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大橋可也×佐々木敦×西中賢治『春の祭典』鼎談

大橋可也×佐々木敦×西中賢治『春の祭典』鼎談

司会・構成
黒川直樹
写真:小林宏彰

第二幕 「行動様式」をスケッチしていくダンス。或いは、さらわれる乙女たち。

─5月に幕が開く大橋可也&ダンサーズの新作『春の祭典』の話を伺う前に、佐々木さんと西中くんが大橋可也&ダンサーズ作品を知ったきっかけを教えていただけますか?

佐々木:初めて大橋可也&ダンサーズを知ったのは、ダンス批評家の木村覚さんが「超詳解!20世紀ダンス入門」というレクチャーで上映された映像でした。『明晰の鎖』(2008)からは、ほとんどの作品をライブで見ています。



西中:僕が初めて大橋可也& ダンサーズを見たのは、DIRECT CONTACT2で上演された『Black Swan』(2008)でした。大橋さんの演出や振付けには、フランシス・ベーコン(※画家。人間存在の根本にある不安を描き出した)の絵画と通じるものを感じます。

大橋:そうですか? 僕はベーコンの絵画を見ていると癒されます(笑)。

西中:癒される、と(笑)。『帝国、エアリアル』(2008)に顕著でしたが、大橋可也&ダンサーズ作品は、見る人に刺激や落込みを感じさせることを躊躇わないですよね。大橋さんには、そういった印象を舞台に乗せる「気概」をお持ちではありませんか?



大橋:僕にとってのダンスは「現実を風景画として描く」ことに近いと思います。だから西中さんがおっしゃった、「見る人に強い刺激や落ち込みを与える」という要素は、あえて舞台上に持ち込んでいるものではなく、僕の現実感そのものだと思います。

─大橋可也&ダンサーズ作品は、一触即発の緊迫感や、即興性を感じさせるムーブも魅力ですが、すべて練り上げられた振付けなのでしょうか。

大橋:公演のアンケートに「かなりのパートが即興ですよね?」と質問されることがよくあります(笑)。今は作品の隅々まで稽古で作り上げています。

─稽古場では、ダンサー同士が活発で緊密なディスカッションを行っていますよね。また、大橋さんが動きを与えるだけではなくて、メンバー全員で振付けを模索する様子も頻繁にありました。

大橋可也×佐々木敦×西中賢治『春の祭典』鼎談
大橋可也

大橋:ときには、数人のダンサーに同じ振付けを踊ってもらい、普遍性の高いシルエットに動きのヒントを探すこともあります。

西中:なぜそのような振付けをされるのですか?

大橋:理由の一つは、この振付けが、「現代性」や「テーマ」に近づくには欠かせない、人間の「行動様式」を浮かび上がらせるからです。

もう一つ、僕の振付けに特徴的なこととして、一人一人にキャラクターを配っています。

─役者でもあるカンパニーメンバーの方が、「大橋さんと稽古を重ねていくと、自分とは別の人間としてのダンスが表現できるようになる」と話してくれました。

大橋:僕はダンスしか作っていないので演劇とは比べられませんが、作品では「日常」を過ごす「彼ら、彼女ら」から離れた気持ちで踊ってもらえたらと思っています。

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イベント情報

大橋可也&ダンサーズ新作公演
『春の祭典』

2010年5月14日(金)19:30
2010年5月15日(土)15:00 / 19:30
2010年5月16日(日)15:00
※開場は開演の30分前
会場:シアタートラム(東京・三軒茶屋)

出演:
大橋可也
垣内友香里
皆木正純
前田尚子
多田汐里
山田歩
唐鎌将仁
平川恵里彩
エフテル・プリュン
HIKO(from GAUZE)

料金:
10代(9歳以下含む)1,000円 20代2,000円 30代3,000円 40代4,000円 50代以上5,000円
※当日料金はそれぞれ500円増

ポストパフォーマンストーク
2010年5月16日(日)17:30〜
会場:シアタートラムロビー
出演:
佐々木敦(批評家)
森山直人(演劇批評)
大橋可也
※ご観覧される方は、「春の祭典」チケットの半券をお持ちください

プロフィール

大橋可也(おおはしかくや)

1967年、ユニクロの発祥地として知られる山口県宇部市生まれ。大橋可也&ダンサーズ主宰・芸術監督。横浜国立大学卒業。イメージフォーラム付属映像研究所卒業。陸上自衛隊第302保安中隊(特別儀仗隊)出身。システム開発の業務に携わりながら創作活動を続ける。カンパニー外での振付け作品には、東野祥子(BABY-Q)に振付けた『9(nine)』(2007年、多摩美術大学八王子図書館ほか)、東京シティ・バレエ団ダンサーに振付けた『愛と誠』(2009年、ティアラこうとう)がある。

佐々木敦(ささきあつし)

1964年生まれ。批評家。HEADZ主宰。雑誌エクス・ポ/ヒアホン編集発行人。BRAINZ塾長。早稲田大学および武蔵野美術大学非常勤講師。『ニッポンの思想』『批評とは何か?』『絶対安全文芸批評』『テクノイズ・マテリアリズム』など著書多数。

西中賢治(にしなかけんじ)

1978年生まれ。大阪府出身。批評誌「アラザル」同人で、主に現代美術に関する論考を発表。また、学生時代より現在まで商業誌の編集ライターとして活動。専門はアイドル、アニメ、同人文化、秋葉原。

大橋可也&ダンサーズ(おおはしかくやあんどだんさーず)

土方巽直系の舞踏の振付け方法をベースに、現代における身体の在りかたを問う作品を提示し続けるダンスカンパニー。 1999年、結成。2000年、「バニョレ国際振付け賞ヨコハマプラットフォーム」に出場するも、出演者が全裸であるという理由で非公開の審査となる。その後、活動を休止。2006年より「明晰」三部作の発表を開始。2008年に上演した『帝国、エアリアル』では、秋葉原連続殺傷事件を題材に鈴木邦男、椹木野衣ら、各界の著名人を巻き込んだフリーペーパーを制作、配布するなど、ダンスの枠組みを大きく超えた活動をおこなっている。
主な作品に、『あなたがここにいてほしい』(2004年、STスポットほか)、『明晰さは目の前の一点に過ぎない。』(2006年、吉祥寺シアター)、『明晰の鎖』(2008年、吉祥寺シアター)、『帝国、エアリアル』(2008年、新国立劇場小劇場)、『深淵の明晰』(2009年、吉祥寺シアターほか)などがある。

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