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マジョリティの中のマイノリティ 椎名もたインタビュー

マジョリティの中のマイノリティ 椎名もたインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:菱沼勇夫
2012/03/01

GoogleのCMで初音ミクがフィーチャーされるなど、確実に市民権を獲得しつつあるボーカロイドシーン。ニコニコ動画で人気のボカロP(プロデューサー)のCDも数多くリリースされる中、この文化をさらに一歩先へ進めようとしているのが、ROVOなどを擁するwonderground内に新設されたレーベルGINGAから、デビュー作『夢のまにまに』を発表する、椎名もたである。元々は「ぽわぽわP」というP名で楽曲を発表し、その若さに似合わぬクオリティの高さが話題を呼んでいたが、本作では音楽性の幅をぐっと広げているだけでなく、インディーロックの気鋭のミュージシャンを迎えたバンドセットを収録したり、ROVOの益子樹がマスタリングおよびミックスのアシストを手掛けたりと、ボカロシーンとバンドシーンを繋げるような、かなりの意欲作となっている。まだまだ若さゆえの危うさも感じられるが、これまでのボカロPとは一線を画す広い視野を持った彼のチャレンジには、いち音楽ファンとして心からエールを送りたい。椎名もた、Keep Tryin’!

普通作曲者って前に出ることのない人たちじゃないですか? そんな人たちが前に出て活躍できてるっていうのがすごくいいと思った。

―音楽への入り口はエレクトーンだそうですね?

椎名:姉が小2から始めてて、親が「(下の子には)今度はもっと早くから習わせよう」みたいに思ったらしく4歳からやってました。母親に「キーボードを弾いてみたい?」って聞かれて、喜んで「うん!」って答えたらしいんですけど、実際には嫌々通ってたんで、全然上達せずに、DTMを始めた中2ぐらいから段々フェイドアウトして行きました。

―DTMを始めたのはどういうきっかけだったんですか?

椎名:まずはニコニコ動画です。友達が『東方』っていうニコニコに深く携わってるゲームをやってて、それを勧められて興味を持ったのと、あとはYouTubeで見たネタ動画を目当てにニコニコ動画に入ったところ、ボーカロイドというものを知って衝撃を受けて。

―どんな部分に衝撃を受けたんですか?

椎名もた
椎名もた

椎名:普通作曲者って前に出ることのない人たちじゃないですか? そんな人たちが前に出て活躍できてるっていうのがすごくいいと思ったし、初めに聴いたラヴリーPの“VOiCE”っていう曲にすごく感動したんです。その影響で、少ないお年玉でFL Studioっていう(音楽制作の)ソフトと初音ミクを購入しました。本格的に音楽を聴いたり作ったりっていうのはボーカロイドの影響で、僕はネイティブがボーカロイドなんです。


―エレクトーンはホントにお稽古って感じだった?

椎名:「この曲がいい」とか多少はあったけど、譜面をなぞってるだけでしたね。あと当時は、歌ものを好んでCDを買ったりとかも全くしてなくて、聴いてるって言ったらエレクトーンで弾いた曲だったり、あとは親が聴いてた曲を聴いてる感じでした。

―例えば?

椎名:宇多田ヒカルです。今でも1番好きです。

―そっか、僕の感覚だと親の聴いてた曲っていうと歌謡曲とかが頭に浮かんでたけど、そうじゃないんだよね。

椎名:今年50歳ですけどね。

―あ、じゃあ若い感性をお持ちなんですね。

椎名:若いですよね。今でこそ収まってるけど、自分が生まれてない頃にはブイブイ言わせてたんでしょうね(笑)。

―ちなみに、ニコ動とかボカロって、当時の中学生の中では一般的なものだった? それとも、「好きな人は好き」って感じだったのかな?

椎名:良くも悪くも一般化してる気がします。ホントに好きな人はニコ動を追っかけて、アップロードの数日以内に聴いたりCD買ったりしてますけど、作ってる人の名前も知らずに携帯電話に曲を突っ込んで、「鏡音リン(ボーカロイドのキャラクター)ちゃんかわいい」とか言ってる人がクラスにいたのはすごくショックでした。「この曲誰のかわかんないんだよね」とか普通に言ってて、「え?」と思って。そこに面白さがあるのに。聴けば聴くほど何でもある文化ですから、ホントもったいないなって。

―自分から能動的に動けばもっと発見があるはずなのに、表面的なところで終わっちゃってるのはもったいないと。

椎名:探れば探るほど、ホントに出てくるんですよ。すごいプログレメタルとか、需要のわからないドローンとか(笑)。

―でもさ、中学生でプログレとかドローンに興味を持つ人そんなにいないよね(笑)。

椎名:でも、いいと思えるものがそれだけその中に隠れてるはずなんですよ。「機械音気持ち悪い」って言われたら何も言い返せないですけど。例えば、商業作品のコンピレーションだけ聴くのはもったいないです。深く深く掘り下げて、自分から聴いてほしいです。

2/3ページ:「将来何になりたい?」って聞かれて、「音楽で食べたい」って言ったんです。

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リリース情報

椎名もた『夢のまにまに』
椎名もた
『夢のまにまに』

2012年3月7日発売
価格:2,940円(税込)
GINGA / WRCR-5

1. don't look back
2. ガラクタのエレジー
3. ハローストロボ
4. LOST & FOUND
5. 夢のまにまに
6. メモリーバイステイ
7. 怪盗・窪園チヨコは絶対ミスらない
8. great heights and down
9. Human
10. ハローストロボ(a Human Works)
11. 夢を追う虫
12. アストロノーツ
13. ストロボラスト
14. それは、真昼の彗星

プロフィール

椎名もた

幼少の頃より様々な楽器を嗜んでおり、14歳の時よりDTMを始める。その後、動画共有サイトに楽曲投稿を始め、ストロボシリーズによりその地位を確固たるものへとする。再生数10万を超える幾多の楽曲、多数のメジャーコンピへの参加などするも、2011年初頭、突然の活動休止。半年後、GINGAとの邂逅により活動を再開し、新世界へと歩を進める。VOCALOIDシーンから生まれ、電子音楽シーンに舞い降りた、弱冠16歳の驚異である。

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