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『サマーウォーズ』細田守監督インタビュー

『サマーウォーズ』細田守監督インタビュー

インタビュー・テキスト
田中みずき
撮影:小林宏彰
2010/01/26

CGの良さも出しつつ、手描きの良さも伝えられるアニメを

―次に、作中で登場人物が亡くなるシーンについてお聞きしたいと思います。前作の『時をかける少女』では、時間を遡る力を持った主人公が、友達が亡くなる事態を避けるために時間を戻しますよね。しかし本作では、主要登場人物の死を周りの人が受け止めます。現実的な死を描こうとされたのはなぜでしょうか?

『サマーウォーズ』細田守監督インタビュー

細田:映画の演出をしてきて十数年経つんですが、今まで作品の中で一人も人間を死なせなかったことに、ささやかな自負があったんです。ほかの演出家に聞いてみると、いっぱい死なせているらしいんですが(笑)。いままで東映動画で子どもに向けてアニメーションを作ってきたので、観てくれる子どもたちのことを考えると、作品の中で誰かが死ぬことにすごく抵抗があって。

―なるほど。細田監督にとって「死」を描くかどうかというのは、とても重要なことなんですね。

細田:今回の『サマーウォーズ』でも、本当は死なせたくはなかったんですが、物語的な必然から、「死」を描かざるをえなかった。僕にとって大きなチャレンジでした。

―「生」を象徴するような場面とも言えるかもしれませんが、健二が夏希の親戚一同とご飯を食べたりお風呂に入ったりして暖かく暮らす様子は、平面のセル画で描かれますね。そして、彼らがアクセスする「OZ」の世界は、3DCGで描かれます。一つの作品の中でセル画と3DCGとを組み合わせて使っているわけですが、その際に意識なさったのはどんなことでしょうか。

細田:ひと昔前だと、ネットの世界は「サイバーでソリッド、かつ最先端」という印象があったと思います。でも、いまやネットの世界はもっと身近なものですよね。現代を描くのだから、そういった身近さをしっかり描きたいと思い、「ネット」と「親戚」を組み合わせて描いたんです。しかしそうすると、得てして「ネットが駄目で家族が良い」とか「家族が古くてネットこそ最先端」などといった二元論に陥りがちなんです。でも僕は、どちらも肯定的に描きたくて、ネットの世界はCG、現実の世界は手描きで作ることにしました。CGの良さも出しつつ手描きの良さも出すことで、それぞれの世界をうまく対比させてみたかったんですね。

『サマーウォーズ』細田守監督インタビュー

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―確かに、どちらの良さも生かされ、かつ実写では表現できないような独特の世界観が構築されていました。

細田:「これからフルCGの映画が来る」とか、「手描きアニメのほうが良いに決まっている」といった対立ってありますよね。そうではなくて、どちらも良いところがあると思うんです。だから、どちらの特性をも上手く使っていけば良いのかなと思っているんですね。

家族の問題を普遍化すれば、世界の問題に行きつく

―それでは、さらに作品に込められたテーマについてお伺いしていきたいのですが、夏希の叔父の侘助は、アメリカ帰りですね。そして「OZ」は『オズの魔法使い』を意識させるものだったり、さらにアバターにはアメリカのとある有名なキャラクターを意識させるものがあったりと、アメリカを意識させる要素が頻繁に登場します。

『サマーウォーズ』細田守監督インタビュー

細田:「OZ」については、よく訊かれるんですが、実は僕が昔働いていた東映動画の横にある大きなスーパーの名前が「LIVINオズ」といって、そこから取っているんです(笑)。東映にいた頃は、自分の下宿と仕事場、そしてスーパーの「オズ」、その三点しか行き来しないわけですよ。で、何でもあった夢の世界が「オズ」なんです(笑)。今やその横にシネコンまでありますからね。

―「OZ」の由来は意外なところにあったんですね(笑)。

細田:そうなんです。ただ、さっきの質問に戻ると、アメリカを連想させる要素を入れているのは確かです。家族や親戚といったドメスティックなものと対比されるものが何かと言えば、グローバリズムであり、パクス・アメリカーナ(アメリカ合衆国の覇権によって作られる平和)ではないかと。この二つの衝突については、非常に今日的な問題ですよね。

『サマーウォーズ』細田守監督インタビュー

―ローカルなコミュニティと、グローバルな動きとが相互に及ぼし合う影響について、ということですね。

細田:はい。でも、実はそういう対比以上に気にしていたのが、家族の外側に敵を作るのは嫌だな、ということでした。なるべく身内の中に原因があり、その解決をするという筋立てにしたかったんです。グローバルとドメスティックの二項対立でどちらが良いかということではなく、世界で起こっている問題は家族の中の問題に収斂できるのではないかと。これを逆に言えば、家族の中で起こっている問題を普遍化すれば、世界の問題に行きつくんじゃないかと考えているんですね。

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イベント情報

『第13回 文化庁メディア芸術祭』

2010年2月3日(水)〜2月14日(日)
会場:国立新美術館(東京・六本木)
時間:10:00〜18:00(金曜は20:00まで)
休館日:2月9日(火)
料金:無料

『アニメーション部門 受賞者シンポジウム』

2010年2月7日(日)16:00〜17:30
会場:国立新美術館 3F講堂
出演:
細田守(大賞『サマーウォーズ』)
橘正紀(優秀賞『東京マグニチュード8.0』)
鈴木伸一(アニメーション部門主査/アニメーション監督)

『サマーウォーズ』上映

2010年2月7日(日) 13:00〜14:55
2010年2月14日(日)15:40〜17:35
会場:国立新美術館 3F講堂

プロフィール

細田守

1967年9月19日生まれ。富山県出身。金沢美術工芸大学卒業。91年に東映動画(現・東映アニメーション)に入社し、アニメーターとして活躍。97年には『ゲゲゲの鬼太郎(第4期)』で演出デビュー。現代美術アーティストの村上隆から依頼されたLOUIS VITTONのプロモーション映像『SUPERFLAT MONOGRAM』(2003年)などの監督を手掛け評判となる。05年にはアニメーション制作会社マッドハウスにて『時をかける少女』を監督し、各国で多数の映画賞を受賞。最新作の『サマーウォーズ』は国内外での受賞など高い評価を得、観客動員数は123万人を突破している。

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