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映画『ライブテープ』監督・松江哲明×前野健太インタビュー

映画『ライブテープ』監督・松江哲明×前野健太インタビュー

インタビュー・テキスト
小林宏彰
撮影:柏井万作

偶然性がない映画って、ダメなんですよ(松江)

─前野さんが吉祥寺の武蔵野八幡宮からスタートして、ギターを手に街を歩きながら弾き語りをしていくわけですが、曲順は事前に全て決めていたんですか?

映画『ライブテープ』松江哲明(監督)×前野健太(主演)インタビュー
前野さんの進路を示す地図のみで、
『ライブテープ』は撮られた
※クリックで拡大

前野:決めてはいたんですけど、どこかでズレちゃったんですよね。

松江:前野さんが、歩くうちにルートを外れたりするから、曲順も変わっていったんですね。スタッフが先回りして、「あと何分くらいで来る!」とか「こっちに行く!」というように、連絡を取り合っていたんですよ。

前野:街の中を歩きながら歌うことって、普段はないですからね。すごく不思議な体験でしたよ。4曲目の“100年後”に、「100年後、君と待ち合わせ」という歌詞があるんですが、歌っているとき画面に映っているカップルや家族って、100年後は絶対に存在しないじゃないですか。“友達じゃ我慢できない”を歌っているときには、遠くの方でカップルがこっちを見たり帰ろうとしたりという姿が映りこんでいる。普段一人で街を歩いているときは、iPodで音楽を聴きながらこういう風景を見て、自分で映画をつくっていくわけですが、この映画は歌っている人間とその情景が同時に映りこんでいる。しかもそれをライブとして撮っている。今までにない作品だと思うし、何度観ても飽きないんです。

映画『ライブテープ』松江哲明(監督)×前野健太(主演)インタビュー

松江:僕が観たいのは、歌い手のそばでなにかが起こってくるような、偶然性のある映画なんですよ。これまでドキュメンタリーを撮り続けてきた経験から、そうした偶然性を演出できる自信はありました。でも、そういうものがない映画って、ダメなんです。ただ「撮りました」じゃ、単に現実を撮っているだけ。カメラに映っている現実が、観客の知っている現実と何かしら違って見えてきたりするのが、ドキュメンタリーの力だと思うんですよね。

“天気予報”をこんなに気に入ってくれたのは、松江さんが初めてなんです(前野)

─前野さんの歌っている姿って、なんというか、すごく色気があるんですよね。

前野:おぉー…。それは…………そうですね(笑)。自分でも、アレっ、カッコ良いなぁなんて思っちゃいましたもん。でも、それは近藤さんのカメラワークのおかげだと思いますよ。吉祥寺って、路地裏に落書きなんかがいっぱいありますよね。ああいったものも、近藤さんが撮るとカッコ良くなっちゃうんですよ。

─松江さんは、前野さんに惹かれて主演に抜擢されたわけですが、撮影を経て、改めてどんなところが魅力的なんだと思いましたか?

松江:歌えることしか歌わないところ、ですね。歌っていることに、嘘がないんですよ。前野さんの人生、イコール新しい作品ということだと思うんです。

それから、すごく僕にとって大きいのは、“天気予報”の歌詞にある「生きていかなきゃね」という言葉。そのシーンを撮影したときを思い出すだけで、下手したら泣きそうになります。

僕にとって、そもそもこの作品を撮るきっかけになったのが、昨年父が亡くなったことなんです。でも、身近な人の死を経験したり、辛い思いをしたとしても、生きて作品を生み続けなきゃいけないという覚悟を、前野さんの歌に教えてもらいました。

前野:(照れくさそうに)俺自身が、「生きてかなきゃな」って思っただけなんで。さっき松江さんが言っていたように、言えることしか言えないんですよ。

映画『ライブテープ』松江哲明(監督)×前野健太(主演)インタビュー

松江:そこで「生きていこうね」にはならないんですよ、前野さんは。みんな生きていこうね、といった語り方じゃなくて、自分自身が生きていかなきゃという風に歌う。そこに共感する人もいるだろうし、しない人もいるだろう。そういうことを、ちゃんと撮りたかったんです。

前野:じつは“天気予報”って、意外とみんなそんなに好きじゃないんですよ(笑)。僕は自分の歌の中ではけっこう好きで、昔からライブの最後に歌ったりしていたのに、「いい曲だね」って言われることがあんまりなかったんです。「こんなに名作なのに、なんで誰も気付いてくれないんだろう!」って、ずっと悩んでいたんですよ(笑)。“天気予報”をこんなに気に入ってくれたのは、松江さんが初めてなんです。それがすごく嬉しかったですね。

松江:いや、前野健太は“天気予報”でしょう!!

4/4ページ:74分全部見ないと、絶対にわからないラストシーンですね(松江)

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作品情報

ライブテープ
『ライブテープ』

2009年12月26日(土)より吉祥寺バウスシアターにて公開、その後全国順次ロードショー

唄・演奏:前野健太
演奏:〜DAVID BOWIEたち〜(吉田悠樹(二胡)、大久保日向(ベース)、POP鈴木(ドラムス)、あだち麗三郎(サックス))
参拝出演:長澤つぐみ
監督:松江哲明(『童貞。をプロデュース』『あんにょん由美香』)
撮影:近藤龍人(『ウルトラミラクルラブストーリー』)
録音:山本タカアキ(『SR サイタマノラッパー』)
イラスト:若杉公徳(『デトロイト・メタル・シティ』)
制作:Tip Top
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
宣伝協力:菫青石映画株式会社

プロフィール

松江哲明

1977年生まれ。東京都出身。99年日本映画学校卒業制作として『あんにょんキムチ』を監督。国内外の映画祭に参加し、山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波特別賞、NETPAC特別賞、平成12年度文化庁優秀映画賞などを受賞。 その後、OV『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズ、『カレーライスの女たち』、『セキ☆ララ』などを制作。2007年に発表の『童貞。をプロデュース』、2009年に入って発表の『あんにょん由美香』が相次いで大ヒットを記録。著書に『童貞の教室(よりみちパン!セ)』等があり、「映画秘宝」「映画芸術」では映画評を発表している。

前野健太

1979年、埼玉県生まれ。ミュージシャン。2000年頃より作詞・作曲を始め、東京都内を中心にライブ活動、自宅での録音を精力的に行う。2007年9 月、アルバム『ロマンスカー』にてデビュー。同作収録の曲“天気予報”が映画『デトロイト・メタル・シティ』のメイキング映像の挿入歌として使用される。 2009年1月、セカンドアルバム『さみしいだけ』発表。日常の機微を丁寧にすくいあげる歌詞とポップなメロディー、さらにはライブでのアグレッシヴな演奏で注目を集める、新時代のシンガーソングライター。

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