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『映画の未来へ』北野武×山根貞男(映画評論家)

『映画の未来へ』北野武×山根貞男(映画評論家)

テキスト
須藤健太郎
撮影:小林宏彰

今回で第10回目となる東京フィルメックスは、節目を記念して著名な映画監督や俳優たちを招き、『映画の未来へ』と題されたシンポジウムを開催した。幕開けを飾るのは、北野武監督だ。今年で監督20年、いま15本目を準備中という北野監督。聞き手を務める山根貞男さんは、北野映画の良き理解者として知られ、たびたび監督にインタビューしている映画批評家である。山根さんの質問に導かれながら、北野監督はジョークを交えて会場を笑わせつつ、あくまで誠実に自作について語っていた。いまちょうど、映画作家として、新しい局面に突入したところだという。次回作を待つまでの間、彼のこれまでの道のりに耳を傾けてみよう。

(テキスト:須藤健太郎 撮影:小林宏彰)

いまだに「映画監督」って呼ばれるの、めずらしいんですよ

山根:今年は2009年で、最初に北野監督が『この男、凶暴につき』を撮られたのが1989年ですから、監督が映画を撮り始めてから今年でちょうど20年になります。東京フィルメックスが今年で10回目ですから、東京フィルメックスのちょうど2倍ですね。はじめにちょっとお聞きしたいんですが、そもそも20年間も監督をやると思っていらっしゃいましたか?

『映画の未来へ』北野武×山根貞男(映画評論家)

北野:そうですね。最初は、深作(欣二)さんが『その男、凶暴につき』という映画をやるって聞いて、「主役でやりませんか」という話だったんですよ。それで「やります」って言ったんだけど、テレビの仕事もあるので、ちょっと難しかった。それがいつのまにか自分が撮ることになったんですよ。そのときはその1本で終わると思っていましたね。

山根:でも、その後にすぐ2本目をお撮りになられていますよね。

北野:なんでかな。でも映画界って、テレビとは全然違って、頑固な人も多いでしょ? よそ者に対して、非常に冷たいんですよ。だから1本目の時はずっとイライラしていて。「テレビの素人なんかが映画を撮れるわけがない」っていう現場の雰囲気がものすごくあったんですよ。でも、こっちに言わせれば、テレビではたくさんのカメラを使って番組をつくるのに、映画なんてカメラはひとつしかないし、もっと簡単だろうと思っていた。それで、実際1本撮ってみたら、わりと好評だったんですよ。だから、2本目からはもっと好きなことをやろうということで続けてしまって、このていたらく(笑)。

山根:いやいや(笑)。

北野:でも、いまだに「映画監督」って言われるのはめずらしいんですよ。オレのことを映画監督というのはヤクザだけ。ヤクザの偉い人で一人、オレのファンの人がいて、「おい、タケちゃん」って言った若いのをめちゃくちゃに殴っちゃってね。「オレが監督と呼んでる人に向かって何てこと言うんだ」って怒った。それ以来、全国のヤクザがオレのことを「監督」と呼ぶようになった(笑)。

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『東京フィルメックス』とは
2000年より始まった、東京で毎年秋に開催される国際映画祭。「作家主義」を標榜し、アジアを中心とした各国の独創的な作品を上映する。映画祭は、審査員によって最優秀作品賞が選ばれる「コンペティション作品」、世界各国の実力派監督の作品を上映する「特別招待作品」、映画人や特定の国などの関係作品を集めて回顧上映を実施する「特集上映作品」の三部構成から成る。作品の選定眼には定評があり、東京のシネフィルを唸らせている。

プロフィール

北野武

1947年生まれ。東京都足立区出身のタレント、映画監督。明治大学工学部入学後、ジャズに熱中。次いで浅草のストリップ劇場・浅草フランス座でエレベーターボーイをはじめ、先輩の兼子二郎とツービートを結成。やがて漫才師としてブレイクした。その後、映画監督としても頭角を現し、『HANA-BI』(1998年)で第54回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、『座頭市』(2003年)で第60回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞するなど、国際的な名声を獲得した。また2005年4月、東京藝術大学で新設された大学院映像研究科の教授および映画専攻長に就任、学生の育成にも力を注いでいる。

山根貞男

1939年生まれ。大阪府出身の映画評論家。映画批評誌『シネマ』の編集・発行に携わり、映画関係者へのインタビュー、聞き書き、対談の仕事も多数。同じく映画評論家の蓮實重彦や山田宏一との共著もある。主な著書に『映画の貌』(みすず書房)、『日本映画時評』シリーズ(筑摩書房)などがある。

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