特集 PR

初音ミクにみる新しい文化 FLEETインタビュー

初音ミクにみる新しい文化 FLEETインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2011/01/28

今まで自分がいたような領域と、ボカロシーンみたいな領域は今のところ交流が少ない感じがするんで、その垣根をなくしていきたいなって。

―例えば今の音楽業界っていうのは不況だなんだと言われていて、確実に売れるものしか作れないので、冒険ができないという話をよく耳にします。ボカロシーンっていうのは、そういう現状を打破するひとつのヒントにもなるのでしょうか?

佐藤:「売れる音楽って何だろう?」って考えると、「売れる」っていうことは、たくさんの人が共感するから売れるわけですよね。たくさんの人が「共感する」っていうのは、似たような価値観をみんなが持っているということですよね。同じような価値観や感覚を時代の中で共有してて、そこに訴えかけるようなものが現れると、多くの人々はグッと来る。でも、そういう共通の価値観みたいなものがいよいよなくなっていったのがこの3年間で、何でかっていうと、まあネットだっていう。

―まさにそうですね。

初音ミクにみる新しい文化 FLEETインタビュー

佐藤:以前はなんだかんだでテレビを中心とした既存のマスメディアの影響力がすごく大きくて、みんな同じような番組を見て、同じような情報を一方的に受けてるから、共通の価値観って形成されやすかったわけですよね。音楽だけじゃなくても、全てのことにおいて。それがネットによって色んな立場からの意見がたくさん入ってきて、その中で自分の好みや感覚に合うところに近づいていくようになると、価値観はどんどん多様化していくし、細分化していく。そこでみんなをまとめられるだけの物語、価値観とか感覚を打ち出すのが根本的に難しくなっていくのは必然ですよね。

―その通りですね。

佐藤:相対的に、アニソンとかボカロが支持を得てるっていうのは、例えばアニメだったらアニメのストーリーがあるわけじゃないですか? その世界観の中にみんな包摂されてるわけですよね。その世界にさらに近づきたいから、CDを買ったり、イベントに行ったりする。さらに、みんな二次創作でイラスト書いたり、同人誌を作ったりして、物語は無限に拡散し共有されていくっていう。それに対して普通の音楽は、アーティストが発信する物語だけじゃないですか?もちろんみんなが共感するすごいアーティストはこれからも出てくると思うけど、出てきにくくはなってる。

―双方向性っていうとちょっと言葉が古いですけど、自分がそこに参加できるっていうのがやっぱり大きいですよね。

佐藤:参加できるということは、それが他人事ではなく、自分のこととして感情移入出来るということですよね。ボカロの話をするときに、メディア環境と合致してたから盛り上がったとか、二次創作が盛んだから面白いとか、自分で歌が歌えなくても1人で歌ものの楽曲を完成させられるようになったとか、そもそもなぜ人々は初音ミクっていう虚構のキャラクターに感情移入するんだろう? とか、色んな側面があって、どれかひとつだけで全てを語ることはできないんですけど、その中でも特に、存在しない虚構のキャラクターを中心にまわっているからこそ、ミクをインターフェースにしてそれぞれ自分の中の物語を投影し、感情移入出来るっていうのは大きいと思います。

―ではそのボカロシーンに対して、これまでは外側から見ていて、最近内側にも入り始めた佐藤さんとしては、今後どう関わっていくつもりですか?

佐藤:今まで自分がいたような領域と、ボカロシーンみたいな領域は今のところ交流が少ない感じがするので、その垣根をなくしていきたいなって。自分はちょうど中間ぐらいにいると思うんで、きっかけになるようなことをやっていきたいと思います。

―具体的なプランやアイディアはありますか?

佐藤:なんなんですかね…フジロックにミクも出るとか、そうなったら面白いですけど(笑)そういう話でもないんじゃないかと思って…。でもそうなるためには結局認識の問題っていうか、今は文脈を共有してないじゃないですか? お互い別の文脈があるんだっていうことを、当たり前のこととして認識できるようになれば、変わっていくんじゃないかなって。無理やり一緒に何かをやるとか、まとまろうとかじゃなくて、根本的な理解を促していくっていう。

―「初音ミク文化論」はまさにそういう役目を果たしてましたよね。

佐藤:こういうCINRAみたいな媒体でボカロとかニコ動の話をしてること自体がすごく重要なことだと思ってて、マーケティング的な話じゃなくて、もっと根本的な部分、この文化をどうやってサステナブルなものにしていくか、共有していくかっていう話をこういう場でできたことは、すごく僕も嬉しいし、意味があることなんじゃないかと思ってます。

Page 3
前へ 次へ

リリース情報

FLEET
『TRANSIT』

2011年1月26日発売
価格:1,800円(税込)
ポニーキャニオン / PCML-1002

1. oozora base
2. -ward
3. Transit
4. skip like jet spurt
5. she is the sun
6. path
7. shooting star

プロフィール

FLEET

2004年春、デザイナーだった佐藤純一を中心に結成。MyspaceやYoutubeの普及以前にHP上で発表した楽曲が話題に。ポストロックやエレクトロニカといったキーワードを感じさせながら佐藤純一の独自のセンスと歌心あるメロディーで構築された音楽性が公表を博す。最新作「TRANSIT」完成をもってオリジナルメンバーの池田雄一、仲井朋子が脱退。FLEETは佐藤純一のソロユニットとして再始動する。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

サニーデイ・サービス“Tokyo Sick feat. MARIA (VaVa Remix)”

サニーデイ・サービス“Tokyo Sick feat. MARIA (VaVa Remix)”MV。監督・三宅唱の眼差しを通せば、見慣れた街のたしかな息吹が感じられる。映り込む広告から、かなり最近撮影されたのだとわかるパートも。クレジットにまで忍ばせてある遊びにも心くすぐられた(バリュー・ドリモア)。<movieのように華やかじゃない>日々にも、きらめく瞬間が散りばめられているのだと知って、今年も東京で夏の蜃気楼を待ちわびてしまう。(井戸沼)

  1. W杯を彩る音楽。ロシア大会公式ソングや開会式出演者、中継テーマ曲を紹介 1

    W杯を彩る音楽。ロシア大会公式ソングや開会式出演者、中継テーマ曲を紹介

  2. 草凪優の官能小説『どうしようもない恋の唄』R18+で映画化、藤崎里菜ら出演 2

    草凪優の官能小説『どうしようもない恋の唄』R18+で映画化、藤崎里菜ら出演

  3. KOHHの沖縄旅行&地元に密着する『SWITCH』 宇多田、ワンオクTakaらも証言 3

    KOHHの沖縄旅行&地元に密着する『SWITCH』 宇多田、ワンオクTakaらも証言

  4. 椎名林檎&MIKIKO&西加奈子が旅番組初挑戦 NHK『猫にまた旅』でロシアへ 4

    椎名林檎&MIKIKO&西加奈子が旅番組初挑戦 NHK『猫にまた旅』でロシアへ

  5. 石原さとみが10秒メイクに挑戦、花王「オーブ」ウェブ動画&新CM公開 5

    石原さとみが10秒メイクに挑戦、花王「オーブ」ウェブ動画&新CM公開

  6. 安藤政信がカメラを向ける 仏写真家&愛人に着想の矢崎仁司監督作予告編 6

    安藤政信がカメラを向ける 仏写真家&愛人に着想の矢崎仁司監督作予告編

  7. 池松壮亮に尾崎豊が憑依 松居大悟監督『君が君で君だ』新場面写真公開 7

    池松壮亮に尾崎豊が憑依 松居大悟監督『君が君で君だ』新場面写真公開

  8. 小池徹平が「先生界のプリンス」 中川大志主演『覚悟はいいかそこの女子。』 8

    小池徹平が「先生界のプリンス」 中川大志主演『覚悟はいいかそこの女子。』

  9. ラッパーのXXXTentacionが銃撃受けて逝去 20歳 9

    ラッパーのXXXTentacionが銃撃受けて逝去 20歳

  10. 野村萬斎×落合陽一 「表現の本質」に迫る『MANSAI◎解体新書』第28弾 10

    野村萬斎×落合陽一 「表現の本質」に迫る『MANSAI◎解体新書』第28弾