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映画『ライブテープ』監督・松江哲明×前野健太インタビュー

映画『ライブテープ』監督・松江哲明×前野健太インタビュー

インタビュー・テキスト
小林宏彰
撮影:柏井万作

前野さんの予想を裏切ろうと思って、直前で質問を変えました(松江)

─歩いている前野さんに、松江さんが話しかけますよね。すごく面白いと思ったんですが、撮影前にその段取りは前野さんに伝えていたんですか?

前野:前野さんを揺さぶりますよ、とは聞いていました。

松江:それを伝えたのは当日の午前中です。撮影は15時スタートでしたが、直前まで全然違った質問を用意していました。でも、前野さんの予想を裏切ろうと思って、「やっぱり変えよう」と。

─声をかけられたときの、前野さんの反応がとても良かったですね(笑)。

松江:そうなんです(笑)。

─後半、立ち止まってお二人が話し込む場面がありますね。あの質問の内容も、直前で変更したんですか?

前野:あそこだけは、しっかり話しましょうって打ち合わせしていたんです。

松江:“天気予報”について聞くつもりです、とは言っていましたが、具体的な内容については伝えていないはずです。さっきも言いましたが、父が亡くなったことが映画を撮る動機としてすごく大きかったので、前野さんがご自分のお父さんについて歌った“天気予報”については、どうしても聞く必要があった。あの場面って、カメラがすごく引いていて、僕の姿まで入れ込んでいますよね。それは、「この映画はやっぱり松江の話もしなくちゃならない」って、スタッフが考えてくれた結果なんですよ。

映画『ライブテープ』松江哲明(監督)×前野健太(主演)インタビュー

街でつくってきた歌を、街でもう一回丁寧に歌うことも、結構スリリングなんじゃないかって(前野)

─そして、ラストシーン。あそこがやっぱり、いいなぁと思いました。

松江:74分全部見ないと、絶対にわからないラストシーンですね。映画観た後に思ったんですけど、あそこには小さい子どもの頃の僕がいるんです。そして、自転車を止めているのは、10年前の僕なんですね。

僕は吉祥寺で育ったので、前野さんが歩いたルートは、僕が元旦に家族と歩いていたルートなんです。でも父親が死んで、それが絶対に出来なくなってしまった。そのルートを、前野さんだったり、今の仲間たちと回るというのは、僕にとって必要なことだったんですね。

前野:ラストシーン、いいですよね。僕は、自分が映っていないから好きなんですよ(笑)。自分が映っていると、やっぱりよく分からないんで。

松江:あの映画は、80分テープで撮るということが大きな課題だったので、途中の段取りはしっかり決めていました。でも、最後の“天気予報”の後になにが起きるかというのは、分からないんですよ。本当に分からないんです、15時にスタートして16時20分にどうなっているかだなんて。ただ、僕が近藤さんに唯一言っていたのは、「最後になにが起きるのか分からないけど、そこまで来たらなにかが起きるはずだから、それを撮ってくれ」ということだったんです。意味分かんないですよね(笑)。それで、近藤さんが拾ってくれたのが、あの画だったんです。

映画『ライブテープ』松江哲明(監督)×前野健太(主演)インタビュー

前野:僕の目的は、とにかくフィニッシュすることでしたね。俺が途中でやめちゃったら、終わっちゃいますからね、この映画が。じつは、俺がなにもやらなくなったら面白いんじゃないか? とか、ギターで暴れだしたら面白いかな? とか、撮影中にいろいろと考えていたんですよ。でも、そんなことをしなくても、僕が街で感じ、街でつくってきた歌を、街でもう一回丁寧に歌うことも、結構スリリングなんじゃないかと思って。シンプルにやることの強さ、というか。

─撮影終了後の達成感は、ひとしおだったのではないですか?

前野:もう、みんなで抱き合って。俺、興奮しちゃって「もっかい歌っていいすか?」って“熱海”という曲をやろうとしたんですけど、警備員に「一曲だけ」って頼み込んでステージに上がっていたので、みんなから「ダメダメダメダメ!!」って止められて(笑)。でも、やり遂げた! という感じがすごくありましたよね。

松江:あった。泣いたもん、現場で。そのとき喜びすぎて、足、捻挫したんですよ(笑)。そのまま椅子に担がれて、打ち上げにいきました。

前野:僕はもう、ただただ幸運でしたね。スタッフの方々が本当にすごい人たちだったので、「しっかり70分間歌わせて頂きました、ありがとうございます」という、そんな感じなんですよね。

松江:企画の当初は、この映画を劇場公開することさえ考えていなかったんです。撮影がうまくいくかどうか、全くわからなかったので。それが現状のようないい流れになってきたのは、この映画に賛同して動いてくださった方々のお陰です。とにかく「つくらなくちゃいけない」映画だったので、こうして出来たものに対して評価をして下さり、東京国際映画祭や劇場で公開されるというのは、すごく嬉しいことですね。

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作品情報

ライブテープ
『ライブテープ』

2009年12月26日(土)より吉祥寺バウスシアターにて公開、その後全国順次ロードショー

唄・演奏:前野健太
演奏:〜DAVID BOWIEたち〜(吉田悠樹(二胡)、大久保日向(ベース)、POP鈴木(ドラムス)、あだち麗三郎(サックス))
参拝出演:長澤つぐみ
監督:松江哲明(『童貞。をプロデュース』『あんにょん由美香』)
撮影:近藤龍人(『ウルトラミラクルラブストーリー』)
録音:山本タカアキ(『SR サイタマノラッパー』)
イラスト:若杉公徳(『デトロイト・メタル・シティ』)
制作:Tip Top
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
宣伝協力:菫青石映画株式会社

プロフィール

松江哲明

1977年生まれ。東京都出身。99年日本映画学校卒業制作として『あんにょんキムチ』を監督。国内外の映画祭に参加し、山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波特別賞、NETPAC特別賞、平成12年度文化庁優秀映画賞などを受賞。 その後、OV『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズ、『カレーライスの女たち』、『セキ☆ララ』などを制作。2007年に発表の『童貞。をプロデュース』、2009年に入って発表の『あんにょん由美香』が相次いで大ヒットを記録。著書に『童貞の教室(よりみちパン!セ)』等があり、「映画秘宝」「映画芸術」では映画評を発表している。

前野健太

1979年、埼玉県生まれ。ミュージシャン。2000年頃より作詞・作曲を始め、東京都内を中心にライブ活動、自宅での録音を精力的に行う。2007年9 月、アルバム『ロマンスカー』にてデビュー。同作収録の曲“天気予報”が映画『デトロイト・メタル・シティ』のメイキング映像の挿入歌として使用される。 2009年1月、セカンドアルバム『さみしいだけ』発表。日常の機微を丁寧にすくいあげる歌詞とポップなメロディー、さらにはライブでのアグレッシヴな演奏で注目を集める、新時代のシンガーソングライター。

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