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記憶を失った音楽家GOMAが、「未来」を信じるまで

記憶を失った音楽家GOMAが、「未来」を信じるまで

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2011/09/13
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失われていく記憶と、自分が生きた証

その後の検査によって、GOMAはここ10年間の記憶をほとんど失っていることが判明した。脳は木の年輪のような構造になっているため、外側の、比較的最近の層の記憶が失われ、逆に内側にある古い記憶は覚えているのだという。もちろん、「覚えてる/覚えてない」のジャッジがどのように下されているかはわからず、消えてしまった記憶に対しては「消えている」ということにさえ気がつかない。

記憶を失った音楽家GOMAが、「未来」を信じるまで 記憶を失った音楽家GOMAが、「未来」を信じるまで

GOMA:話を聞いても何のことか全然わからないし、写真を見ても他人の写真を見てるみたいで。そこにいるのは確かに自分なんだけど、そこで笑ってる自分が何でこの場所にいて、何で笑ってるのかがわからない。妻に話を聞いたりして、自分の過去を自分で勉強していくみたいな、そういう状況がしばらく続きました。

さらに深刻だったのが、事故以後の記憶がなかなか定着しなかったことだ。当初は「5分前の記憶もどんどん消えていくような状態だった」という。出かけても道がわからず帰って来れなくなったり、病院に行っても自分が何のために病院に来たのかわからなくなってしまうという不安な日々が続いた。そんな中で、GOMAはある日突然絵を描き始める。

GOMA:どうやって、いつ描きだしたのかも全然覚えてないんです。まだ意識も安定してないような状況の中、娘の絵の具を使っていきなり始めたらしいです。

事故以前も音楽と並行して絵を描いていた…というのなら納得もいくのだが、これまでに絵の経験はほぼゼロ。「小学校の授業でやったぐらい」と言うのだから、不思議だと言わざるを得ない。実際にその絵をみていただければ誰だって驚くと思うのだが、これらの作品が、絵を描いた経験のない人間が突然描いたものだと、誰が思うだろう。ディジュリドゥという、オーストラリアの先住民族アボリジニーの楽器を演奏し、その聖地で行われた大会でアボリジニー以外のプレイヤーとしては初となる受賞歴(準優勝だった)を持つGOMA。ディジュリドゥで証明した直感的なセンスと抜群の表現能力、GOMAが本来持っていたアーティスティックな才能の表れとしか、説明する手段がない。

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GOMAが描いた作品群※画像クリックで拡大

「絵を描く」というのは、人間が持つ本能的な自己治癒能力の表れでもあるそうだ。脳損傷のリハビリにおいて、絵を描くという行為は脳の細胞を再生させるのに効果的であり、実際にリハビリのプログラムとして取り入れている病院は世界中にあるのだという。同様に、事故前はあまり食べなかった肉類を事故後には大量に食べるようになったのも、やはり肉から脳の細胞を活性化させる栄養が採れることに起因してる。そしてまた、絵を描くことは彼にとってより重要な別の意味も持っていた。

記憶を失った音楽家GOMAが、「未来」を信じるまで 記憶を失った音楽家GOMAが、「未来」を信じるまで

GOMA:絵の裏には日付を書いていて、日記もずっと書いてたんですけど、それを見ることで事故から自分の生きてきた道のりを確認できるんですよね。最初は「その日に自分が生きた証」みたいな感じで、次の日の自分に知らせるために描いてたんです。次の日起きたら、昨日の自分が何をやっていたのかすらわからなかったので。だから、日記には自分を勇気づけるような言葉が最初の方はすごい多かったし、朝起きたときにテーブルの上に置いてある絵を見て「昨日の俺はこれを頑張って描いたんや」ってすぐに確認して、そこに自分の過去を見てたんだと思うんです。

3/4ページ:傷ついた脳を客観的に見ている自分

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リリース情報

GOMA & The Jungle Rhythm Section『I Believed the Future.』
GOMA & The Jungle Rhythm Section
『I Believed the Future.』

2011年9月14日発売
価格:2,500円(税込)
WRCD-51 / wonderground music

1. ONE GROOVE 2011
2. OMOTINO 2011
3. EUCALIPTUS 2011
4. CACTUS 2011
5. AFRO BILLY 2011
6. RIODIDGENEIRO 2011
7. FLOW

プロフィール

GOMA & The Jungle Rhythm Section

ディジュリドゥー・マスター=GOMAの活動の中でもっとも熱く、もっとも踊れるブッ飛びGROOVEバンド!日本を代表するGROOVEドラマー椎野恭一、リトルテンポでも活躍するラテンパーカッショニスト田鹿健太、アフリカで鍛えた野生のパーカッショニスト辻コースケとGOMAが叩き出す超絶GROOVEが、全国の野外フェス/パーティーシーンで大ブレイク!2枚のアルバムを発表し、シーンを代表するバンドとして活躍していたが、2009年11月にGOMAが交通事故で外傷性脳損傷を負い、記憶の一部が消えてしまったり、新しい事を憶えづらくなる高次脳機能障害の症状が後遺し、すべての音楽活動を休止。その後1年8ヶ月に及ぶ懸命のリハビリを経て、『FUJI ROCK FESTIVAL'11』でついに奇跡の復活を果たした!

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冠木佐和子『夏のゲロは冬の肴』

『アヌシー国際アニメーション映画祭』学生部門で審査員賞に輝いた『夏のゲロは冬の肴』。ビビッドな色使いと繰り返される嘔吐音が印象的な(けれどなぜか愛らしい)アニメはもちろん、受賞の際にステージで「I wanna fuck everyone.」とスピーチしたという90年生まれの監督・冠木佐和子にも注目。仲條正義の『忘れちゃってEASY 思い出してCRAZY』展を思い出させるタイトルも好み。(井戸沼)