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いつまでも胸に残るものを KENTARO!! インタビュー

いつまでも胸に残るものを KENTARO!! インタビュー

インタビュー
小林宏彰
テキスト:田島太陽 撮影:寺沢美遊 撮影場所:セゾン文化財団森下スタジオ
2011/05/16

2008年12月に長編『Wピースに雪が降る』(吉祥寺シアター)にて旗揚げし、切なく楽しい、音楽に密接した物語的ダンスが話題を呼んだダンスカンパニー「東京ELECTROCK STAIRS」。その新作となる『届けて、かいつぶくん』が6月より上演される。「たまらなく会いたい。だけど会いたくなければ来なくていい。それでも待ち合わせ場所には行く。」そんな独特のキャッチコピーに彩られた今作はどんな経緯で誕生し、どのような想いが込められているのか。震災の影響や自身のダンス観なども含め、主宰のKENTARO!!に聞いた。

日本的なイメージをダンスで伝えたい

─KENTARO!!さんの作品は演劇的な要素や物語性があって、そこに含まれる切なさや情感がすごく素敵ですよね。ただ今作の『届けて、かいぶつくん』はタイトルから内容が想像しづらいのですが、どんな作品なんでしょうか?

KENTARO!!:今回ははっきりとした物語はないんです。伝えたいメッセージはあったから、それをどう表現するかの戦いですね。まだ稽古中なので、ギリギリまで悩むところもあると思います。

─届けたいメッセージというのは?

KENTARO!!:いちばんは、日本的なイメージというか、美しさって言えばいいのかな。僕は小学校から母親の影響で洋楽をずっと聴いていたし、ダンスもずっとHIP HOPを踊っていたから、日本の伝統的なものをルーツにしていないんですよ。でもどんなにがんばっても、HIP HOPじゃルーツの部分で黒人には負けちゃうんだなとは思っていて。それで日本人らしさを表現できるダンスってなんだろうって考えたのが、コンテンポラリーを始めた理由のひとつなんです。それも若者だけじゃなくて、老若男女を問わずできるだけたくさんの人に届くものにしたいという思いが根底にありますね。

いつまでも胸に残るものを KENTARO!! インタビュー
『Wピースに雪が降る』(2008年12月、吉祥寺シアター) Photo:Yoko Kida

─日本的というと、踊りや音楽が?

KENTARO!!:うーん、例えば海外の人が観たときに「欧米っぽいね」とは絶対に言わないと思います。向こうはストレートな表現だから、女の子を倒すシーンでもバーンって勢いよくやったりするけど、そうではなくて。細かいニュアンスや柔らかさなのかな…言葉にするのはすごく難しいので、ぜひ観に来ていただきたいんですけど(笑)。

─言葉では表せないような日本のイメージや素晴らしさを、コンテンポラリーダンスで表現したということですか?

KENTARO!!:そうすることで、もっとダンスに観客を呼べるんじゃないかと思うんです。「和」という意味は全くなく。現状、ストリートダンスイベントに来てる人ってほとんどダンスをやっている人で、広がりがあまりないしコンテンポラリーダンスの客層も閉鎖的な気がしているので、その状況を変えたいんですね。

話は戻りますが、HIP HOPダンスの子ども向けの大会で審査員をやらせてもらったこともあって、みんなすごくうまかったんですけど、日本らしさが全然ないことに寂しさを感じたりもしていました。

いつまでも胸に残るものを KENTARO!! インタビュー
KENTARO!!

30年後に観ても面白いものじゃないと

─ちなみに海外と日本では、ダンスを取り巻く状況や環境はかなり違うんですか?

KENTARO!!:全然違いますね。パリにいた頃に実感したんですけど、パリではコンテンポラリーダンスを授業で小学生にも見せてたんです。それで彼らが面白さを分からなくても、観る機会があるだけで全然違うんですよ。だから僕はジャンルの区別を意識せず、ダンスに観客を呼び込むための橋渡しができればいいかなって最近よく思ってます。

─ダンスで感動させたいとか楽しませたいということよりも、もっと多くの人に広めたいという思いの方が強い?

KENTARO!!:どちらもありますよ。もちろん踊りを見せる時点である程度のエンターテインメント性はないといけないし、感動もしてほしいです。でもそれより、観た人の胸にしっかりと残したいなと。音楽や映画はモノとして置いておけるから、忘れてもまた聴いたり観たりできるけど、ダンスにはそれがないことがちょっとコンプレックスで。記憶の中にどれだけ残せるかが勝負だから、そのためには物語を語るだけではダメだなと思って見せ方を考えています。音楽を自分で作るようになったのも世界観をより強めたかったからだし。やっぱり僕は、ダンスでなにかを変えられるってまだ信じているから。

─そうだったんですね。でもKENTARO!!さんのダンスって、踊る楽しさがすごく伝わってきますよ。

KENTARO!!:普遍的なものにしたいとはずっと思ってるんですよ。30年後に観ても面白いものじゃないとダメだよなって。だから今回も…実は東日本大震災を経ていろんなことを考えたんですけど、作品づくりの姿勢に関してはこれまでと変わらないですね。むしろ今までやっていたことを突き詰めるようになったというか。

2/3ページ:誰かが肯定してくれないと、「表現なんてしてはいけない」空気があった

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イベント情報

東京ELECTROCK STAIRS新作公演
『届けて、かいぶつくん』

2011年6月1日(水)~6月5日(日)全6回公演
会場:東京都 三軒茶屋 シアタートラム

振付・演出・音楽・出演:KENTARO!!
出演:
伊藤知奈美
川口真知
高橋幸平
高橋萌登
服部未来
山本しんじ
横山彰乃
aokid

料金:一般 前売3,000円 当日3,500円 学生2,500円(前売のみ)
劇場友の会2,700円(前売のみ)
世田谷区民2,800円(前売のみ)

プロフィール

KENTARO!!

1980年生まれ。「東京ELECTROCK STAIRS」主宰。HIP HOPベースに、LOCKDANCE、HOUSEなどを学び様々なチームやユニットで経験を積む。音楽シーンやコンテンポラリーダンス、演劇等に影響を受けた自由な発想による「ダンス」を創作。オリジナル楽曲制作、若手アーティストよる企画公演のプロデューサーとしても活躍中。2008年、横浜ダンスコレクションRにて若手振付家のための在日フランス大使館賞、『トヨタコレオグラフィーアワード08』にてオーディエンス賞、ネクステージ特別賞を受賞。2009年度の活動に対し、第4回日本ダンスフォーラム賞受賞。

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