特集 PR

映画『ライブテープ』監督・松江哲明×前野健太インタビュー

映画『ライブテープ』監督・松江哲明×前野健太インタビュー

インタビュー・テキスト
小林宏彰
撮影:柏井万作

撮影は、ワンチャンスで

─本作は、74分ワンカットで撮られています。mini-DVテープが記録できる「80分」ギリギリまで撮ろうという発想は、なぜ出てきたんでしょう。

映画『ライブテープ』松江哲明(監督)×前野健太(主演)インタビュー

松江:これまでも、『デトロイト・メタル・シティ』のメイキングで、ライブ映像をワンカットで撮ったりもしていたんです。僕にはたくさんのカメラを使い、カットを割って、カッコ良く編集するという発想がないんです。というか、出来ないんです。むしろドキュメンタリーの手法で、ナマモノとして音楽を撮るということをやりたいなと、ずっと思っていました。

音楽ドキュメンタリーを観ていて不満に思うことが二つあるんです。一つは、ライブハウスを撮っている映画。なぜなら、映画の中でライブを聴いている人たちが、僕ら観客よりも気持ちよさそうだからです。映画なんだから、カメラのこちら側にいる観客が最初に楽しめるものじゃないと。もう一つは、作り手がミュージシャンをリスペクトするあまり、音楽寄りになりすぎている映画。ライブを見せるためにカメラワークを制限して、単に記録しただけ、といったものになっているんですね。ミュージシャンが音楽を信じているように、僕は映画の力を信じてるんです。音楽と映画が本気でぶつかり合った映画こそ、僕がつくりたいものなんですよ。

─そうした思いから、本作が生まれたんですね。

松江:そうなんです。でも、今回のような作品を撮りたいと考えたとしても、現実的に映画として成立するかどうかは、監督よりもカメラマンの力量にかかってくる。そう考えて、僕が本当に信頼しているカメラマンの近藤龍人さんに、電話で相談したんです。「僕が自腹を切って、自主制作でこういう映画を撮りたいんだけど、ワンカットでいけるかな?」って聞いたら、彼は笑って「出来ますよ」と。

─電話で即答だったんですか!

松江:彼の覚悟って、すごいと思いますよ。ワンカットの映画って、カメラマンの迷いだったり計算だったりを、編集せずにお客さんに晒さなきゃいけないんですからね。でも、撮影が終わった後、彼は「いつも自分が撮っているドキュメンタリーと同じでした」なんてさらっと言っていました。本当にすごい人だなぁと思いましたね。

─まさに近藤龍人カメラマンあっての、本作だったと。

松江:はい。撮影をワンチャンスにしようって言い出したのも近藤さんなんです。僕は三回くらいやろうって言っていたんですけど、「これは三回は出来ない、一回でいきましょう」と。彼が言うには、テープが60分回ったあとにどんなNGが出たとしても、それはもう映画なんだ、と。

あぁ、もうダメだ、俺のダメなところも全部映ってしまうんだ、って(前野)

映画『ライブテープ』松江哲明(監督)×前野健太(主演)インタビュー

前野:はじめにお話をもらったときは、「カッコ良く編集してもらえたらいいな!」と思っていたんですが、ふたを開けてみたら編集ナシだった(笑)。「ワンシーンワンカットでいきます」って松江さんから言われたとき、あぁ、もうダメだ、俺のダメなところも全部映ってしまうんだ、って。

松江:「前野さんってこんなにイイんですよ!」という作品をつくる必要はないんです。むしろ、良いところも悪いところも全部含めて見せることで、前野さんの音楽をお客さんと共有できるようになりたいんです。だから、ファンが観に来るものじゃなくて、前野さんを知らない人がこの映画を観て、あぁ良かったな、と思ってほしいんですよね。

それと、一つ自慢出来るのは、この映画が、テープ代の2,000円だけしかかかっていないということです。「お金がない!」って言っている映画人には、テープ代だけでも『ライブテープ』が出来たよ、と言いたいんです。

3/4ページ:前野さんの歌には、嘘がないんです(松江)

Page 2
前へ 次へ

作品情報

ライブテープ
『ライブテープ』

2009年12月26日(土)より吉祥寺バウスシアターにて公開、その後全国順次ロードショー

唄・演奏:前野健太
演奏:〜DAVID BOWIEたち〜(吉田悠樹(二胡)、大久保日向(ベース)、POP鈴木(ドラムス)、あだち麗三郎(サックス))
参拝出演:長澤つぐみ
監督:松江哲明(『童貞。をプロデュース』『あんにょん由美香』)
撮影:近藤龍人(『ウルトラミラクルラブストーリー』)
録音:山本タカアキ(『SR サイタマノラッパー』)
イラスト:若杉公徳(『デトロイト・メタル・シティ』)
制作:Tip Top
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
宣伝協力:菫青石映画株式会社

プロフィール

松江哲明

1977年生まれ。東京都出身。99年日本映画学校卒業制作として『あんにょんキムチ』を監督。国内外の映画祭に参加し、山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波特別賞、NETPAC特別賞、平成12年度文化庁優秀映画賞などを受賞。 その後、OV『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズ、『カレーライスの女たち』、『セキ☆ララ』などを制作。2007年に発表の『童貞。をプロデュース』、2009年に入って発表の『あんにょん由美香』が相次いで大ヒットを記録。著書に『童貞の教室(よりみちパン!セ)』等があり、「映画秘宝」「映画芸術」では映画評を発表している。

前野健太

1979年、埼玉県生まれ。ミュージシャン。2000年頃より作詞・作曲を始め、東京都内を中心にライブ活動、自宅での録音を精力的に行う。2007年9 月、アルバム『ロマンスカー』にてデビュー。同作収録の曲“天気予報”が映画『デトロイト・メタル・シティ』のメイキング映像の挿入歌として使用される。 2009年1月、セカンドアルバム『さみしいだけ』発表。日常の機微を丁寧にすくいあげる歌詞とポップなメロディー、さらにはライブでのアグレッシヴな演奏で注目を集める、新時代のシンガーソングライター。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

岩井勇気(ハライチ)『ひねくれとか言われても俺はただ自分が進みたい道を選んでるだけ』

ドリームマッチでの『醤油の魔人 塩の魔人』、ラジオで突如披露した推しキャラケロッピをテーマにしたEDM調楽曲『ダメダメケロッピ』など、音楽的な才能に注目が集まる岩井勇気。今回はミツカン「こなべっち」とタッグを組み、自らがマイクを取ってラップに挑戦。しかもこの動画、岩井がこれまでラジオや書籍の中で言及してきた、珪藻土のバスマットや、海苔、メゾネットタイプの部屋、クラウス・ノミなどのネタが詰まっていて、まさか岩井さんの自宅なのでは……? と隅々まで見てしまう。つぎはぜひ、自作のトラックとリリックによる曲が披露されることを待っています。(川浦)

  1. 映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が突きつける、社会に深く根づく性差別 1

    映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が突きつける、社会に深く根づく性差別

  2. 横浜流星が「つらいかぜ」を打ち砕く プレコールの新CM「闘い続ける」篇 2

    横浜流星が「つらいかぜ」を打ち砕く プレコールの新CM「闘い続ける」篇

  3. ジョン・レノンが時代に残す闘いの爪痕、ヨーコがもたらしたもの 3

    ジョン・レノンが時代に残す闘いの爪痕、ヨーコがもたらしたもの

  4. 木村拓哉を操上和美が撮影『SWITCH』原宿特集に小泉今日子、池田エライザら 4

    木村拓哉を操上和美が撮影『SWITCH』原宿特集に小泉今日子、池田エライザら

  5. King Gnu井口理が獣医師役 野村不動産「プラウド」ブランドムービーが公開 5

    King Gnu井口理が獣医師役 野村不動産「プラウド」ブランドムービーが公開

  6. 高橋一生主演×荒木飛呂彦原作ドラマ『岸辺露伴は動かない』12月NHKで放送 6

    高橋一生主演×荒木飛呂彦原作ドラマ『岸辺露伴は動かない』12月NHKで放送

  7. カルティエの新作キャンペーンに常田大希、池田エライザ、野田洋次郎ら起用 7

    カルティエの新作キャンペーンに常田大希、池田エライザ、野田洋次郎ら起用

  8. 大滝詠一『A LONG VACATION』40周年記念盤が全音楽記録媒体でリリース 8

    大滝詠一『A LONG VACATION』40周年記念盤が全音楽記録媒体でリリース

  9. YOASOBIがGoogle PixelのCMソングを担当 新曲“アンコール”を起用 9

    YOASOBIがGoogle PixelのCMソングを担当 新曲“アンコール”を起用

  10. スピッツ、全着席のコンサートを11月に東京ガーデンシアターで開催 10

    スピッツ、全着席のコンサートを11月に東京ガーデンシアターで開催