特集 PR

大橋可也×佐々木敦×西中賢治『春の祭典』鼎談

大橋可也×佐々木敦×西中賢治『春の祭典』鼎談

司会・構成
黒川直樹
写真:小林宏彰

第三幕 ストイック。でも「生々しい」スクリーンの映像に、部族の遊戯。

─佐々木さんは、大橋可也&ダンサーズ作品についてどう思いますか?

大橋可也×佐々木敦×西中賢治『春の祭典』鼎談
佐々木敦

佐々木:ここまでの大橋さんの話を聞いていて、あらためて感じたのですが、大橋可也&ダンサーズのダンスは、ダンサーの奥底に眠る潜在意識や本性が炙り出されてくるような、自伝的な時間の表現とは真逆のベクトルに進んでいますよね。

─それは、大橋可也&ダンサーズ作品の主要素である音楽と映像が作用しているのでしょうか。

佐々木:んー、どうでしょうか。音楽も映像も、どちらもストイックに使われていますよね。そもそも「音楽」は、ダンスにとって扱いが容易でないと思えます。大橋さんには、そのような感覚がありますか?

大橋:ありますね。音楽を入れると、説明的になってしまいがちです。

西中:カンパニーやダンサーによっては、音楽に主役を奪われているケースも見られます。

佐々木:大橋可也&ダンサーズ作品に使われている音楽は、キャラクターの内面や物語のトーンを表現しているとか、作品の情感を増幅させるために用いられているわけではない。『Black Swan』の音楽の使い方も、作品のあちこちに、雑踏のざわめきが小さく響いていたり、水が流れる音があったりと、すごく興味深かった。

─映像の使い方については、いかがでしょう。

佐々木:大橋可也&ダンサーズが作中に用いるスクリーンと、そこに映し出される映像は、いわゆるダンス作品にありがちなイメージの装飾やストーリーの重層化を図った使い方とは、一線を画しているように思います。

─ダンスやストーリーのイメージを補完するためだけではなく、特別な「効果」をあげている、と。

佐々木:補完してはいないんですよね。ただ、それを「効果」と呼ぶのも違うかもしれない。 好例は『深淵の明晰』ですが、大橋可也&ダンサーズの場合、目の前で踊るダンサーだけでなく、スクリーンに写る映像さえもがすごく生々しいんです。これには映像のカラーリングや使用されるタイミングだけでなく、スイッチングやカメラワークといった技術的な要素が作用しているのかもしれません。なんにせよ、僕がダンスを見るようになってから、劇中に用いられる映像に「生々しさ」を感じたのは大橋可也&ダンサーズ作品だけです。


─大橋さんご自身は、どのような意図があって音楽や映像を使われていますか?

大橋:スクリーンを使い始めた頃は、「映像や音楽によって作品に奥行きを作る」という意図もありました。でも、いまはだいぶ変わってきましたね。

稽古を通じてダンサーとコミュニケートしながら、作中の世界や人物をスケッチしてゆくにつれ、ヴィジュアルやイメージが見えてくるので、それを映像としてスクリーンに映し出しています。

また、現代は映像のイメージありきで成り立っていると思います。

─その「イメージ」とは、妄想や想像のことでしょうか。

大橋:観念的なことの前に、たとえばある人物のイメージは、その人の肖像写真が印象をもたらしていたりしますよね。また、日々生じる社会的な出来事に対する心象は、テレビニュースやインターネットの映像を通じて涵養され、それを記憶していくメカニズムがいつのまにか僕たちにインストールされている気がするんです。

西中:なるほど。大橋さんはイメージフォーラムに通い始めたころから、そのような問題意識があったのでしょうか。

大橋:あの頃は問題意識だけでなく、自己表現についても、模索が続いていました。ダンスを続けてきたことで色々と明確になりました。

Page 3
前へ 次へ

イベント情報

大橋可也&ダンサーズ新作公演
『春の祭典』

2010年5月14日(金)19:30
2010年5月15日(土)15:00 / 19:30
2010年5月16日(日)15:00
※開場は開演の30分前
会場:シアタートラム(東京・三軒茶屋)

出演:
大橋可也
垣内友香里
皆木正純
前田尚子
多田汐里
山田歩
唐鎌将仁
平川恵里彩
エフテル・プリュン
HIKO(from GAUZE)

料金:
10代(9歳以下含む)1,000円 20代2,000円 30代3,000円 40代4,000円 50代以上5,000円
※当日料金はそれぞれ500円増

ポストパフォーマンストーク
2010年5月16日(日)17:30〜
会場:シアタートラムロビー
出演:
佐々木敦(批評家)
森山直人(演劇批評)
大橋可也
※ご観覧される方は、「春の祭典」チケットの半券をお持ちください

プロフィール

大橋可也(おおはしかくや)

1967年、ユニクロの発祥地として知られる山口県宇部市生まれ。大橋可也&ダンサーズ主宰・芸術監督。横浜国立大学卒業。イメージフォーラム付属映像研究所卒業。陸上自衛隊第302保安中隊(特別儀仗隊)出身。システム開発の業務に携わりながら創作活動を続ける。カンパニー外での振付け作品には、東野祥子(BABY-Q)に振付けた『9(nine)』(2007年、多摩美術大学八王子図書館ほか)、東京シティ・バレエ団ダンサーに振付けた『愛と誠』(2009年、ティアラこうとう)がある。

佐々木敦(ささきあつし)

1964年生まれ。批評家。HEADZ主宰。雑誌エクス・ポ/ヒアホン編集発行人。BRAINZ塾長。早稲田大学および武蔵野美術大学非常勤講師。『ニッポンの思想』『批評とは何か?』『絶対安全文芸批評』『テクノイズ・マテリアリズム』など著書多数。

西中賢治(にしなかけんじ)

1978年生まれ。大阪府出身。批評誌「アラザル」同人で、主に現代美術に関する論考を発表。また、学生時代より現在まで商業誌の編集ライターとして活動。専門はアイドル、アニメ、同人文化、秋葉原。

大橋可也&ダンサーズ(おおはしかくやあんどだんさーず)

土方巽直系の舞踏の振付け方法をベースに、現代における身体の在りかたを問う作品を提示し続けるダンスカンパニー。 1999年、結成。2000年、「バニョレ国際振付け賞ヨコハマプラットフォーム」に出場するも、出演者が全裸であるという理由で非公開の審査となる。その後、活動を休止。2006年より「明晰」三部作の発表を開始。2008年に上演した『帝国、エアリアル』では、秋葉原連続殺傷事件を題材に鈴木邦男、椹木野衣ら、各界の著名人を巻き込んだフリーペーパーを制作、配布するなど、ダンスの枠組みを大きく超えた活動をおこなっている。
主な作品に、『あなたがここにいてほしい』(2004年、STスポットほか)、『明晰さは目の前の一点に過ぎない。』(2006年、吉祥寺シアター)、『明晰の鎖』(2008年、吉祥寺シアター)、『帝国、エアリアル』(2008年、新国立劇場小劇場)、『深淵の明晰』(2009年、吉祥寺シアターほか)などがある。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

LUMINE ART FAIR - My First collection / Art of New York City

10月12日、13日にルミネ新宿で開催する『LUMINE ART FAIR -My First Collection』のために制作された動画。現地アーティスト2名の言葉と、リアルな空気感とともにNYのアートシーンを紹介している。「NY、かっこいい!」という気持ちがムクムク膨れ上がってくるはずだし、アートに触れるきっかけはそれくらいがちょうどいいと思う。(石澤)

  1. 現地に住む人が知る、ニューヨークのアートシーンの現状とガイド 1

    現地に住む人が知る、ニューヨークのアートシーンの現状とガイド

  2. ラブドール職人・高橋一生が蒼井優に触れる、『ロマンスドール』場面写真 2

    ラブドール職人・高橋一生が蒼井優に触れる、『ロマンスドール』場面写真

  3. 池松壮亮から君へ。『宮本から君へ』の如く、人間まる出しであれ 3

    池松壮亮から君へ。『宮本から君へ』の如く、人間まる出しであれ

  4. 岡田健史主演『フォローされたら終わり』に小川紗良、中尾暢樹、松田るから 4

    岡田健史主演『フォローされたら終わり』に小川紗良、中尾暢樹、松田るから

  5. 中村倫也が7役に挑戦、映画『水曜日が消えた』来年公開 場面写真も 5

    中村倫也が7役に挑戦、映画『水曜日が消えた』来年公開 場面写真も

  6. ナナヲアカリ×蒼山幸子 今が音楽人生の転機。ねごと解散後初取材 6

    ナナヲアカリ×蒼山幸子 今が音楽人生の転機。ねごと解散後初取材

  7. 星野源の新EP『Same Thing』はPUNPEE、Superorganismとコラボ、先行配信も 7

    星野源の新EP『Same Thing』はPUNPEE、Superorganismとコラボ、先行配信も

  8. 『HiGH&LOW THE WORST』ドラマ版が完結。映画に向けてキャストをおさらい 8

    『HiGH&LOW THE WORST』ドラマ版が完結。映画に向けてキャストをおさらい

  9. 欅坂46の東京ドーム公演を回顧。“不協和音”と平手友梨奈“角を曲がる” 9

    欅坂46の東京ドーム公演を回顧。“不協和音”と平手友梨奈“角を曲がる”

  10. 星野源『おげんさんといっしょ』グッズ発売 ロゴT、ねずみぬいぐるみなど 10

    星野源『おげんさんといっしょ』グッズ発売 ロゴT、ねずみぬいぐるみなど