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初音ミクにみる新しい文化 FLEETインタビュー

初音ミクにみる新しい文化 FLEETインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2011/01/28

結局自分が音楽を作って発信しないことには、他者同士を結びつけることはできない。

―では『TRANSIT』の話に戻りましょう。本作にはたくさんのゲストが参加されていますね。

佐藤:秋山(隆彦/fresh!)さんのドラムは超タイトで細かくフレーズが考え抜かれていて、FLEETみたいな打ち込み込みの音楽にもすごく合うんです。音色自体もすごくカッコ良いし。ギターのフタキ(ダイスケ/トルネード竜巻)さんはすごく繊細なタッチで、それでいて過激な音も出せちゃう希有なギタリストだと思います。益子さんの音はもうホント大好きで、こんな高密度でクリアで広がりがあってツヤツヤな音は、益子さんじゃないと出せないでしょうね。

―“Transit”や“path”のような小曲はどのような意図で収録したのですか?

佐藤:音楽とノイズの境界線のような音響的アプローチの楽曲をアルバムに入れたかったので、元々知り合いだったKONNNO+MOROTOMIとコラボレーションしようと思い立ちました。僕がフィールド・レコーディングで集めた音素材や、家で作ったシンセ音やMIDIデータを送って、それを彼らがエディットしたものです。これらの音は表参道周辺とか、僕の普段の生活圏内でフィールド・レコーディングしたもので、言わば「日常」の延長線上の音たちなんですね。音のテクスチャー、肌触りや、ノイズと音楽の境界線を楽しんでもらえたら良いなと。

―本作の完成をもって池田さんと仲井さんが脱退されたわけですが、その経緯を教えていただけますか?

佐藤:結局FLEETって僕が曲を作って歌ってて、僕1人いれば成立しちゃうっていうのが根本にあるとして、その中である感覚を共有してやってきたんですけど、だんだんそれもずれていくし、3人でやる意味を感じなくなっていって。それは僕だけじゃなくて、他の2人も多分感じてて。まあ、それぞれそんな若いわけじゃないんで(笑)、自分に残された時間で何ができるだろうって考えるじゃないですか? そうすると、より自分が本当にやりたいことに時間を使いたいってみんな思うようになっていくわけで、そういう雰囲気は常に漂ってました(笑)。

―FLEETって配信のこともそうだし、結果的に時代を先取ってる部分があると思うんですね。これまでのバンドのあり方にしても、それぞれの文脈を持った個がゆるく結びついていた、つまりは世の中が島宇宙化した後のボカロシーン的な関係性のあり方をいち早く体現してたのかなって。

佐藤:上手い解釈ですね(笑)。それだと今はゆるくつながっているボカロシーンも離散してしまうということになっちゃいますけど(苦笑)。まあこれはFLEETのメンバーだけの話じゃないんですけど、人は年をとると考えがある方向に固まってきちゃったりするじゃないですか? なんか最近同い年ぐらいの人たちとどんどん話が合わなくなってるのを日々感じていて、むしろ今20代前半くらいの人の方が気が合うんですよね。そのズレみたいなものが、結構埋めがたくなってたのかもしれません。

―なるほど。

佐藤:今、情報の流れとかコミュニケーションのあり方がすごいスピードで変化していっていて、産業革命以来の、情報革命、コミュニケーション革命のただ中にあると思うんですね。今までだったら10年分ぐらいの変化が2年で起きている。でもたぶん産業革命の時代の普通の人たちは、「やべえ、うちら半端ない時代にいるわ」ってそこまで思わなかったと思うんです(笑)。今もそれは変わらなくて、「今がすごい時代だ」って気づいてる人もいれば、20年前と変わらずテレビだけの人もいて、そういう感度は埋めがたい差があるというか。

―そうですね…。

佐藤:昔だと自分で興味を持って情報を調べたいと思っても調べる手段がなかったから、本読んだりテレビ見たりするぐらいで、その情報すらも、何かバイアスがかかった一方通行の情報だから、なかなか多面的な視点を得るまでに至らない。だから物事に興味がある人もない人もそんなに差が生まれなかったと思うんですね。でも今はネットがあるから行きたい人はどんどん突き進んでて、音楽にしても詳しくなろうと思えばなれる。でも興味がない人は20年前と変わってないわけですから、すごい情報格差が生まれている。その興味のない人々をどうやってこっち側に動員していけばいいんだろうなって思いますね。

―それは途中でも出たように、やはり認識っていうのが重要になるんでしょうか?

佐藤:基本的にはそうじゃないですかね。そこでボカロ的なあり方っていうのは結構鍵になってくるし、様々な領域間の境界線上の存在が重要になって来るんじゃないかなって。

―では最後に、そのボカロ的なあり方と、自分が音楽を作ることの関連性について話していただけますか?

佐藤:結局自分が音楽を作って発信しないことには、他者同士を結びつけることはできないんで、やっぱり作品が必要になってきますよね。音楽を作らないで、ものを書いたり、しゃべったりしてジャーナリストみたいな方向性もあるのかもしれないけど、ぼくには無理なんで(笑)。ぼくは幸いにして音楽を作ることができるんで、それは作っていきたいかな。自己目的で完結しているよりも、何か世の中全体のことを考えてその中で自分に出来ることをやって行く方が、普通にやる気出ませんか?自分自身が気持ち良く音楽活動を続けて行くためにも、こういう風に世の中がなっていった方がいい、そこには自分がこういう風に関わっていく必要がある、そのためには音楽を作り続けなくちゃいけないから作ろうみたいな、そっちの方が上がりますよね(笑)。

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リリース情報

FLEET
『TRANSIT』

2011年1月26日発売
価格:1,800円(税込)
ポニーキャニオン / PCML-1002

1. oozora base
2. -ward
3. Transit
4. skip like jet spurt
5. she is the sun
6. path
7. shooting star

プロフィール

FLEET

2004年春、デザイナーだった佐藤純一を中心に結成。MyspaceやYoutubeの普及以前にHP上で発表した楽曲が話題に。ポストロックやエレクトロニカといったキーワードを感じさせながら佐藤純一の独自のセンスと歌心あるメロディーで構築された音楽性が公表を博す。最新作「TRANSIT」完成をもってオリジナルメンバーの池田雄一、仲井朋子が脱退。FLEETは佐藤純一のソロユニットとして再始動する。

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