ってくる」っていうのを熟知しているというか。

とはいえライブは生もので、即興で対応しなきゃいけない……相当技術がいるものですよね。結局、停電してしまって、般若はフリースタイルだけで客を盛り上げたんです。それをやってのける度胸とセンスと技術には純粋に「すげえなぁ」と関心しましたね。

いまだにラップって英語で「YO! YO!」って言ってるような、薄っぺらなイメージしかないのが現状だと思います。それが自分的にはちょっと信じられないです。

―いわゆるアンダーグラウンド・ヒップホップと呼ばれるものが脚光を浴びるようになったのは90年代後半。この10年で状況はどう変わったと思いますか?

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BAKU:NIPPSさんや般若も昔はメジャーレーベルと契約していたけど、今はインディーズで独自の活動を続けてますよね。今回のアルバムに参加してくれている人たちは、良い意味でメジャーからはぐれた人、意識的に背中を向けた人、様々なタイプがいると思うんですが、とにか く今はみんなそういうへんな括りから独立するようになったと思います。

今回いろんなインタビューで“ジャパニーズ・ラップシーン”について、みたいなこと を聞かれるんですけど、実は良く知らないんですよね。SHINGOくんも仲良かったけどべったりではなかったし、その時期、般若とも会ってなかったし。90年代後半から00年代前半は、イベントをやって、カセットテープを年2本リリースしていたんですけど、それって“シーン”の、めちゃくちゃ偏った部分ですよね? ちなみにテープシリーズはコンプリートしないとジャケットの絵が完成しないんですけど、最後の一本をまだ出していないんで、出したいなぁ(笑)。

―ILL BOSSTINOの“JAPANESE HIPHOP AND ME”では、このアルバムのテーマである日本語ラップへの愛憎が綴られていますよね。この曲がアルバムの締めくくりになっていますが、曲順は意図的に? 全12曲を通しての裏メッセージのようなものでしょうか?

BAKU:BOSSくんのことだから、(リリックを)相当考えてきたとは思いますよ。曲順は偶然なんですが、全曲並べてみて、やはり最後に収録するしかないと思いました。BOSSくんのリリックではあるけれど、俺としても共感する部分はありますし。自分のアルバム全部に関してそうなんですけど、聴いて先への希望を持ってもらいたいです。大げさかもしれないけど、毎日何かと戦っている人に聴いて欲しい。いまだにラップって英語で「YO! YO!」って言ってるような、薄っぺらなイメージしかないのが現状だと思います。それが自分的にはちょっと信じられないです。“意味のあるラップ”もあるということを知って欲しいし、ラップを聴いたことのない人にこそ、このアルバムを早く聴いてもらいたいですね。

―今後の方向性は?

BAKU:DJで全部ラップをかけても俺じゃなくてもいいかなと思いますし、色々混ぜつつやっていくつもりです。たまたまレゲエの人達とも最近会うようになって、たとえばJAMBO MAATCHくんが般若のラップが好きって言っていて、まだ全然頭で考えてるだけの段階だけど、もしかして今後コラボもできるのかな、と思ったり。今までそういうことをやった人っていないでしょ(笑)?

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リリース情報
DJ BAKU
『THE 12JAPS』

2009年7月22日発売
価格:2,900円(税込)
POPGROUP Recordings POP119

1. PHOENIXION 09 ft. B.I.G. JOE
2. GOOOOOOOOOOOAL!!!!!!! ft. Shing02
3. WM
4. WALKMAN ft. NIPPS, K-BOMB
5. スサノオ ft. BRON-K
6. ASIAN SEED Ver.2 ft. HIDADDY, INI
7. INCREDIBLE STYLE CLASH
8. 眠る街 ft. NORIKIYO
9. TOKYO
10. COAST TO COAST ft. 漢, 般若
11. MY ROOTS ft. FREEZ
12. JAPANESE HIPHOP AND ME ft. ILL-BOSSTINO

プロフィール
DJ BAKU

HIPHOPを基盤にしながらもターンテーブルを操り常に新しいダンスミュージックを提案する、DJ/トラックメイカー。'99~'04までの5年間のARTIST達との交流を描いた音楽ドキュメンタリー映画「KAIKOO/邂逅」を '05年 4月に発表。自ら監修/音楽もつとめた。'06年6月には待望の1st.Album『SPINHEDDZ』をPOPGROUPRecordindsより リリース。そして'08年、2nd Album『DHARMA DANCE』(ダルマ ダンス)をリリース。 前作よりもぐっとBPMを上げ、生楽器の要素を取り入れたDance Music Albumに仕上げた。'09年5月には日本人のヒップホップ名盤を中心に集めミックスしたオフィシャルMIXCD『JAPADAPTA』をリリース。そして7月22日にDJ BAKUが邂逅/KAIKOOしてきた、日本代表のラッパー12人とのフィーチャリングアルバム、その名も『THE 12JAPS』をリリース!参加アーティトはILL-BOSSTINO、Shing02、B.I.G. JOEを含むスキル/実力、共に最高峰のMC12人!



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