
音楽は人を変えられる 砂原良徳インタビュー
- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:柏井万作
「ポップミュージックは20世紀のもの」ということで、一度そうやって割り切ったほうがいいんじゃないかと考えているんです。
―趣味のものでしかない?
砂原:そうですね、どんどんそうなってきていると思います。でもヒップホップとかが世の中を変えていくのを見てきているし、古臭いと思われるかもしれないですけど、そういう要素は自分の中ですごく大事なんです。
―砂原さんがそういった音楽の力を最も実感したのって、いつの経験が大きいですか?
砂原:いつかな…80年代もあったんでしょうけど、自分で強く実感したのは90年代に自分が濃い活動をしていたときでしょうね。自分たちが作品を出したり、何かを言ったり、世の中に対してプレゼンテーションすることで、少なからず世の中の雰囲気とか人の考えが変わることを実感できた時期でした。
―僕は今31歳なんですけど、僕らが10代の頃っていうのが、まさにその時期ですね。
砂原:僕らの周りだったら、電気グルーヴがいて、スチャダラパーがいて、コーネリアスがいて、(トーキョーNo.1)ソウルセットもいて、みたいな状況の中で、お互いに刺激し合いながら時代の雰囲気を作ってたと思うんですよね。
―90年代のように砂原さんが再び矢面に立って世の中にプレゼンテーションをするっていう可能性はあるのでしょうか?
砂原:僕はあんまり…暴走族でいうと、アタマを走ったりするタイプの人間ではないので(笑)。僕はもっと真ん中の、変わった役割をするタイプの人間だと思うんですよ。だから、僕が何かやることで全部がガラッと変わることはないけど、1枚でも2枚でもぺラッとめくれて、それの連鎖反応があるかもしれないっていう、そういう希望に基づいてやってますね。
―では現代社会っていうのを音楽業界に絞って考えるといかがでしょう? 非常に大きな変化の途中にあると思うのですが、どのようなことをお考えですか?
砂原:例えば50年代の音楽のイメージってありますよね? それと同じように、60年代、70年代、80年代、90年代、それぞれあると思うんですけど、00年代のイメージはありますか?
―うーん…。
砂原:ないんですよ。そしてここから先の10年も、おそらくないと思うんです。11年経って、それでも出てきていないんだから。そういう意味でいうとこの音楽の流れというのは、1度終わったと考えるしかないと思う。つまり「ポップミュージックは20世紀のもの」ということで、1度そうやって割り切ったほうがいいんじゃないかと考えているんです。そしてそれでも音楽をやるんだったら、どういうやり方で、どういうことをやったらいいのかっていうのは、自分でも課題ですね。
―なるほど。
砂原:CDは売れないですよね。今までカルチャーの中に参加しようと思ったら、CDを買って、共通の話題を持った友達を作って、ライブとかクラブとかに実際足を運んで、それでやっと参加できたんですよ。でも今はとりあえずネットがつながってれば、YouTubeで曲を聴いて、Twitterにああだこうだ書いて、レスもらって、それで終わりです。そうなると、それを仕事にしてる人たちのところにお金が回らなくなりますから、当然縮小していくと思うんですね。
―そうですね。
砂原:今はメジャーレーベルでもなんでもそうですけど、クオリティうんぬんよりも、予算のかからないことを優先していると思うんです。「これは安いからやれるな」っていうのが、すごく増えてる。もちろん、お金を使えばいいっていう話ではないですけど、僕らの世代だとマイケル・ジャクソンがドカーンみたいな、マドンナがダーンとか、そういうのを見てきたわけじゃないですか? やっぱり経済の流れの中に音楽がある程度は食い込んでいかないと、しぼんでいくしかないと思うんです。
4/4ページ:音楽自体は結構抽象的なものだと思うから、やっぱり誤解の部分っていうか、違った解釈があるっていう、それが面白いところですからね。
リリース情報

- 砂原良徳
『liminal』初回限定盤(CD+DVD) -
2011年4月6日発売
価格:3,360円(税込)
Ki/oon / KSCL-1666-16671. The First Step(Version liminal)
2. Physical Music
3. Natural
4. Bluelight
5. Boiling Point
6. Beat It
7. Capacity(Version liminal)
8. liminal
[DVD収録内容]
1. subliminal
2. Wave Motioh(Version2)
3. LOVEBEAT(live at Liquidroom 2009)
リリース情報

- 砂原良徳
『liminal』通常盤 -
2011年4月6日発売
価格:3,059円(税込)
Ki/oon / KSCL-16681. The First Step(Version liminal)
2. Physical Music
3. Natural
4. Bluelight
5. Boiling Point
6. Beat It
7. Capacity(Version liminal)
8. liminal
プロフィール
- 砂原良徳
-
電気グルーヴに91年に加入し、99年に脱退。ソロとしては、95年〜01年にかけて4枚のアルバムをリリースし、その他にもプロデュースワークや数多くのCM音楽などをを手掛けてきた。昨年5月には、元スーパーカーのメンバーで現在は作詞家、音楽プロデューサーとして活躍するいしわたり淳治とプロデュースユニット (ユニット名:いしわたり淳治&砂原良徳)を始動。同年7月に9年ぶりとなるオリジナル作品、4曲収録のEP『subliminal』をリリース。