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「断面の世代」の作家 束芋インタビュー

「断面の世代」の作家 束芋インタビュー

インタビュー・テキスト
小林宏彰
撮影:ノダ
2009/10/27

横浜美術館の開館20周年記念展として、12月11日(金)より約3ヶ月にわたって開催される『束芋 断面の世代』展。国際的な活躍も目覚ましく、まさに若手美術作家のトップランナーと呼ぶにふさわしいアーティスト、束芋による展覧会だ。折しも活動10年目となる今年は、彼女にとって大きなターニングポイントを迎える時期でもある。想像を超える、驚きにあふれた作品を生み出しつづける彼女の挑戦について、じっくりとお伺いした。

(インタビュー・テキスト:小林宏彰 撮影:ノダ)

「断面の世代」はペラッペラ?

「断面の世代」の作家 束芋インタビュー

─束芋さんの横浜美術館での個展が、いよいよ12月11日(金)からスタートしますね。現在、制作も佳境でしょうか?(注:取材日は9月29日)

束芋:大変な時期ですね〜。作業の方向性が決まってくると気持ちも楽になるので、作業量が多くても苦にならないんですが、方向性が決まらずに何もできないときが本当にしんどくって。それから、長野の山奥に住んでいるので、制作もそこでやっているんですが、ものすごく睡魔が襲ってくるんですよ(笑)。夜になると、家の周りに灯りが全然なくなって。おかげで制作が困難になっています(笑)。

─展覧会のテーマとして掲げられたのは、「断面の世代」という言葉です。1975年生まれの束芋さんが属する世代を、その上の「団塊の世代」と比較して出てきたというこのキーワード。いつ頃から構想があったのでしょうか?

束芋:「断面の世代」というタイトルを付けたのは、2008年の7月くらいです。私が思い描く展覧会のイメージを、姉に話したところ、とても的確な言葉で表現してくれたので、このタイトルをつけました。

─「断面」って、どういう意味なんでしょうか?

束芋:私が言う「断面」は、三次元のものを切断したときに出てくる、二次元を指しているんです。例えば、ここに太巻きがあるとします。太巻きじたいはとても分厚いですけど、切断面だけ取り出せば、すごくペラペラです。でも、そのペラペラな二次元を見ると、三次元の情報、つまり太巻きの中身を全て知ることができる。私たちの世代の特徴って、そういう「ペラペラなんだけど、全ての要素が詰まっている」ようなところだと思っているんです。

束芋《団断》(イメージ)2009年、映像インスタレーション
Courtesy the Artist and Gallery Koyanagi

─「断面の世代」は、ペラペラの世代…。

束芋:例えば、今のライターさんって、インタビューをして原稿を書くだけじゃなくて、カメラで撮影もするし、音声も書き起こすし、デザインをすることもありますよね。昔なら、それぞれのパートを分業していたと思うんです。でも今は1から10まで全てのパートをこなさなきゃいけないことが多い。こういうことで、「断面の世代」は、自分は何でもできると思えてしまう。

その反面、「団塊の世代」の方々は、細かく分業だった分、しっかりとプロフェッショナルだったかもしれない。たとえばそれぞれが太巻きのネタで言えば「お米」「海苔」「かんぴょう」「きゅうり」である、というように、キャラクターとしての特色をハッキリと持っているのが特徴だと思うんです。

─なるほど。それと比較すると「断面の世代」の方々は、そうしたネタを少量ずつ含んだ「太巻きの薄切り」だと。

束芋:そうなんです。こうした違いから、それぞれの世代で行動の仕方にも差が出ると思うんですよ。「断面の世代」は、集団よりも個を尊重します。集団で行動していても、気に入らないパートナーがいると「私抜けるわ」という選択をする。自分でなんでもできると思っているだけに、「ひとりでもやっていける」と思ってしまう。そういう「甘さ」が、私たちの世代にはあるんじゃないかなと。無理に太巻きになろうとして個をないがしろにするのではなくて、自分という個にとってよりよいと思える方向を選び取るのも特徴のように思います。

でも「団塊の世代」は、個よりも集団です。例えば「海苔」キャラのような、太巻きをまとめるリーダー的な存在がいないと、すぐにバラバラになってしまう集団ではあるのですが、まとまったときの瞬発力や力強さはすごい。常に集団という単位の中で、自分はどういう行動をすべきかを考えるんです。そういう違いがあるような気がしますね。

2/4ページ:私、腹が立ったときの方が前進できるんです。

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イベント情報

横浜美術館開館20周年記念展
『束芋 断面の世代』

2009年12月11日(金)〜2010年3月3日(水)
会場:横浜美術館
時間:10:00〜18:00まで(金曜は20:00まで、12月25日を除く)※入館は閉館の30分前まで
休館日:木曜日(2月11日(木・祝)は開館)、12月29日から1月1日、2月12日

関連イベント
康本雅子×Tucker×束芋 ダンス・ライブ『油断髪』

2009年12月25日(金)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:横浜美術館グランドギャラリー
料金:前売3,000円 当日3,200円 ※残席がある場合のみ(全席自由、1ドリンク付き)
定員:280名
※開演前(18:30から19:30まで)に展覧会を鑑賞可能

演劇公演 WANDERING PARTY
『total eclipse -トータル・エクリプス-』

2010年1月16日(土)14:00 / 18:30
2010年1月17日(日)14:00
会場:横浜美術館レクチャーホール
料金:前売3,000円 当日3,200円(全席自由)
定員:240名
※展覧会チケット付

プロフィール

束芋

1975年兵庫県生まれ、長野県在住。1999年、京都造形芸術大学卒業。アーティスト名は、本名が田端で、さらに次女であったことから「田端の妹」、略して「タバイモ」と呼ばれていたことに由来する。1999年、大学の卒業制作として制作したアニメーションによる映像インスタレーション作品『にっぽんの台所』が、キリンコンテンポラリー・アワード1999最優秀作品賞を受賞。2001年には、第1回目の横浜トリエンナーレで最年少の作家として、『にっぽんの通勤快速』を出品。2002年、五島記念文化賞新人賞受賞により、翌年、ロンドンで一年間研修を行う。2002年、サンパウロ・ビエンナーレや、2006年、シドニー・ビエンナーレ、2007年、ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア館)など数々の国際展やグループ展に出品を続け、日本を代表する映像インスタレーション作家の一人として注目を集めている。2006年、原美術館やパリのカルティエ財団で個展を開催。2009年12月11日より、横浜美術館にて『束芋 断面の世代』を開催。束芋にとって初の国内公立美術館での個展となる。

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