特集 PR

孤高のフリージャズ・ピアニスト スガダイローインタビュー

孤高のフリージャズ・ピアニスト スガダイローインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作

多分俺はあの人の人生を無意識のうちになぞってるんだなって。

―今の話の流れで言うと、本作にはそのものずばり"山下洋輔"っていうタイトルの曲がありますよね。

スガ:そうそう、山下洋輔が「好き」っていう(笑)。この曲自体は山下洋輔トリオ風の曲を作りたいと思って作ったんですけど、ジャズ・ピアニストになりたいって思ったのもこの人のおかげだったし、それぐらいストレートでいいかなって。一時期遠ざけたりもしたんだけど、聴き返して、「やっぱり、これ好きだな」っていう。

―山下さんのどんな部分に衝撃を受けたんですか?

スガ:60年代の演奏とか、ホントめちゃくちゃなんですよ。今聴いても信じられないぐらいめちゃくちゃで、あれを音楽だと認められない人ってウジャウジャいると思うんです。それで「こんなの音楽じゃない」って俺も一時期思っちゃったんだけど、いろんな情報なしにもう一回聴いたら、やっぱり面白い音楽だったんですよね。

―先ほどの話しと関連して、ジャンルのかっこよさじゃなくて、その人のかっこよさっていう。

スガ:あれは完全にジャズとかじゃないですよね。「山下洋輔」っていうかっこよさですよね。

―それこそ、山下さんも異種格闘技的なことをされてますもんね。

孤高のフリージャズ・ピアニスト スガダイローインタビュー

スガ:やってますよね。多分俺はあの人の人生を無意識のうちになぞってるんだなって。それはどうしようもないし、それでいいかなって。

―一時期は「俺はなぞってねえ」と思いたかった?

スガ:そう、「あんたとは違う」っていう気持ちがあったけど、今は「別に一緒でいいや」と思って。「好きだし」っていう(笑)。

―そんな山下さんと去年デュオで演奏されたんですよね?

スガ:俺の人生の中の一つの頂点でしたね。でもあんまり感慨深くしてると緊張しちゃうから、知らんぷりしながら演奏しましたけど(笑)。でも、向こうが「やろうよ」って言ってくれて、一緒にできたっていうのは本当に嬉しかったですね。

―おふたりでいるときはやっぱり先生と生徒って感じになるんですか(スガはかつて洗足学園ジャズコースで山下洋輔に師事している)?

スガ:その関係はもうやめようと思って、先輩後輩ぐらいでいたいというか、そうじゃないとあんまりいい関係になれないと思うから。尊敬はもちろんしてますけどね。

一本締めってあるじゃないですか?「ヨーッ、パン!」って。これ外人できないらしいんですよ。

―さきほど日本人らしいシンプルなメロディという話がありましたが、リズムに関してはいかがですか? 資料には「和の間合いを練り込み」という記述もありますが。

スガ:アルバムに入ってる曲って、どの曲もリズムがずれてるんですよ。基準に対して正確ではないんだけど、「俺たちの正解はここだから」っていう、そういう合わせ方は日本人って得意だと思うんです。

孤高のフリージャズ・ピアニスト スガダイローインタビュー

―ずれてても無理やり合わせるっていうことですか?

スガ:一本締めってあるじゃないですか? 「ヨーッ、パン!」って(2人でやる)。これって、外人はできないらしいんですよ。今のも、俺たちの拍子はずれてたんだけど、合ってることにしてるじゃないですか? その何とも言えない感じ、日本人特有の間合いの取り方があると思って。俺の曲はほとんどがメトロノームで割れない状態になってて、それはこのトリオじゃないとできない音楽なんです。

―外人が一本締めできないって面白いですね。

スガ:一本締めの前にカウントが必要っていう。「3、2、1、パン!」って(笑)。「ヨーッ」だと「それじゃわかんないよ」ってなっちゃう(笑)。

―でも、そこに日本人らしい面白さを見出したわけですね。

スガ:そうですね。もしそれがダンスミュージックだったら問題だろうけど、俺にとってリズムの揺れとか、速くなったり遅くなったりっていうのは、音楽的な問題ではないんです。

4/4ページ:自分の一部とは思わないけど、見つけると「あ、ピアノだ!」って嬉しくなるっていうか(笑)。

Page 3
前へ 次へ

リリース情報

スガダイロー『スガダイローの肖像・弐』
スガダイロー
『スガダイローの肖像・弐』

2011年10月19日発売
価格:2,500円(税込)
PCCY.30194 / ポニーキャニオン

1. 乱(作曲:スガダイロー)
2. 蒸気機関の発明(作曲:スガダイロー)
3. 山下洋輔(作曲:スガダイロー)
4. BLUE SKIES(作曲:アーヴィング・バーリン)
5. さやか雨(作詞/作曲:岡田規絵)
6. 春風(作曲:スガダイロー)
7. 無宿鉄蔵毒団子で死なず(作曲:スガダイロー)
8. 寿限無(作曲:スガダイロー/作詞:作者不詳)
9. 戦国(作曲:スガダイロー)
10. 時計遊戯(作曲:スガダイロー)
11. 最後のニュース(作詞/作曲:井上陽水)
12. All The Things You Are(作曲:ジェローム・カーン)

リリース情報

スガダイロー『八番勝負』
スガダイロー
『八番勝負』

2011年8月17日発売
価格:2,500円(税込)
PCCY-30188 / ポニーキャニオン

1. 2011年05月11日 スガダイロー vs 向井秀徳
2. 2011年04月09日 スガダイロー vs 仙波清彦
3. 2010年09月09日 スガダイロー vs The Sun calls Stars:伊藤大助+オータコージ
4. 2010年09月07日 スガダイロー vs 本田珠也
5. 2010年09月06日 スガダイロー vs 山本達久
6. 2010年09月05日 スガダイロー vs U-zhaan
7. 2010年09月04日 スガダイロー vs 松下敦
8. 2010年09月03日 スガダイロー vs 志人
9. 2010年09月09日 スガダイロー・ソロ

プロフィール

スガダイロー

1974年生まれ、鎌倉育ち。学生時代は生物学者を目指すも其の道から挫折、ピアノに転向する。洗足学園ジャズコースの実技試験にて山下洋輔をアッと驚かせ、栄えある一期生として入学。その後バークリー音楽大学に4年間留学し、帰国後は「渋さ知らズ」でも活動。坂田明・AxSxE・中村達也・ZAZEN BOYSなどとも共演を重ねている、間違いなく21世紀の日本でただ一人の、バリバリのフリージャズ・ピアニストである。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

君島大空“遠視のコントラルト”

屈折したイノセンスが爆発するような、君島大空の“遠視のコントラルト”のMV。『The Bends』の頃のRadioheadのようなギターとセンシティブに揺ぐボーカルが描き出す、ピュアでまばゆい楽曲世界にクラっとくる。松永つぐみが手がけた映像も素晴らしく、実験映像的なカットを重ね、儚く消え入りそうな繊細で美しい才能を見事に切り取っている。爆音で凝視してほしい。
(山元)

  1. あいみょんから年下の子たち&大人へ 直感と瞬間の大切さを語る 1

    あいみょんから年下の子たち&大人へ 直感と瞬間の大切さを語る

  2. NUMBER GIRLがオリジナルメンバーで再結成、向井秀徳のコメントも 2

    NUMBER GIRLがオリジナルメンバーで再結成、向井秀徳のコメントも

  3. 宮本浩次が感情を露わに車を運転する“冬の花”PV公開 監督は児玉裕一 3

    宮本浩次が感情を露わに車を運転する“冬の花”PV公開 監督は児玉裕一

  4. エロか、フェチか。外林健太と青山裕企が、女性ばかりを撮る理由 4

    エロか、フェチか。外林健太と青山裕企が、女性ばかりを撮る理由

  5. 多部未華子が猫の「にゃらん」と妄想旅 「じゃらん」新CM 5

    多部未華子が猫の「にゃらん」と妄想旅 「じゃらん」新CM

  6. 『RISING SUN ROCK FES』第1弾でナンバガ、スカパラ、King Gnuら8組 6

    『RISING SUN ROCK FES』第1弾でナンバガ、スカパラ、King Gnuら8組

  7. Eveとは何者か? MVの総再生回数2億2千万回を誇る彼の歩みを考察 7

    Eveとは何者か? MVの総再生回数2億2千万回を誇る彼の歩みを考察

  8. CHAIは世の中にPUNKを掲げる。皆がなりたい自分になれるように 8

    CHAIは世の中にPUNKを掲げる。皆がなりたい自分になれるように

  9. 椿昇がバッサリ斬る、社会とアートの関係「京都の街に革命を」 9

    椿昇がバッサリ斬る、社会とアートの関係「京都の街に革命を」

  10. ビル・エヴァンス生誕90周年 生涯辿る記録映画『タイム・リメンバード』 10

    ビル・エヴァンス生誕90周年 生涯辿る記録映画『タイム・リメンバード』