特集 PR

音楽は人を変えられる 砂原良徳インタビュー

音楽は人を変えられる 砂原良徳インタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2011/04/01

物の流れとか、人の気分とか雰囲気とか、そういうものがどんどん変わってますけど、やっぱりそれを感じて、その上で音を出すっていう。

―『LOVEBEAT』から『liminal』へと至る音の変化の背景にあるものって、技術的なこと以外では、何が一番大きいのでしょうか?

砂原:やっぱり僕も地球に生まれて、人類の秩序の中で生きてますから、その社会で起きていること全てに影響されますよね。ニュースを見るといろんなことが起こっていて、物の流れとか、人の気分とか雰囲気とか、そういうものがこのところどんどん変わってきて。それを感じて、その上で音を出すわけなので、やっぱりこの10年で大きく変わりましたよね。

―つまりは、音楽に対するリアクションで音楽を作るんじゃなくて、現実世界に対するリアクションとして音楽を作っていると。

砂原:『LOVEBEAT』以降は特にそうですね。音楽のトレンドよりも、社会の雰囲気の方がよほど影響も大きいと思うし、だから僕は今何が流行ってるのか知らないんですよ、全然。ダブステップがどういうものかすら、未だによくわかってないし。

―砂原さんって、海外のトレンドに対するリアクションが強いのかと思っていました。

砂原:若いときはそれでもよかったと思うんですけど、今はシーン的なものが昔ほど強固に定まっているわけじゃないから、あんまりそこは気にしないで作っているんですけどね。

―なるほど。昨年リリースされたシングル『subliminal』って、すごく切迫感のある、警告音を音楽的にリデザインしたような楽曲に思えたんですが、それって社会状況が混沌の度合いを強めていることの反映だと言っていいのでしょうか?

砂原:間違いなくそうだと思います。テレビなんか見てても、現代社会の問題をテーマにした番組がよくありますけど、「こういういいことがありました」っていうんじゃなくて、「今後こういった困ったことがいっぱいあるけど、どうしていこうか?」っていうことの方が圧倒的に多いと思うんですね。特に日本はそうだと思うんですけど。

―それがアルバムにも反映されていると。

砂原:そうです。僕の家の横には小学校があって、小学生が登下校する姿を見ることがよくあるんですけど、彼らのことを羨ましいとはまったく思わないんですよね。むしろ、かわいそうだとしか思わない。なんかね、お母さんと一緒に子供が歩いてるんだけど、お母さんビシッとした格好ですごく決まってるのに、子供は靴に穴開いたりとかしてて、「え? 親子なの?」みたい母子が結構いて。子供はかわいそうだなと思いますよ。全然子供のこと考えてない国だなってホントに思うし。

砂原良徳

もし今の音楽に人を変える力がないのなら、僕は今すぐ音楽をやめます。

―そういう現実を反映した音楽を、聴き手にどういう風に捉えてほしいというのはありますか?

砂原:そういうのはないんですよ。もちろん時代の雰囲気や気分が反映されているってわかってくれたら、作った甲斐はあるかなって思います。でもそれを言ったところで、なかなかそういう風には捉えられないと思うし、逆に、どういう風に捉えてもらえるのか興味がありますね。

―砂原さんの音楽にはもちろんダンスミュージック的な側面もあるわけですけど、ただ快楽主義的な音楽ではなくて、人に何かを気づかせたり、何かを変える力になるような音楽に興味があるということですよね?

砂原:そうですね。そういうことがやりたいのであって、ただ単純に聴いて気持ちがいい音楽しか作らないんだったら、音楽をやめてもいいかなって思います(笑)。例えば、音楽を政治的なことに利用するなと言う人もいますけど、音楽で政治がよくなるんだったら、俺はどんどん使ってほしいと思ってて。ポップミュージックの歴史を振り返ってみると、音楽は人の考え方やライフスタイルを変えたり、もしくはそういうものとリンクしたりしてきたわけですよね。もし今の音楽にそういう力がないのなら、僕は今すぐ音楽をやめます。

―でも、そういう力があるはずだと。

砂原:うん、それがないんだったら面白くないし、そういうものを少しでも期待してやっているところがありますね。だけど、2000年以降のポップミュージックからそういう力が失われつつあるのも、強く感じるんです。

3/4ページ:「ポップミュージックは20世紀のもの」ということで、一度そうやって割り切ったほうがいいんじゃないかと考えているんです。

Page 2
前へ 次へ

リリース情報

砂原良徳『liminal』
砂原良徳
『liminal』初回限定盤(CD+DVD)

2011年4月6日発売
価格:3,360円(税込)
Ki/oon / KSCL-1666-1667

1. The First Step(Version liminal)
2. Physical Music
3. Natural
4. Bluelight
5. Boiling Point
6. Beat It
7. Capacity(Version liminal)
8. liminal
[DVD収録内容]
1. subliminal
2. Wave Motioh(Version2)
3. LOVEBEAT(live at Liquidroom 2009)

リリース情報

砂原良徳『liminal』
砂原良徳
『liminal』通常盤

2011年4月6日発売
価格:3,059円(税込)
Ki/oon / KSCL-1668

1. The First Step(Version liminal)
2. Physical Music
3. Natural
4. Bluelight
5. Boiling Point
6. Beat It
7. Capacity(Version liminal)
8. liminal

プロフィール

砂原良徳

電気グルーヴに91年に加入し、99年に脱退。ソロとしては、95年〜01年にかけて4枚のアルバムをリリースし、その他にもプロデュースワークや数多くのCM音楽などをを手掛けてきた。昨年5月には、元スーパーカーのメンバーで現在は作詞家、音楽プロデューサーとして活躍するいしわたり淳治とプロデュースユニット (ユニット名:いしわたり淳治&砂原良徳)を始動。同年7月に9年ぶりとなるオリジナル作品、4曲収録のEP『subliminal』をリリース。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

『角舘健悟 × 青葉市子 Live at Waseda Scotthall』

2020年、全4回にわたって行われてきた対談連載企画『角舘健悟の未知との遭遇』。青葉市子と遭遇し、教会に迷い込んだ2人の秘密のセッションの様子が公開された。本連載の趣旨でもあり、2人を繋いだYogee New Wavesの”Summer of Love”と、青葉市子の”みなしごの雨”を披露。クリスマスの夜にどうぞ。(川浦)

  1. KID FRESINOが示す良好なバランス。多層的な創作者としての姿勢 1

    KID FRESINOが示す良好なバランス。多層的な創作者としての姿勢

  2. 木村拓哉がスーツ姿で仲野太賀、塚地武雅と共演 マクドナルド新CM 2

    木村拓哉がスーツ姿で仲野太賀、塚地武雅と共演 マクドナルド新CM

  3. Gotchが歌う「生の肯定」 現代社会のほころびを見つめ直して語る 3

    Gotchが歌う「生の肯定」 現代社会のほころびを見つめ直して語る

  4. 山田孝之主演のNetflix『全裸監督』シーズン2 新ヒロインに恒松祐里 4

    山田孝之主演のNetflix『全裸監督』シーズン2 新ヒロインに恒松祐里

  5. 綾野剛が白昼の商店街を疾走、映画『ヤクザと家族 The Family』本編映像 5

    綾野剛が白昼の商店街を疾走、映画『ヤクザと家族 The Family』本編映像

  6. キンプリ平野紫耀と杉咲花がウサギになりきってぴょんぴょんするHulu新CM 6

    キンプリ平野紫耀と杉咲花がウサギになりきってぴょんぴょんするHulu新CM

  7. 『鬼滅の刃』煉獄杏寿郎の日輪刀を再現 「うまい!」などセリフ音声収録 7

    『鬼滅の刃』煉獄杏寿郎の日輪刀を再現 「うまい!」などセリフ音声収録

  8. 吉高由里子、知念侑李、神宮寺勇太が「アレグラFX」新広告キャラクターに 8

    吉高由里子、知念侑李、神宮寺勇太が「アレグラFX」新広告キャラクターに

  9. 緊急事態宣言下における「ライブイベント公演の開催」に関する共同声明発表 9

    緊急事態宣言下における「ライブイベント公演の開催」に関する共同声明発表

  10. ermhoiの「声」を輝かせている生い立ち、思想、知識、機材を取材 10

    ermhoiの「声」を輝かせている生い立ち、思想、知識、機材を取材