
電子音楽界の寵児となったSerphが語る、別人格Reliqについて
- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
昨年7月に発表された『Vent』が大きな話題を呼び、一躍エレクトロニック・ミュージックのシーンにおける期待の星となったSerph。今年の4月に発表された『Heartstrings』も素晴らしい作品だったが、今度は別名義Reliqとしての活動をスタートさせた。初のアルバム『Minority Report』は、ミニマルな、フロア寄りのダンスミュージックで、Serphとは違った魅力を発揮しているのだが、さらには同日にSerph名義のクリスマス・ミニアルバム『Winter Alchemy』まで発表されるというのだから、そのクリエイティビティには驚かされる。そこで、人生初の対面インタビューとなった前回から1年以上ぶりにCINRAにご登場いただき、SerphとReliqの関係性、尽きることのないアイデアの源泉を本人の口から話してもらった。いまだプロフィールは未公開で、ライブ活動もないため、ライフスタイル自体は大きく変わっていないという。しかし、その話しぶりからは、去年にはなかった自信が確かに感じられたのが印象的だった。
リスナーのために作るけど、リスナーの方向性に合わせようとは思わない。それをやっちゃうと不自由になってしまうので。
―前回は『Vent』のリリース以前に取材をさせていただきましたが、『Vent』は高い評価とセールスを獲得した作品になりましたよね。それによって、作り手としての意識に変化はありましたか?
Serph:責任感というか、やりがいが増えました。前よりも丁寧に作るようになったかもしれないですね。
―平井堅さんをはじめ、『Vent』以降は他のアーティストのリミックスを手掛けることも増えましたよね。
Serph:リミックスはまず素材があるので、やりやすいっていうか、思いっきり遊んで作れるから、気が楽っていうのはあります。
―前回の取材のときに「男性ボーカルはあんまり聴かない」という話がありましたが、リミックスの作業などを経て、変化はありましたか?
Serph:大分聴けるようになってきました(笑)。Bon Iverはすごく好きですね。
―ああ、いいですよね。じゃあ、以前は「自分が聴きたいと思う音楽を自分で作る」という意識があるとおっしゃってましたよね? その点に関しては、『Vent』のヒットと共に、リスナーの存在を意識するようになりましたか?
Serph:リスナーのために作るっていうのもあるにはあるんですけど、やっぱりリスナーの方向性に合わせようとは思わないですね。それをやっちゃうと不自由になってしまうので。あとライブをやってないので、あんまりリスナーに対する実感がないんですよね。
―実際ライブについてはどうお考えなんですか? Reliqのようなフロア対応の作品が出ると、ますます「ライブやらないんですか?」っていう声が増えるかとは思うんですけど。
Serph:今のところ予定はないです。気が向いたらっていうか…機が熟したら(笑)。自分は作曲家気質なところもあるし、ステージにあがってパフォーマンスをするのは向いてないんじゃないかって思っていて、なのでライブはもうちょっと…万全の状態でやりたいなって。
―理想としては制作だけやっていたい?
Serph:それはわかりません。状況に応じてやっていくっていうことですね。
リリース情報

- Reliq
『Minority Report』 -
2011年11月18日発売
価格:2,300円(税込)
NBL-2041. tea
2. vale
3. mini
4. radiator
5. rushhour
6. pan
7. gem
8. cafein
9. distance
10. continuity
11. catma23
12. feet
13. caprice

- Serph
『Winter Alchemy』 -
2011年11月18日発売
価格:1,890円(税込)
NBL-2051. noel
2. straat
3. twinkler
4. alchemy
5. VALIS
6. lumina
7. above
プロフィール
- Serph
-
東京在住の男性によるソロ・プロジェクト。2009年7月、ピアノと作曲を始めてわずか3年で完成させたアルバム『accidental tourist』をelegant discよりリリース。2010年7月には2ndアルバム『vent』を、続いて2011年4月には3rdアルバム『Heartstrings』を、それぞれnobleよりリリース。 2011年11月には、新プロジェクト"Reliq"名義の1stアルバム『Minority Report』と、Serph名義のクリスマス・ミニアルバム『Winter Alchemy』を二枚同時に発表する。