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大橋可也×佐々木敦×西中賢治『春の祭典』鼎談

大橋可也×佐々木敦×西中賢治『春の祭典』鼎談

司会・構成
黒川直樹
写真:小林宏彰

第五幕 みんな「イ/ケ/ニ/エ」? 選ばれし乙女の神秘的なピルエット。

─最新作『春の祭典』では、これまで縁の深かった「映像」を用いないとお聞きしました。

西中:大人数が踊る大橋可也&ダンサーズ作品としては、すごく珍しいですよね?

大橋:それに替わって、いくつか新しい試みをします。10名のダンサーのみならず、エキストラにも30名ほど出演してもらいますし、ダンサーの一人一人にアイテムを持たせたり。シーンの作り方も、音楽の使い方もこれまでとは変えています。

─公演前なので、お話いただける範囲でその「変化」について伺いたいのですが。

大橋:クラシックの『春の祭典』には、年代も指揮者もたくさん見つかりますし、録音されている記録媒体もレコードからMP3ファイルまで様々ですよね。今回は、この「多様な記憶」を、一回性の強いダンスのステージで再生します。言い換えれば「ダンスで過去と向き合う」という試みですね。

佐々木:すごく面白いですね。 1913年に上演された『春の祭典』は、いってみれば音楽の聴取スタイルが個人化を遂げていく転換期に生まれた、エポックメイキングな作品です。なので、これまで話してきたような特徴をもった大橋可也&ダンサーズが『春の祭典』を取り上げることには、すごく必然性があると思うし、鮮やかに浮かび上がる「過去/現在」や、「再生/一回性」のコントラストが現れそうですね。

タイトルが音楽的な『春の祭典』であるばかりか、GAUZE(※日本を代表するハードコア・パンクバンド)のドラマーであるHIKOさんが、今回ダンサーとして参加されるというのも楽しみです。

大橋可也×佐々木敦×西中賢治『春の祭典』鼎談

─そもそも大橋さんが『春の祭典』をタイトルに選ばれた理由とは?

大橋:これといった理由はないのですが、センセーショナルかつスキャンダラスな逸話がたくさん残るバレエ版『春の祭典』に、昔から共感はあったので、自分たちの作品がそうなるようにという期待は込めています。また、シャンゼリゼ劇場での初演から今年で97年経ちますが、100年ともなれば誰かしらこの作品を取り上げるだろうから、先取りしておこうかと(笑)。付け加えて言うと、『春の祭典』の世界観が、「いま生きてる人たち誰しもが生贄ではないか」という、僕の現実感に重なりましたしね。

西中:大橋可也&ダンサーズ作品のキーワードにもなりそうな至言ですね……。

大橋:僕はこの公演に、佐々木さんが提唱された「テン年代」というキーワードを使わせてもらいました。それは、佐々木さんがこの言葉に、時流の転換や、新たな才能の出現を求めているように感じたからですが、どのような思いが込められているのか聞かせていただけますか。

佐々木:僕は音楽や文学などの表現、あるいは思想などが、いわゆるゼロ年代の終りに極まったと思っています。ただ、一度できあがった表現や方法論はしぶといので、なかなか新陳代謝が進まないことがある。そこで、これまでとは違った表現の可能性を呼び込もうと、2010年代をあえて「テン年代」と呼び始めたんです。

─では最後になりますが、お二人から『春の祭典』に関して一言いただければ、と思います。

西中:前売りのチケットですが、10 代は1,000円、20代は2,000円、30代は3,000円と若者に良心的に設定されていますね。このような値段設定がされているダンス公演を初めて見ました! 作品を、どのような人に見てもらいたいか、大橋さんがしっかりと考えられていることが分かりますね。

─佐々木さん、いかがですか?

佐々木:僕も授業で学生に勧めてみるので、フライヤーをたくさん下さい(笑)。 今になって、ようやく『深淵の明晰』のラストを思い出したのですが、混沌が終結したあとの静けさのなか、去っていくダンサーが立ち止まり、そっとこちらを振り返りましたね。あのシーンには、大橋可也の「希望」が託されていたように感じましたし、僕がテン年代に思うところと深くシンクロしました。なによりも、大橋可也&ダンサーズが今後のダンスシーンを牽引していく予感を得た瞬間でした。

まだまだ話したいことはあるのですが、5月16日のポストパフォーマンストークに呼んで頂いているので、見終えた興奮も醒めやらぬままに『春の祭典』を語り合えること、とても楽しみにしています。

大橋:ありがとうございます。ぜひ、期待していてください。

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イベント情報

大橋可也&ダンサーズ新作公演
『春の祭典』

2010年5月14日(金)19:30
2010年5月15日(土)15:00 / 19:30
2010年5月16日(日)15:00
※開場は開演の30分前
会場:シアタートラム(東京・三軒茶屋)

出演:
大橋可也
垣内友香里
皆木正純
前田尚子
多田汐里
山田歩
唐鎌将仁
平川恵里彩
エフテル・プリュン
HIKO(from GAUZE)

料金:
10代(9歳以下含む)1,000円 20代2,000円 30代3,000円 40代4,000円 50代以上5,000円
※当日料金はそれぞれ500円増

ポストパフォーマンストーク
2010年5月16日(日)17:30〜
会場:シアタートラムロビー
出演:
佐々木敦(批評家)
森山直人(演劇批評)
大橋可也
※ご観覧される方は、「春の祭典」チケットの半券をお持ちください

プロフィール

大橋可也(おおはしかくや)

1967年、ユニクロの発祥地として知られる山口県宇部市生まれ。大橋可也&ダンサーズ主宰・芸術監督。横浜国立大学卒業。イメージフォーラム付属映像研究所卒業。陸上自衛隊第302保安中隊(特別儀仗隊)出身。システム開発の業務に携わりながら創作活動を続ける。カンパニー外での振付け作品には、東野祥子(BABY-Q)に振付けた『9(nine)』(2007年、多摩美術大学八王子図書館ほか)、東京シティ・バレエ団ダンサーに振付けた『愛と誠』(2009年、ティアラこうとう)がある。

佐々木敦(ささきあつし)

1964年生まれ。批評家。HEADZ主宰。雑誌エクス・ポ/ヒアホン編集発行人。BRAINZ塾長。早稲田大学および武蔵野美術大学非常勤講師。『ニッポンの思想』『批評とは何か?』『絶対安全文芸批評』『テクノイズ・マテリアリズム』など著書多数。

西中賢治(にしなかけんじ)

1978年生まれ。大阪府出身。批評誌「アラザル」同人で、主に現代美術に関する論考を発表。また、学生時代より現在まで商業誌の編集ライターとして活動。専門はアイドル、アニメ、同人文化、秋葉原。

大橋可也&ダンサーズ(おおはしかくやあんどだんさーず)

土方巽直系の舞踏の振付け方法をベースに、現代における身体の在りかたを問う作品を提示し続けるダンスカンパニー。 1999年、結成。2000年、「バニョレ国際振付け賞ヨコハマプラットフォーム」に出場するも、出演者が全裸であるという理由で非公開の審査となる。その後、活動を休止。2006年より「明晰」三部作の発表を開始。2008年に上演した『帝国、エアリアル』では、秋葉原連続殺傷事件を題材に鈴木邦男、椹木野衣ら、各界の著名人を巻き込んだフリーペーパーを制作、配布するなど、ダンスの枠組みを大きく超えた活動をおこなっている。
主な作品に、『あなたがここにいてほしい』(2004年、STスポットほか)、『明晰さは目の前の一点に過ぎない。』(2006年、吉祥寺シアター)、『明晰の鎖』(2008年、吉祥寺シアター)、『帝国、エアリアル』(2008年、新国立劇場小劇場)、『深淵の明晰』(2009年、吉祥寺シアターほか)などがある。

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