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高木正勝が信じた音楽の力

高木正勝が信じた音楽の力

インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:菱沼勇夫
2012/07/25

『時をかける少女』『サマーウォーズ』で注目を集める細田守監督のアニメーション映画最新作『おおかみこどもの雨と雪』が、7月21日に公開された。そしてその大らかで強い母の姿を描いた本作のサウンドトラック、そしてアン・サリーが歌う主題歌“おかあさんの唄”を手掛けたのが、映像作家・音楽家の高木正勝だ。19歳の主人公・花の、「おおかみおとこ」との出会いから、恋愛、結婚、出産、子育て。そして、その子供たちの成長と自立までの13年間を描いた本作。ピアノを中心に奏でられる、まるで子守唄のように優しく柔らかな音楽が、その物語を包み込んでいる。これまで映像と音楽を等価に手掛け、国内外で高い評価を集めてきた高木正勝。独自の視点で音楽やアートの本質を探求し、その根源にあるピュアネスを形にしてきた彼は、本作にどう向き合っていったのか。その音楽観と、震災以降の表現意識の変化を語ってもらった。

昔話やファンタジーじゃない、自分が生きてきた時代の物語だった

―映画を観て、おとぎ話のようだけど誰にでもある話。特別な話のようだけど普遍的な話という印象を受けました。高木正勝さんがこの映画の音楽を手がけることになったのは、いつ頃だったんでしょうか?

高木:昨年の12月末、ちょうどクリスマスの日にお話を頂きまして、年明けすぐに監督の細田守さんとお会いして、具体的に話を決めました。

高木正勝
高木正勝

―最初に映画の話を受けた時の印象はどんなものでしたか?

高木:最初にポスターの絵だけを見せていただいていたんですが、タイトルも今と少し違っていて、ファンタジーの世界のお話だと思っていたんです。でも、脚本を読み進めていくうちに、これはドキュメンタリーに近いお話だと気が付きました。登場人物のある一定の期間をカメラが追っていくような話だと気付いたんです。そこでまず、いい意味で裏切られ、これは面白い、と思いました。

―音楽を作るにあたって、まずはどういうことをイメージされましたか?

高木:脚本を読んで最初に抱いた印象は、これは家族の物語だということ、特に、お母さんを描くことの面白さというものが伝わってきました。これは監督の細田守さんの思い出でもあるし、これから味わいたい憧れでもあるんだと思います。そこは大事にしたいなと思いました。

©2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会
©2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

―映画の後半では田舎の自然を舞台にしています。高木さんご自身も京都で田舎暮らしをされているので、共有する感覚はあったのではないでしょうか。

高木:ええ。僕が住んでいるのはここまで田舎ではないですけれど(笑)。でも、主人公の花さんが東京から田舎に引っ越した時の描写が、自分が京都市内から亀岡の田舎に引っ越した時に感じたものと全く同じだったのが面白かったですね。雪が積もったり、野原が広がっていたりしていて、自然と触れ合うことができる。そこにもともと住んでいた人たちの交流もある。今は人に譲ってしまったんですが、以前、自分で古民家を買ったこともあったんです。だから、花さんが引っ越したシーンにも感慨がありました。いまは自分が子どもの頃から住んでいる家に居ますが、実際に自分で手を動かして、住みたい環境を自分で作っています。畑にも遊びにいくし、最近では幼稚園の子供に接する機会も多い。ほとんどのエピソードが自分の体験とシンクロしていたので、すごく不思議に感じました。

―それでは、音楽のイメージも浮かびやすかったのではないでしょうか?

高木:それが制作を初めて2ヶ月間、ずっと悩み続けていたんです。物語の舞台が富山ということで、昔の民謡を調べたりしていたのですが、そういう音を作っても、何故か画面に合わないんです。昔話やファンタジーのようになってしまうんですね。脚本を読んで感じていたドキュメンタリーのよさが出ないんです。

―映画の前半部分で、東京の街角に緑色の公衆電話が出てくるのが印象的でした。今となっては少なくなってしまったもので、かと言って、昭和の頃からずっとあったものでもない。これはおそらく90年代後半のシーンであるということを示していますよね。

高木:そうなんです。そこで鳴っている音楽は、自分が生きてきた90年代から現在に至るまでのものなんだと気が付くのに時間が掛かってしまいました。そうやって試行錯誤しているうちに、この映画はあくまでも、お母さんである花さんの物語なんだということに集中していけました。そこからは早かったですね。

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イベント情報

『おおかみこどもの雨と雪』

2012年7月21日(土)より全国東宝系にて公開中
監督・脚本・原作:細田守
脚本:奥寺佐渡子
音楽:高木正勝
主題歌:アン・サリー 高木正勝“おかあさんの唄”
キャラクターデザイン:貞本義行
声の出演:
宮崎あおい
大沢たかお
黒木華
西井幸人
大野百花
加部亜門
林原めぐみ
中村正
大木民夫
片岡富枝
平岡拓真
染谷将太
谷村美月
麻生久美子
菅原文太
配給:東宝

リリース情報

高木正勝<br>
『映画「おおかみこどもの雨と雪」オリジナル・サウンドトラック』
高木正勝
『映画「おおかみこどもの雨と雪」オリジナル・サウンドトラック』

2012年7月18日発売
価格:2,500円(税込)
VPCG-84928

1. 産声
2. めぐり
3. 陽だまりの守唄
4. ほしぼしのはら
5. そらつつみ
6. 莟
7. ねね
8. あたらしい朝
9. オヨステ・アイナ
10. がさぶらたあた
11. たねめみ
12. きときと - 四本足の踊り
13. ひふみのまじない
14. 太陽をもった日
15. すべての暖かいみち
16. 秘糸
17. あなたが編む世界
18. やわらかいまなざし
19. 少年と山
20. あめつちひといぬ
21. あなたはわたしの美しいうた
22. 虹のたてがみ
23. 雨上がりの家
24. おかあさんの唄

CINRA.STOREで取扱中の商品

高木正勝<br>
iPhoneケース『おかえり』
高木正勝
iPhoneケース『おかえり』

価格:3,675円(税込)
高木正勝の貴重な子供時代の作品がデザインされたiPhoneケースが3種類登場。

高木正勝<br>
iPhoneケース『たいふうりょこう』
高木正勝
iPhoneケース『たいふうりょこう』

価格:3,675円(税込)
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iPhoneケース『かきとり』
高木正勝
iPhoneケース『かきとり』

価格:3,675円(税込)
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高木正勝<br>
『primo:01』
高木正勝
『primo:01』

価格:37,800円(税込)
高木正勝の世界観が、身近なお気に入りに

プロフィール

高木正勝

1979年生まれ、京都府在住。音楽家/映像作家。普遍的で深遠な要素を持ちつつ、カラフルでPOPな映像と、自ら作曲する音楽を融合させた作品により注目を集めるアーティスト。2009年のNewsweek日本版で、「世界が尊敬する日本人100人」の1人に選ばれている。国内外のレーベルからCD/DVDをリリースするだけでなく、アニエスベーとのコラボレーションによる作品制作、東京都現代美術館でのビデオ・インスタレーションなど、アート、音楽、クラブ、ファッションといった表現の境界線を軽々と超える活動を展開している。

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