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メッセージは必要ない 細野晴臣インタビュー

メッセージは必要ない 細野晴臣インタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
2011/06/17

あんまり外を向いてないんですよ。中へ中へと旅してるようなアルバムです

―先ほど『トロピカル・ダンディー』の話もありましたが、「エキゾチシズム」っていうのは細野さんの代名詞のひとつとしてあって、本作にもそういった要素はありますよね。

細野:全部入っちゃってますね。「これは今回やめとこう」とかそういうのはなくて、普段考えてることがどうしても全部入っちゃうんです。「エキゾチシズム」は、昔はやれカリビアンだ、やれ沖縄だって、地理的に遠いところの音楽をいかに自分の中に取り入れるかっていう意味での「エキゾチシズム」だったんですけど、今回の“Kimona Girl”なんて曲は、東京の昔の姿ですから。地理じゃなくて、今ここにいる場所の昔への憧れなんですね。そういう風に、ちょっと次元が変わってきてますね。

―地理ではなくて、時間軸に変わってきてると。

細野:つまり、それは外じゃなくて、自分の中の方に今向かってるっていうことで、あんまり外を向いてないんですよ。中へ中へと旅してるようなアルバムです。

―確かに、音楽的なルーツを辿るという意味でも、今言った時間軸的な意味でもそうですよね。では、なぜ今細野さんの表現が中へ向かっているのでしょうか?

細野:今の社会にある表現っていうのが全部外に向かってるんで、僕にとってそれはうるさいと思ってしまうんですね。メッセージが届いてくるんだけど、僕はもう必要ないかなと思って。アピールすることに興味がなくなってきたんですね。例えば、現代アートも何かしらメッセージを持ってたり、そういうものに今興味がなくなっちゃったんです。

―そういうことは自分はもう若い頃にやってきたということですか?

細野:たぶんね、時代背景なんだと思うのね。1960年代とかその時代のアートは好きですよ、もちろんもっと昔のもね。でも現代の、21世紀のカルチャーはあんまり好きじゃない。しゃべり過ぎるし、うるさいって感じがあって。しかも、それが商品に結びついちゃってるんで、信用できないわけですよ。例えば、すごい好きなお笑いの人がいたとして、テレビの通販番組に出てるとがっかりするんですよ(笑)。そういうことに近いかな。

―昔はマーケットの外に存在できたけど、現代ではどうしても関連付けられてしまうと。

細野:そうだね。それが飽和状態だったんですけど、地震をきっかけに何かが変わりつつあると思います。でも相変わらずそれを持続しようとする力も強くて、今はそれを見極めようという感じですかね。

―改めてお伺いすると、地震の以前と以後で何が変わりましたか?

細野:たぶんね、自分の中で震災はずいぶん前に済んでるというか、大きな変化っていうのは長い間かけて起こってるんで、その結果がここ(『HoSoNoVa』)に出てるんです。そういう意味では地震の後でも変わらないんですけど、ただ社会と自分の関係はすごく変わってきてると思う。例えば、「テレビはもう見たくないな」とかね。ずっと垂れ流しで見てたんですけど、今は自分の中でニュースも含めて見る価値がなくなってきちゃって。それよりも何かやれることがありそうだなって感じが今あって、音楽の表現をどうして行こうか考え直してる時期ですね。

―なるほど。

細野:『HoSoNoVa』がこの時期に出るのは怖かったんですけど、身近な人たちの反応はおおむね肯定的だったんです。「とてもフィットする」「こういうときに聴けてよかった」とかね。そういう声を聞いて安堵しました。自分で客観的にはわからないんですけどね、まだ聴き直してないですし(笑)。

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リリース情報

細野晴臣『HoSoNoVa』
細野晴臣
『HoSoNoVa』

2011年4月20日発売
価格:3,150円(税込)
VICL-63777

1. ラモナ
2. スマイル
3. 悲しみのラッキースター
4. ローズマリー、ティートゥリー
5. ただいま
6. ロンサム・ロードムービー
7. ウォーカーズ・ブルース
8. バナナ追分
9. レイジーボーン
10. デザート・ブルース
11. カモナ・ガール
12. ラヴ・ミー

プロフィール

細野晴臣

1947年東京生まれ。音楽家。69年「エイプリル・フール」でデビュー。70年「はっぴいえんど」を結成。73年ソロ活動を開始。同時に「ティン・パン・アレー」としても活動。78年高橋幸宏、坂本龍一とともに「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」を結成。YMO散開後は、ワールド・ミュージック、アンビエント・ミュージックを探求、また歌謡界での楽曲提供を手掛けプロデューサー、レーベル主宰者としても活動。

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